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【全文】「表は簡単に、裏は高度に」:BASE鶴岡裕太氏が語る、絶対に曲げないサービス設計のキモ

 無料でネットショップを開設することができるサービスの「BASE」。それまでネットショップとは無縁だった主婦層がBASEを利用してハンドメイドの商品を売り出すなど、個人向けのショップのプラットフォームとしてその規模を拡大しています。

 ここでは、そのBASEを運営するBASE株式会社の代表取締役をである鶴岡裕太氏と、鶴岡氏を学生時代からメンターとして支え続ける家入一真氏が、サービスを開発するために必要なこだわりと、流行るサービスを作るために考えるべきことについて語った、ドリコムのインキュベーションプログラム「Startup Boarding gate」のキックオフイベントでのパネルディスカッションを書き起こします。

スピーカー

家入一真氏/連続起業家・モノづくり集団Liverty 代表
鶴岡裕太氏/BASE株式会社 代表取締役

(モデレーター)
内藤裕紀氏/株式会社ドリコム 代表取締役社長

見出し一覧

・エンジニアは「職人」。心とプライドをケアしながらリリースを目指す
・「神は細部に宿る」。細かい部分にはこだわりが必要
・Webサービスの成功には時代の流れも重要。とにかくたくさん作ろう
・「マネタイズなんてどうでもいい」はウソか?本当か?
・ビジネスのアイデアはそこら中に落ちている

エンジニアは「職人」。心とプライドをケアしながらリリースを目指す

内藤:
失敗についてお話を伺いたいのですが、サービスが立ち上がるまでの間で、気を付けていた点や実際に失敗してしまったという話を教えていただけますか。

鶴岡:
立ち上げの時はメンバーの数も少ないので、どうしてもクリエイターとエンジニア、デザイナーに依存しちゃうんですよね。エンジニアは大切ですし、これからは比較的エンジニア側にどんどん力を入れていきたいと思います。エンジニアをいかにマネジメントするかは結構大事だと思っていて、BASEの場合も報酬がない状態に似た概念の中で、やりがいだけを担保しているわけです。途中でモチベーションが落ちていく中で、エンジニアとか作り手をどうやってケアしていけるかが重要になるでしょう。BASEの場合は、幸いなことに僕もエンジニアだったので、エンジニアの心境はなるべく理解できるようにしていましたし、僕も開発をしていました。エンジニアのモチベーションをちゃんと保ってあげることが、サービスを立ち上げる期間は大事だと思いましたね。

内藤:
エンジニアの人のモチベーションを上げる秘策は何ですか?何をしたらエンジニアのモチベーションは上がるんでしょうか?

家入:
エンジニアは職人みたいなところがあるので、職人としての気持ちを推し量ってあげることが重要です。僕もプログラミングをしていたので、何となくエンジニアの気持ちがわかるんですよね。

内藤:
3人とか4人だろうが、エンジニアが結束しないとサービスはリリースできなくなってしまいますよね。

家入:
エンジニアの中でもいくつかのタイプがあります。新規で開発することが好きなタイプもいれば、保守運用が好きなエンジニアもいるんですよね。だから適材適所というか、ちゃんと考えて配置してあげることが重要です。あとはマネジメントが重要。日本の組織は役職が上がると、最終的にマネジメントやマネージャーになるイメージがあるじゃないですか。でも、管理職に向く人も向かない人もいるわけですよね。だから、エンジニアによって違うキャリアプランを見せてあげる。「ここにいたらこういうエンジニアになることができますよ」という夢を見せてあげることが大切です。

内藤:
エンジニアのマネジメントは組織が大きくなってからの話ですよね。リリースするまでの短期決戦の場合はどうなのでしょうか。

鶴岡:
BASEでは、メインのエンジニアが途中でモチベーションが落ちて開発しなくなってしまったということが実際にありました。幸い僕もプログラミングが出来たので、僕の場合は「来なくていいよ」と言いました。結局最後は来たんですけどね。イチかバチかの勝負に出て、「ここまで手伝ったんだから、最後までやろうよ」というように説得しました。エンジニアの心が分かることが一番大事なところで、エンジニアって独特の生き物じゃないですか。プライドも比較的高い場合があるので、なるべくエンジニアの心をケアしてあげて、あとはその場に流れる雰囲気を読むしかないです。

「神は細部に宿る」。細かい部分にはこだわりが必要

内藤:
人手も足りず、期限までにリリースまでこぎつけなければいけないという場合、どうしても手抜きをしてもいいところとこだわるところを考えなければなりませんよね。全部は出来ないので、絶対にこの部分は外さないという部分も当然出てきたかと思います。BASEの場合、絶対曲げたくないこだわりはどの部分にあったんでしょうか?そしてどの部分で「ここはしょうがない」という割り切りをしましたか?

