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2014-09-13 リフレ派にみていただきたい一枚の図 このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

今日は見ていただきたい図表はたった1枚です。
大恐慌期の米国での物価政府赤字(支出)額の関係です。
(図1)

デフレ期の政府支出物価上昇は一見バラバラな関係?
f:id:shavetail1:20140913154128j:image:w360
図1 連邦政府赤字額12ヶ月移動平均CPI対前年比伸び率
出所:向井文雄(2013)「日本国債のパラドックス財政出動経済学」p40
原著出典は全米経済研究所NBER Macrohistory Database

両者の間には一見して何らかの正の相関がありそうです。
ところが、よくみてみると1933年から1934年にかけては、物価上昇が政府支出に先行し、1936年から1938年頃は物価上昇(下落)は政府支出増加(減少)と同時または遅行しています。

このように、政府支出物価上昇のタイミングがバラバラなことから、「財政政策と物価上昇との間には明確な関係は見出だせない」という主張もあるようです。*1

「日本国債のパラドックスと…」の著者、向井文雄氏はこの一見矛盾した関係について次のように説明しています。

1)公共投資の効果(1933−34年)
1933年にはゴールデンゲートブリッジ(建造開始が1933年1月)のような、完成に数年を要する大規模公共投資が行われました。 公共投資の場合、発注を受けた企業は受注と同時に原材料・中間材料・設備投資を発注し、労働者を集めて建設や生産を開始します。 政府からの支払いは受注時ではなく納品後に行われるため、政府支出(急増は34年)を基準にすれば、市場での需要創造はそれに遡る発注時点から発生し、物価賃金に好影響を与えると考えられます。

2)個人への一時金支給(1936−37年)
1936年6月には巨額の退役軍人年金一時金が一括して支給されました。
こちらは公共投資とは異なり、政府支出増加時点で民間にマネーが供給され、需要に巨大な影響を与えました。この一時金は支給後徐々に使われたでしょう。 従って、政府支出と同時に、もしくは遅行して物価には影響が及んでいます。

要するに、向井氏の主張では、一口に財政政策と言っても、公共投資民間への一時金給付では物価や需要に与える影響はタイミングが異なっているというのですね。

シェイブテイルとしてはこの向井氏の説は説得力があるように思います。
デフレ脱却には財政は無効と論じる方々からの反論に期待したいところです。*2

*1:例えば田中秀臣安達誠司(2003)「平成大停滞と昭和恐慌〜プラクティカル経済学入門

*2:などとツイッターで言っている内に、相互フォローしていた田中秀臣先生からはブロックされてしまいました。これは先生としては「議論より不戦敗で結構です」という意思表示と解釈すべきなのでしょうか。

rayray 2014/09/13 19:02 私も安達・田中氏をフォローしていますが、彼らは財政無効などとは言っていませんよ。
財政=公共事業のような単純思考にNOと言っているだけで、具体的に田中氏は大幅な防衛費増加を提唱しています。
これも立派な財政政策ですよね。
向井氏の説もむちゃくちゃですよ。
巨額の公共事業は民間需要を食います。
人的・物的リソースが官に集中し資材価格は高騰、人手不足により民間での作業コストは上がり、好況による倒産も起こる。全体でみれば物価・賃金ともに良くてトントン。
金をバラまくにしても、金融緩和が継続的に行われ物価が安定的に推移する長期的な見通しがなければ貯蓄に回るだけで物価には何の影響も与えません。
財政無効論と「変動相場制の先進国かつ供給成約下に於ける公共事業の効果」が低いと言うのとはまったく別の話です。
かたや金融緩和オンリー、かたや財政は必要だが中身で議論すべき。
リフレ派で金融オンリーなんて人1人もいませんよ。

shavetail1shavetail1 2014/09/13 19:15 >向井氏の説もむちゃくちゃですよ。
私は向井氏の主張を全面肯定もしなければ、田中氏の意見を否定もしていません。 両者が同じデータを逆方向に自説に引用していることを興味深いと思っているのと、この図について、向井文雄氏の主張の方がポイントを突いているのではないかと主張しています。

>リフレ派で金融オンリーはひとりもいない
そうでしょうかね? 例えば原田泰・黒田東彦。彼らはデフレ脱却に財政出動が必要だと主張していますか? 消費税増税が必要だと主張しているのは知っていますが。

また、私が狭義リフレ派と呼ぶ人々は「財政政策が不必要とは言っていない」と大半の方がおっしゃいますが、「金融政策は不必要とは言っていない」との意見を聞いたことがないように思います。
要するに、財金に対して非対称な意見ということかと。

