香港:本土へのデモ波及 中国政府が神経ピリピリ
毎日新聞 2014年10月02日 10時39分(最終更新 10月02日 15時55分)
【香港・隅俊之、北京・工藤哲】香港の次期行政長官選挙の制度改革に抗議する大規模デモが拡大する中、中国政府が中国本土へのデモの波及に神経をとがらせている。国内メディアのデモ報道も統制しており、国内の民主化や政治改革の動きを刺激しかねない事態とみて警戒を強めている。
中国は国慶節(建国記念日)に伴う連休中だが、香港メディアによると、中国当局は1日から香港への新たな団体旅行用の通行証発給を停止。既に旅程が決まっている観光客については、旅行会社にデモ現場に近づけさせないように通知を出した。香港経済にとって重要な中国人観光客を止めることで圧力を強めるとともに、中国人観光客がデモの影響を受けないようにするための措置とみられる。
湖南省から1日に来た会社員の女性(43)は「既に決まった制度に反対するのは理解できないが、こちらに来て運動が激しさを増していることがよく分かった」と驚いた様子だった。
また、中国本土では、インターネット上などで香港のデモ支持を表明した民主活動家など10人以上が中国当局に拘束されたり、警告を受けたりしている。デモでは催涙ガスを避けるための雨傘が抗議活動の象徴として伝えられるが、中国版ツイッター「微博」では「雨傘革命」などのキーワードが検索できなくなるなど、ネット上の規制も強化されている。
北京では、香港のデモを伝えるNHKの海外向け放送が再三中断されているほか、米CNNや英BBCの放送も遮断され、主要紙もほとんど報道していない。当局が国内への波及を懸念し、報道を規制している模様だ。中国指導部には民主化を求める学生らを軍が武力鎮圧した天安門事件(1989年)の苦い経験があり、国際世論の動向も見極めながら対応策を探っているとみられる。