鶴岡:
僕の場合は、母親でも出来るという明確なコンセプトがありました。そこで大切にしたのは、「表は簡単に裏は高度に」という仕組みなんですけど、ユーザーに対してこの機能が出来て、この機能は出来ないという概念で作っていました。なので、機能というよりかはUIやデザインを大事にしてましたね。

内藤:
家入さんは昔からデザインに結構こだわりを持っていたと思うのですが、BASEを作るにあたって、こだわった部分とどうでもいいやという部分はどこにありましたか?

家入:
僕は雑なように見えてすごく細かいんですよ。なので、デザイン面では割と僕から口出しをすることがありました。サイトの微妙な配置のズレとかが特に気になるんですよ。

「1ピクセルずれてる」という指摘もしました。僕はそういう色やピクセルのズレなどの細部のデザインに目がいってしまう。「神は細部に宿る」という言葉があるように、細部のいい加減さがサイトの崩壊に繋がると思うんですね。なので、BASEの完成直前のときは、トップページのデザインやティザーサイトなど、デザインに関してやたら口出ししてたような記憶があります。

内藤
チームの中でも、1ピクセルにこだわろうという意識は強かったのですか?

鶴岡:
そうですね。家入さんからは細かなフィードバックを頂きましたし、僕も細かなところにこだわりを持つ志向があったので、細部に関しては大事にしたいと思っていました。インスタントアプリを使って一気にサイトを立ち上げるムーブメントがありますが、Bootstrapで作っているようなサイトは、あまりユーザーの評価は良くないと思っています。細部にこだわらないと基本的にはユーザーの視点に立てないと思います。サイトに関しては細部のデザインに関しては妥協してはいけないと思いますね。

内藤:
私もその辺は大切にしてるんです。例えばPowerPointの資料の中に、フォントの種類が違うものが混じっていたりすると、「ちょっとこのサービスはダメだ」と思ってしまうことがあります。それでは逆に、サイトをリリースするときにここは手を抜いてもいいかなと思った部分はどこですか?

鶴岡:
多少のバグには目をつぶりました。リリースした日にあたふたするのはしょうがないです。

内藤:
手入れるところと手を抜くところを分けないと、決まった期間の中でものを作ることは難しいですよね。

家入:
特に自社サービスに関して言えるのですが、どうしてもスケジュールは押しがちになってしまうんですよね。デザイナーとかエンジニアはいいものを作りたいという思いがとても強いので、立ち上げ予定日が決まっていても、「あと1週間もらえたらここがもっと良くなる」という要望が入って、「それじゃあ1週間延ばそうか」という発想になりがちなんですね。納期がないだけに。だけど、期間に関してはある程度線を引いてしまわなければいけない。だから、BASEも多少のズレはありましたが最終的にはここの段階で出そうと決めて、そこまでに間に合わせました。最低限ないといけない機能は付けましたが、あとはむしろ出した後に、「BASEはこれからこんな機能が付きますよ」と積極的に宣伝することでユーザーの期待を煽って、「まだまだこれから色々機能がついてくるのか」とワクワクさせるようにしました。逆転の発想ですよね。

内藤:
リリースした後で、「やばい、作り直そう」と思い立って0からやり直すっていうタイミングはありましたか?

鶴岡:
デザインが気に入らなかったので、全部やり直しました。でも、BASE以前に出したサービスの経験から言っても基本的にはリリースしないと分からないというのもわかっていたので、「いったん出しちゃおうかな」という感じで最後はえいっと出してしまいました。

内藤:
「気に入らない」という感覚は結構重要で、サービスを作るとき、「今までの時間がもったいないから気にいらないけどこのままいこう」と思うと、失敗してしまうというパターンが本当にたくさんあるんです。でも、「気に入らないからもう1回やろう」と周りに言うと、理解が得られないときもありますよね。0からやり直しをするときのチーム内の心境はどのような感じでしたか?

鶴岡:
僕がある日「このデザインはやっぱやめよう」と言いました。管理画面もほとんど完成した段階で一気に全部作り替えようと思い立ちました。直感ですよね。

内藤:
突然思いついたんですか?それとも日々やり直そうと思い続けていたんですか?

