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オレンジ色ラインの中央線と黄色ラインの総武線が行き交う、JRの御茶ノ水駅は東京一見晴らしのよい駅と言ってもよいだろう。ホームから見えるのは、渓谷のような神田川の流れ、トンネルからひょっこり顔を出し川を渡る地下鉄丸ノ内線、聖橋と御茶ノ水橋の存在も風景に趣を与えている。
この駅では、ホームの両側それぞれの端っこで、まったく違う鉄道風景が展開しているところも素晴らしい。
上り方向の端っこでは、総武線と中央線のホームに段差がある。これは、総武線の線路が駅のホーム内から33パーミルという急勾配を上って、そのすぐ先にある神田川の鉄橋を渡るので、ホームの端の線路が上り坂になっているためだ。
都内の在来線が上り下りできる最急勾配は原則として35パーミル(1キロ間で35メートルの高低差)と定められているから、この33パーミルは、かなりのスペクタクル。中央線の電車はその総武線の下をくぐって右カーブし、神田・東京方向に向かう。このホーム端から見える、急勾配とカーブ、分岐、立体交差というドラマチックな線路は大いに見応えがある。
ホーム中ほどに立つと聖橋の橋脚が、駅とほぼ一体化していることにも気づく。聖橋は昭和2年、御茶ノ水駅は昭和7年、関東大震災の復興事業として当時最新のモダンなデザインで誕生した。今もその輝きは衰えていない。
ホームの新宿寄りから見えるのは、やはり神田川に架かる、駅前の御茶ノ水橋。金属製のリベットの目立つグリーンの色合いは、中央線や総武線のオレンジや黄色にマッチしていい感じ。その橋の向こうから、電車が川沿いに激しく蛇行しながらホームに入ってくる眺めは、まさにエキサイティング! この神田川沿いのカーブは中央・総武線に乗車していてもかなり楽しめるが、御茶ノ水駅のホーム、特に中央線上りの4番線中ほどから眺めるのがおすすめだ。
東京生まれ。東京女子大卒業後、雑誌「東京人」勤務。1997年より副編集長、2010年退社。都市、建築、鉄道、町歩きなどをテーマに執筆活動を行う。著書に「大人の東京散歩 昭和を探して」「東京の地下鉄ぶらぶら散歩」「鉄道沿線をゆく 大人の東京散歩」など。
鉄道にグッとくるとは? 雑誌「東京人」元副編集長、鈴木伸子が日々の通勤、通学電車で見つけることのできる「まずはココを見て 乗って楽しむべき!」というカーブや鉄橋を、ポイント別に写真と文章で解説。