東ロボくん:東大合格は?猛勉強で私大A判定も
毎日新聞 2014年10月23日 11時06分(最終更新 10月23日 14時48分)
ロボットは東京大学の入試に合格できるか−−。国立情報学研究所などのグループが「東(とう)ロボくん」と名付けた人工知能の開発に挑んでいる。昨年、初めて受けた大学入試センター試験の模試では、東大の合格ラインには遠く及ばなかったが、私大の7割ではA判定(合格可能性80%以上)をもらった。さて今年は?【下桐実雅子】
昨年、東ロボくんが挑戦したのは代々木ゼミナールの「全国センター模試」。複数の選択肢から解答を選ぶ方式だ。会場に出向いて試験を受けるわけではなく、事前に問題をもらい、人の手でデータとして入力する。東ロボくんは試験時間内に自動で解答。数十秒で解ける問題もあれば、10分ぐらいかかるものもあった。
結果は、総合7科目の偏差値が45で、全国平均を下回った。世界史や日本史が比較的得意で、英語や国語は苦手だった。国語では漢字は全問正解。しかし小説の読解で「表情が固い」という表現の解釈を問われ、「まじめな様子」と解答した。正解は「こわばっている」。受験生全体の正答率は68%だった。講評では「文脈を捉えた理解ができていない」とされた。
英語では発音やアクセントの知識を問う問題はよくできたが、対話文を完成させる問題は全滅。会話の状況を想像したり、発言の意味を理解したりするのは苦手。一方、別に受けた東大2次試験の数学模試は、偏差値60と好成績だった。
プロジェクトは、国立情報学研究所の新井紀子教授(数理論理学)をリーダーに2011年に始まった。目標は、16年にセンター試験で高得点、21年に東大合格だ。国語は名古屋大、数式の処理は富士通研究所など、総勢100人以上がかかわる。東ロボくんにとっては、日本語は記号の羅列だ。言語処理や統計処理の技術、高度な検索システムを駆使し、記憶している教科書などのデータと照合し、答えを導き出す。新井教授は「コンピューターには、イラストの違いを判別するものや日常生活での経験に立脚した問題が難しい。人間の勘所や常識が機械には分からない」と説明する。
それにしても、どうしてこんな挑戦をしているのか。新井教授は「株の機械取引、無人走行の車など、人工知能は知らないうちに生活の中に入ってくる。人工知能に何ができて何ができないのか、一般の人に興味を持ってもらうのに、東大入試という題材はわかりやすいと思った」と語る。