鶴岡:
僕は突然思い立ちましたね。六本木の家入さんのオフィスに泊まり込んで作業していたんですが、その時は徹夜で作業してて、休憩も兼ねて朝方に3時間ぐらい散歩に行ったんです。散歩しているときに、ふと「このデザイン駄目だな」と思い立って、オフィスに戻って来たときに「デザインをやり直します」と言いました。

内藤:
その時のみんなの反応はどうでしたか?

鶴岡:
意外に受け入れられました。モチベーションもそこまで変わらなかったと思います。デザインに関しては、僕がコードを書いていたという部分も大きいですね。だから「自分だけやり直します」という感じでした。

内藤:
まずアイデアの時点で「やっぱりこの企画やめよう」というタイミングと、作る中で、「やっぱりおかしい」とやり直すタイミングがあると思うんですけど、家入さんは今までのサービスで「やっぱりこれ出すのやめよう」と思った経験はありますか?

家入:
基本的にどんな場合でもサービスとして出します。でも、途中で飽きてそのまま出さないサービスも結構あります。ただ、さっきのシステムを作り直す話で言うと、エンジニアだと、たまに「1からソースコード書き直したくなる病」にかかることがあるんですよ。それをいかに防ぐかっていうのが重要ですね。

内藤:
エンジニアがもう1回ソースコードを書き直したいと言い始めたときはどうしていますか?

家入:
基本的に書き直しは許可しないです。ただ、今後の拡張性の話をされると「確かに」と思うこともあります。でも、基本的にはサービスを出して、あとはその後から考えていくようにしています。

(以下、質疑応答)

Webサービスの成功には時代の流れも重要。とにかくたくさん作ろう

Q:
BASEの立ち上げはお母さんの要望だったという話がありました。お母さんの要望というのは、ビジネスチャンスを探している中で「ビジネスチャンスが来た」と感じるものだったのですか?それともお母さんの要望を叶えることが勝手にビジネスとして成立したのですか?

鶴岡:
作っているうちにビジネスになったという印象が強いですね。BASEも当初は、家入さんと2か月に1個ぐらいWebサービスを作っていくという活動の一つでした。BASEはその中の一案でしかなかったですし、たまたま成功しただけで、これが全く使われなかったら、たぶん次のサービスを作ってたでしょう。成功させるという強い意識はなかったですね。

Q:
今のBASEがうまくいった理由はどこにあると考えていますか?

鶴岡:
ユーザーがいたということですかね。サービスが当たる理由は、基本的にはプロダクトの良し悪しがあると思うんですけど、それ以上に時代の流れや運が含む要素が強いと思うんですよ。仮にBASEを今作ったとしても、ユーザー数は増えないと思います。僕はいっぱいサービスを作るべきだと思うし、それがたまたま時代の流れにハマったらしっかりとサービスを伸ばしていくべきだと思います。

「マネタイズなんてどうでもいい」はウソか?本当か?

Q:
マネタイズに関してですが、「ユーザーをたくさん囲えれば、どうにかなる」という考えで本当にいいのでしょうか?将来的には、マネタイズできるから今は無視してもいいという考えでしょうか。それともそもそもユーザー数を重視していて、本当にマネタイズ自体を考えてないんでしょうか。

鶴岡:
作った時は「母親のために」というコンセプトがありましたが、実際に作ってみると、有名な方に会う機会ができたり、スパイラル式に自分の成長にも繋がると思います。だからサービスの成長とともに自分の夢も大きくなっていくと思うんですよね。BASEも最初は母親の為に作ったんですが、途中から決済事業をやりたい、銀行のようなものを作りたいという風に目標も変わっています。今のBASEは無料でカートが使えるんですが、これは最終的な目標を叶えるための手段かなと思っていて、だからこそマネタイズしなくてもいいかなと思ってるし、マネタイズの仕方がよくわからないので、頭のいい人がやってくれたらいいかなと思っているんですよ。

基本的に、僕は思ったことをやりたいタイプなんです。いきなり「僕、これやりたいです」ということがよくあります。やりたいものに対して「儲からないんで、お金どうにかしてください」という役割もあると認識しています。僕は人に喜ばれるサービスを作ることができればいいと思ってるし、人々の生活を変えるようなサービスを僕は作るべきだと思っています。お金を稼ぐのはその分野の人がやってくれればいいかなと割り切っているのが現状ですね。

家入:
僕は「マネタイズ」という言葉が本当に嫌いなのですが、考えなくてはいけない問題でもあります。利益は企業が走り続けるためのガソリンのようなものです。だから、企業を続けるためにマネタイズは考えなければならない。だけど、サービスを立ち上げる時にマネタイズについて考えてもしょうがなくて、マネタイズが事業計画書通りに行くことはほとんどない。事業計画書を実際に見る機会もありますが、その通りいった試しがない。先にあんまりマネタイズについて考えすぎるとよくないなと思うし、かといって考えなさすぎるのもよくなくて、マネタイズをするポイントを先の方にどっかに漠然と見据えておいてから、サービスを立ち上げることが重要なんです。だから、「ユーザーがある程度行けば、どうにかなるんじゃないですか」と軽く言うのが嫌なのであれば、「だいたい考えてますよ」と言うぐらいでいいんじゃないですか?

