チンパンジー:絵の欠落補えず…想像力あっての人間

毎日新聞 2014年10月28日 00時02分(最終更新 10月28日 00時16分)

チンパンジーが描いた絵。線画をなぞっている=京都大霊長類研究所提供
チンパンジーが描いた絵。線画をなぞっている=京都大霊長類研究所提供
人間の女児(3歳2カ月)が描いた絵。目や鼻、口を補っている=滋賀県立大人間文化学部提供
人間の女児(3歳2カ月)が描いた絵。目や鼻、口を補っている=滋賀県立大人間文化学部提供

 チンパンジーと人間の子供の絵を描く能力を比較したところ、チンパンジーにも人間同様に線をなぞる能力などが一定程度あるが、想像して描く力はないことが分かったと、京都大霊長類研究所の松沢哲郎教授や中部学院大の斎藤亜矢准教授らの研究グループが発表した。人間の優れた想像力を示す結果といえる。論文は28日の米科学誌「チャイルド・ディベロップメント」電子版に掲載される。

 研究グループは、知能が高いことで知られる雌のアイ(推定38歳)など霊長研のチンパンジー6頭(大人4頭、子供2頭)と人間の子供57人(1歳6カ月〜3歳2カ月)を対象に実験。チンパンジーの顔を線で描いた絵を、片目が欠けたもの▽輪郭だけのもの▽完全なもの−−など複数用意し、その上に絵を描かせた。

 すると、人間は輪郭をなぞるだけでなく、2歳後半になると「おめめ、ない」などと言って「ない」部分を補って描くことができた。一方、チンパンジーは輪郭をなぞったが、欠けた部分を補うことは一頭もできなかった。

 斎藤准教授は「チンパンジーは描かれていないものには思いをはせないようだ。人間は月面の模様に想像を膨らませるように、あいまいな物の形も何かに見立てようとする。想像する力こそが人間に備わった力と言える」と話している。【野口由紀】

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