内藤:
結局どうしてマネタイズをしなければならないのかを考えると、会社を存続させるためなので、マネタイズをしなくてもお金さえ集められれば、大きなオフィスにたくさん人がいる会社もできます。それではお金が集まるサービスがどういうものかというと、ユーザーがとにかく集まっているサービスです。

ユーザーの規模にもよりますが、一日に1000万人ほどの人がスマートフォン向けのサービスに集まればお金も集まります。ユーザーが集まるとお金が集まる仕組みですが、どこかの会社が買収してくれるかもしれないという場合もあります。投資側からすると、たとえ利益が上がっていなくても、買収されるというEXIT戦略もあるので、ユーザーが多いほうが投資しやすいというのはありますね。

ビジネスのアイデアはそこら中に落ちている

Q:
家入さんが「一人のことを思い浮かべることが出来ないサービスはうまくいかない」と言っていましたが、イメージというのは身近な関係の人がいいんでしょうか?イメージできるターゲットの良し悪しの基準を教えて下さい。

家入:
あまり区切りはないと思います。相手の顔を思い浮かべて、手紙を書くようにビジネスを作れとよく言うんです。要するに、「お元気ですか?」「最近、困ったことはないですか?」みたいなメッセージが必要。容易に想像できて、相手のことを一方的に思いやることができる人がターゲットにふさわしいですね。ターゲットが最近、困っていることや喜んでくれそうなことを連想するぐらいでいいと思うんですよ。とても身近にいる人である必要はないですし、最近会っていない友達とかもいいでしょう。例えば、友達が地方で農業をしていて、サポートしてあげたいなと思うことでも十分です。なんでもいいんですよね。

よく「ビジネスのアイデアの見つけ方を教えて下さい」と聞かれるんですけど、実はビジネスのアイデアはそこら中に落ちています。自分の身近な誰かのことを思い浮かべれば、その人たちの為にやれることはたくさんあるはずで、それは別にビジネスじゃなくてもいいと思うんです。やれることは肩たたきとか、台所掃除かもしれない。でも、そういった思考からニーズが見つかり、アイデアの種が見えてくると思います。だから、ターゲットの境界線はあまり意識しなくてもいいんじゃないですか?

Startup Boarding Gateとは

 「Startup Boarding Gate」とは、起業を目指す学生が持つ「ものづくりへの想い」をカタチにするプログラムです。Startup Boarding Gateの目的は、「これまでの世の中にない価値を若者の手で生み出す」こと。ドリコムではStartup Boarding Gateを通じてイノベーションを起こす起業家の育成・支援を行っています。

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あなたに当てはまる資質はいくつありますか?一流の経営者には○○な人が多い


 
 一流の経営者と聞いて皆さんはどんな人物像を思い描きますか??人格者だったり、あるいは傲慢なイメージを抱く人もいるかもしれません。しかし、その実、彼らにどういった資質を持った人が多いのか、言い方を変えると、どういった資質を持った人が一流の経営者になりやすいのかは、あまり知られていません。今日はその点にスポットを当ててご紹介していきたいと思います。

1.前向きである

 成功する経営者には前向きな人が多いです。例えば、パナソニックを一代にして築きあげた松下幸之助の言葉に次のようなものがあります。

どんなに悔いても過去は変わらない。
どれほど心配したところで未来もどうなるものでもない。
いま、現在に最善を尽くすことである。

出典:松下幸之助 名言 - どんなに悔いても過去は変わらない。 どれほど心配 ...
 前向きであること、すなわち諦めないということは経営者の資質として大切なことなのでしょう。あるいは諦めなかったからこそ、経営者として成功を収めることができたのかもしれません。いずれにせよ、そういった資質は経営者として大きな強みになるはずです。

2.謙虚である

 他者の長所を認めることができる謙虚な姿勢というものは、経営者にとって必須の資質となります。

自己犠牲をいとわない人間性でなければ、
経営者になってはいけない

出典:稲盛和夫 名言 - 自己犠牲をいとわない人間性でなければ、 経営者になっ ...

 これは京セラ、KDDIの創業者であり日本航空の再建を成功させた稲盛和夫の言葉です。経営者というものは組織の代表。代表として組織の中で最も大きな犠牲を払う覚悟、驕らずに謙虚である姿勢が求められるのです。

3.勇気と行動力を持っている

 経営者に名乗りを上げることはとても勇気が必要なことです。経営者という立場には様々な責任やリスクが付きまといます。成功する経営者というものは、まだ人が足を踏み入れていなかった領域に足を踏み入れることが必要となってくるので、なおのことです。

 また、批判を恐れないことも大切です。ほんの一例ではありますが、アップル社の共同設立者の一人であるスティーブ・ジョブズも前述の稲盛和夫も、大規模なリストラを行った経験があります。これには様々な意見があるかもしれませんが、経営のことを第一に考えるからこそであり、批判を恐れることなく一流の経営者は経営のために動くことが出来るのかもしれません。

4.特定の物事へ強いこだわりを持つ

 こだわりとはすなわち、その対象に対して信念を持っていることを意味します。スティーブ・ジョブズは「iPod」という名称を決定する前、二度に渡って不採用としていますが、その理由は発案者に信念が感じられなかった、というものでした。名称一つとっても信念を求める姿勢は、その他の経営に対しても現れていたであろうことは想像に難くありません。

 また、自社のサービスに対しても同様のことを言うことができます。自社が行うサービスに対して信念を持っている、というのは経営者として成功するために必須の条件です。信念のない会社のサービスでは誰も満足してくれません。

5.義を大切にする

 利を追うばかりで義を捨ててしまうようでは、人はついてきません。ソフトバンクグループの創業者である孫正義は

東日本大震災の時に考えさせられた。我々の電波があと10メートル、20メートルでも届いていたら、1人でも多くの命を救えたかもしれない。その反省から3兆円ほどのお金をかけて一気に通信網を整備した。お金がかかるとかは問題ではなく、義を取る必要もある

出典:http://www.nikkei.com/news/print-article/?R_FLG=0&bf=0&ng=DGXNASFK0403Z_U4A400C1000000&uah=DF021120102739
と述べています。経営をする上で利を追うことは当然重要なのですが、それだけでは駄目だということです。また、こういった姿勢は人間関係にも影響を及ぼします。義を大切にして人と接することは、上述の謙虚であることと共に大切なことなのです。


 いかがでしたか?ほんの一例しかご紹介出来ていないかもしれませんが、一流の経営者にどういった人が多いのか、という点を見ていただけたかと思います。見習うべきところは見習っていきたいものですね。

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【全文】全ては母親の一言で始まった:家入一真氏・BASE鶴岡裕太氏が語る大ヒットサービス開発秘話

 無料でネットショップを開設することができるサービスの「BASE」。それまでネットショップとは無縁だった主婦層がBASEを利用してハンドメイドの商品を売り出すなど、個人向けのショップのプラットフォームとしてその規模を拡大しています。

 ここでは、そのBASEを運営するBASE株式会社の代表取締役である鶴岡裕太氏と、鶴岡氏を学生時代からメンターとして支え続ける家入一真氏が、BASEの元になったアイデアや、BASEが成功すると思った理由を語った、ドリコムのインキュベーションプログラム「Startup Boarding gate」のキックオフイベントでのパネルディスカッションを書き起こします。

スピーカー

家入一真氏/連続起業家・モノづくり集団Liverty 代表
鶴岡裕太氏/BASE株式会社 代表取締役

(モデレーター)
内藤裕紀氏/株式会社ドリコム 代表取締役社長

見出し一覧

・サービスを使う「特定の個人」が思い浮かべばサービスは成功する
・チャンスを得るためには諦めないで食らいつくことが重要
・巨大な象をひっくり返すためには「出来ない」思考を止めろ
・ワンピースのような物語と損得を超えた関係が仲間を作る

サービスを使う「特定の個人」が思い浮かべばサービスは成功する

内藤:
今回は家入さんと鶴岡さん、お二人に話を伺っていきたいと思うんですが、鶴岡さんが大学生の時、家入さんがメンターという形で「BASE」を立ち上げたと聞いております。起業を志す人にとっては、何をして、何を支援してもらうと大きなサービスを作っていけるかという参考になるんじゃないかなと思い、今回は話を伺いたいと思います。まずは、BASEではどのようにしてサービスを立ちあげたのか聞いてもいいですか?

鶴岡:
もともとBASEを作る前に、クラウドファウンディングサイトの「CAMPFIRE」を運営している「ハイパーインターネッツ」という会社で僕がインターンをしていて、家入さんと関わったのがきっかけですね。大学3年生の時にエンジニアとしてインターンに応募して、家入さんといろいろサービスを作りました。ハイパーインターネッツを辞めた後、ある日突然BASEのアイデアがひらめいて、家入さんに提案したところ、「良さそうだから作って」と言われました。それで、「Liverty」というクリエイター集団でサービスを開発してローンチしたところ、1日でユーザーが数千人も集まったので翌月には法人化をして独立しました。

内藤:
家入さんから見て、最初に出会ったとき、鶴岡社長はどのようなスキルを持っていて、何が出来る人だったんですか?

家入:
鶴岡くんはほとんどのことができなくて、本当にプログラミング以外も何も出来なかった。コミュニケーション能力はやたら高くて、僕のプロジェクトの手伝いを含めて様々なことをしてくれましたが、基本的に何もできなかったんです。

様々なサービスを手がけていく中で、急に「BASEっていうものをやりたい」と鶴岡くんは言い出しました。そのきっかけとなったのが、母親の一言だったんです。鶴岡くんの母親は、大分でブティックをやっていて、「ネットショップをやりたい」「これからはネットショップの時代だ」と言い出したそうなんです。「私もネットでものが売りたいからどうにかしてよ。IT詳しいんでしょう?」という依頼を鶴岡くんが受けたんですね。

BASEを作るという選択肢ではなく、Yahoo!ショッピングとか、楽天市場にサイトを代わりに開設する方法もあったはずなんですよ。でも、彼は同じような思いを抱えた人が日本中にいるんじゃないかと考えた。結果、BASEが出来て、すごい勢いでショップ数を伸ばしています。地方にあるような個人の商店とか、アクセサリーを趣味で作ってる人とかがBASEにショップを開設しています。今までネットでものを売ることを考えていなかった人たちが、BASEを使ってものを売っているんです。お母さんのためにやったことが広がって、結果として日本中に広がっている。僕がよく思うのは、使ってくれるであろう人に個人の顔を思い浮かべられないサービスはうまくいかないということです。それが、鶴岡くんの場合はお母さんだった。

チャンスを得るためには諦めないで食らいつくことが重要

内藤:
BASEの初期段階では、家入さんにどれだけ相談したんですか?口出しされた内容も含めて伺いたいです。

鶴岡:
ハイパーインターネッツに半年ぐらい在籍していて、辞めてからも1年ぐらい家入さんと一緒にBASEを含めた様々なサービスを作っていました。その1年間は、365日ほとんど一緒にいました。

ほぼ家入さんと一緒にいて、家入さんはマンションの前のイタリア料理店に一日中いるんですけど、そこに毎朝僕が出向く生活をしていました。

もはや付き合っている状態にかなり近かったと思います。基本的に家入さんは、ちゃらんぽらんしてて参考になることはあまり言わないのですが、月に一回ぐらいいいことを言うんです。でも、その「月に一度しか言わないいいこと」が、本当に40日分ぐらいの価値を生み出します。その「いいこと」を聞くために、30日間を捧げている感覚でした。

BASE以外にも日常的に一緒にサービスを作っていたので、その中でいろいろ教えてもらいながら、最終的にBASEも作っている感じでした。BASEについても、基本的には「こういうのやりたいんですよ」と言いながら1日かけてコードを書いて、プロトタイプを見せて、「いいんじゃない」みたいな感じでアドバイスを受けていました。大体の場合、出来る寸前ぐらいまでは勝手に作って、ギリギリのタイミングでアドバイスをもらっていました。フィードバックをもらって、修正していく感じです。

家入:
ここで大事なのが、鶴岡くんと時間を調整して会っていたわけではないということです。ただ僕がいつもいるから来るんですよね。僕も自分の作業があるのですが、とにかく鶴岡くんは執拗に絡みついてくるわけですよ。僕に会いにくる学生さんがたまにいるんですが、一回会えなかっただけで、「もう家入さんは捕まらないから諦めます」と言って去っていきます。諦めてしまう学生が多いんですよね。でも、鶴岡くんは食らいつくわけですよ。チャンスは手を伸ばし続けない限り手に入らない。たまたま最初にチャンスを捕まえる人もいれば、手を伸ばし続けても、チャンスが一生得られない人もいるでしょう。でも、手を伸ばし続けるしかないんですよね。

巨大な象をひっくり返すためには「出来ない」思考を止めろ

内藤:
ちょっと視点を変えて、BASEのサービスをローンチした後に行けそうだなって思ったタイミング、つまりは「これは、多少リスクを負ってもサービスを作った方がいいな」という感覚はどこら辺にありましたか?

家入:
僕は出す前から、最初からイケるって思っていました。先ほど話しましたが、イメージが最初からあるわけですから。鶴岡くんのお母さんは絶対使いますし、喜ぶでしょう。同じような人がいっぱいいるんじゃないかと思っていました。「ロリポップ!」というサービスを「paperboy&co.」という会社を作った時に立ち上げたんですけど、そのときもBASEと同じで、自分が使いたいレンタルサーバがなかったから自分で作ったんです。たぶんレンタルサーバに困っている人間が日本中にいるだろうという仮説を立てて。だから、本当に身近な人を想像する、もしくは自分の関心からサービスを立ち上げるということはすごく大事で、容易に想像できるんです。だからBASEに関しても、「これ、イケるな」って最初から思っていました。

鶴岡:
社内の話をすると、サービスを出す前から出資をいただける企業は決まっていて、その上でリリースがあったので、サービスとして伸びるだろうという予想はしていましたが、確信とまではいきませんでした。実際にサービスをリリースしたときに、ユーザー数が伸びたので、そこぐらいから「イケる」と確信が持てました。ユーザーの声はリリースしてみないと聞くことができないじゃないですか。ちゃんとサービスを出して、実際に使ってもらうべき人にサービスが届いて、ユーザーからの声をいただく中で実感が湧いてきました。家入さんのアドバイスも嬉しいですが、やっぱりユーザーからいただく声が一番嬉しいですし、ユーザーからの声が聞こえ始めたときは、サービスをやっていけるのかなと感じました。

内藤:
一般的にインターネットの知識がないVCや金融関係の人からすると、多分BASEを見せても、「楽天があるじゃないか」と指摘するのではないでしょうか。BASEのような無料のECサイトを作成できるサイトも既存でありました。スキルが未熟な学生がECサイトのサービスを立ちあげても、「成功するはずがない」と誰も却下してしまうな状況でしたし、サービス自体はありがちなアイディアだったと思うんです。

それでも、世間一般の人が「うまくいかない」と思っていることほどうまくいくと私は思うので、自信を持ってグッとサービスを推していけるかどうかが重要だと思います。世間一般にいるよくわかってない人達の指摘と自分たちがイケると思っている部分、この差が新しい発明を生み出す差だと思います。もう少しこの差について一歩踏み込みたいのですが、どうでしょうか。「イメージが沸いたからイケる」っていうのは、具体的にはどういう感覚ですか?

家入:
確かに、「楽天があるじゃないか」とか「Yahoo!ショッピングが無料化するから難しいだろう」とか、既存の大手サイトが対抗策を練ってきたら負けてしまうという指摘は多くあるんですよね。でも、そんなわけがありません。例えば、楽天が単純に無料化なんて出来る訳がないんです。それだけ規模が大きくなってしまっていますし、ターゲットがBASEと違うというのもあります。

楽天は、例えるなら巨大な象だと言えるでしょう。象から見れば、僕らのようなサービスは本当に蟻みたいなものですよ。本当に力がない。だけど、象が気づかないうちに、せっせと足元に穴を掘って、象がひっくり返るぐらいの穴を作ってしまえば、転ばせることだって出来ると思うんですよね。

内藤:
だから、象が転ぶ穴の場所を見つけなくちゃいけない。だいたいの人達は出来ない理由を探すので、それでは象が転ぶ穴は見つかりません。

家入:
ほとんどの人は、すぐに出来ない理由を探してしまうんです。二言目には「出来ない」と言ってしまうこともある。多分、「出来ない」と言う癖がついてしまっている人はたくさんいるんですが、その「出来ない」という発想をまず止めた方がいいですよね。

内藤:
それではBASEを運営している鶴岡くんはどう考えているんですか?もう一歩踏み込んで、実際にBASEが成功するのかどうか感じているところはありますか?

鶴岡:
BASEの場合は本当に売り上げが1円も無いんです。未だに売り上げがないんですけど、「カートを作るのに1000円かかる」とか「手数料で10%取られる」というのが当たり前だった市場の中で、BASEは唯一手数料がないサービスだというのが強みとしてあります。

それは多分、家入さんと松山太河さん(エンジェル投資家)とか、僕たちが起業するときから周りに投資家の人がいたからだと思うんです。投資家の人って、ちょっとクレイジーじゃないですか。僕がBASEのスキームを説明している時に、「売り上げはないです、ただユーザーが増えればいいと思います」って言ったんです。そうしたら投資家の方が「すごいね」って言うんですよね。普通の観点じゃない。

BASEは今もほぼ売り上げがないですし、大変な額の赤字を出していますが、投資家の方は会社の価値が上がっていく中で未来をちゃんと見ている。僕は一歩二歩ぐらい先のことしか見ることができなくて、単純に「ユーザーが喜んでくれればいいでしょ」ぐらいの想像しか出来ません。でも、さらに先を読んでくれる人が、「そのまま続けても問題ないよ」と言ってくれますし、「どうやって利益出すの」という質問に対しても、「目先の売上とかいらないでしょ。AmazonとかGoogleとか見てみなよ」という風に言ってくれるんです。

サービスの今後について広い視点で見ることができる人が近くにいることが比較的大きくて、投資家の方に影響を受けて、未だにマネタイズをしていないですが、ガンガン資金を調達して、人材面についても協力してもらいながら会社を大きくしていこうと考えています。「この人の言うことなら聞いてもいいな」と思える人が近くにいることも、サービスが成功すると確信を持てた大きな要素だったなと思います。

ワンピースのような物語と損得を超えた関係が仲間を作る

内藤:
ちょうど今、仲間の話になったので、会社の仲間についてお伺いします。いわゆる「社長」というと、自分の魅力で人を惹きつけて、人前に出て行くイメージがあると思います。2人とも最初の印象は人付き合いが苦手そうで、いわゆる「社長」のイメージとは違ったんです。会社の最初の段階でどうやって仲間を見つけたのかという話や、仲間を見つける中でどういう人を仲間に入れるのがいいのか、どういう人は入れてはいけないのか教えて欲しいです。BASEではジョインする仲間をどういう風に選んだのでしょうか?。

鶴岡:
最初は仲間を集める力がありませんでした。僕の場合、最初は思いっきり「家入パワー」を使うっていうことを意識していました。裏技のようなものですね。僕は学生だったので、家入さんの周りに集まった人を仲介してもらってからBASEに来てもらうっていう卑怯な作戦を取っていました。

内藤:
最初のチームではどれぐらいの人数が家入さん経由だったのですか?

鶴岡:
リリースの時点では7、8人ぐらいいて、優秀なデザイナーやエンジニアの方も最初は手伝ってくれました。CTOとしてえふしんさん(「モバツイ」の開発者として知られる藤川真一氏)もいますし、業界で有名な方々がメンターでいます。ちょっと前まで大学生だった自分に、最初から人を惹きつけるようなパワーは備わっていないじゃないですか。そういうときは、周りの力を露骨に、何の躊躇もなく利用するようにしていました。

内藤:
家入さんは、逆にどういう人を鶴岡くんのところに送り込んでいったんですか?

家入:
送り込んだというか、勝手に取られちゃったっていう感じがありますね。仲間に関して言うと、よくする話で「ワンピース」ってあるじゃないですか。ワンピースって、結局ルフィーの大きな物語があって、そこにジョインする仲間たちの物語があるんです。目的はそれぞれ個別にあったりするわけですよね。でも、ルフィーの船に乗ることで、ルフィーの夢を叶えてあげたいし、自分たちの夢も叶えられそうだという物語がある。物語を語るというのはすごく大事だと思います。僕、ワンピースって読んだことないんですけど。

あとは損得を超えて付き合うのがすごく大事で、損得で何事も考える人って最終的になんとなく損してるんですよ。損得を超えて、「一緒に何が出来るか」というのがすごい大事で、Livertyに関しては給料は払ってないです。組織でWebサービスをバンバン出して作っていくのですが、サービスとして収益が上がればその分はLivertyにいる全員に分配しますよと言っています。その代わり固定給とか、つながりについては「そういう組織じゃないんで」ということで持っていない。僕も自費でサーバを借りて、集まってくる子たちに色々教えてあげていますし、Livertyのメンバーも給料がない中で開発しています。そのような損得を超えたところって、結構つながりが強固になっていく部分があるんじゃないかなと考えています。大事なのはあんまり損得勘定で考えないということですかね。

Startup Boarding Gateとは

 「Startup Boarding Gate」とは、起業を目指す学生が持つ「ものづくりへの想い」をカタチにするプログラムです。Startup Boarding Gateの目的は、「これまでの世の中にない価値を若者の手で生み出す」こと。ドリコムではStartup Boarding Gateを通じてイノヴェイションを起こす起業家の育成・支援を行っています。

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