私自身は財金それぞれ車の両輪と思っていますので、「右車輪が不要とは思っていない」などと意味不明な意見は持っていません。

すがりすがり 2014/09/13 19:40 ケインズ政策再考
http://www.nira.or.jp/pdf/review40.pdf

一時的財政の効果については、こちらのリンクにある

◦トレンドをケインズ政策で持ち上げることは難しいが、
◦ 短期的なサイクルの振幅のある程度の是正は可能かも
しれない

に集約されるんじゃないでしょうか。
まず、デフレというのは長期的なトレンドのことであり、これを変えるには政策のレジーム転換が必要。
一時的財政で需給ギャップを埋めても、それによって人々の消費行動が変化をしないかぎり、効果は一時的なものに終わる。
不況からの回復に財政の併用はリフレ派も支持していますし、恒久的財政はリフレのメニューに入ってます。
ただし、コストがかからずより重要なのが金融政策のスタンス変更ということ。
そして、いまの日本では財政による公共投資は供給制約に直面しているので、出すなら別のところが望ましいってだけ。

リフレ政策とは何か? ―― 合理的期待革命と政策レジームの変化 
http://synodos.jp/economy/802

リフレ政策って何?
http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20090212#p4

建設業界の供給制約は公共事業のせいだけではないかも
http://himorjp.blog.fc2.com/blog-entry-19

詳細はこちらにありますが、初歩的な部分なら「り〜ふれっと」ってコミュで動画にしてます。

rayray 2014/09/13 19:47 原田氏は法人税減税。減税もまさしく財政政策です。
黒田氏は日銀総裁ですよ。政府・官僚の仕事である財政政策に言及するはずがないじゃないですか。
それに「金融政策が不必要とは言っていない」誰がそんなバカなこと言うんですか?
変動相場制で自国通貨発行権がある国が金融政策を放棄する意味はありません。
シェイブテイルさんは車の両輪と考えているようですが、実際は金融が鍋に火をつける行為で財政で料理を彩るようなもので、まったく違うものです。
どちらが上とか非対称とかではなく、役割が違うのです。
それに、引用されたデータは金融政策抜きですので物価との相関がバラバラなのは当然ですよ。
しかも産業構造が異なり、フィリップス曲線もグチャグチャのアメリカじゃなく、日本のデータで比較しませんか?
日本の金融政策と物価の相関、財政出動と物価の相関、全部含めて議論しましょうよ。

shavetail1shavetail1 2014/09/13 19:56 すがりさま、rayさま。
コメントありがとうございます。

まずは、上記図1そのものについて議論しましょう。
rayさまは、相関がバラバラと言う見方のようですが、客観的に見て、図1のふたつのグラフは無関係には見えませんけれど。
民間にお金が出まわるタイミングで物価が騰がったという考え方に整合的と思えるのですが。

rayray 2014/09/13 20:11 わかりました。データについて述べます。
物価に一見相関関係があるように見えるのは「固定相場制でそれ以前の不況が深刻すぎたから」でFAです。
29年の世界恐慌でFRBはろくな対策も取らず物価−10%という超デフレに陥ります。
太平洋戦争の勃発でようやく大規模財政支出を行いました。
しかもこの時も物価の反転の主因は33-34年の低金利+大量国債買い入れ政策によるものです。
さらにこれ、「固定相場制・金本位制」での話ですからね。
変動相場制より財政の影響が大きい時代でもこれですから、現代は言わずもがなです。

rayray 2014/09/13 20:17 あと、いいですか?
シェイブさん田中・安達氏の著書を読んでいるならp67の図3-2もご存知ですよね。
FRBの国債保有状況とCPIの相関を表すグラフです。
変化率で見れば完全に正の相関がありますが、なぜこれをスルーするんですか?
著書の発言を引用しておいて、自説に都合の悪いデータは引用しないっておかしくないですか?

shavetail1shavetail1 2014/09/13 20:33 ここに示したグラフの相関は擬似相関ということを主張したいのでしょうか?
それならばそれは信じる信じないの世界なので特にコメントはありません。

では、そのFRBの国債保有状況の変化率かなにか分かりませんが、上の図よりもCPIの経時変化を示すデータはあるのですかね。

今の段階では、rayさんが「そう信じる」という話を聞いたと言う以上には私の理解は進んでいません。

rayray 2014/09/13 20:34 だからw
あなた「平成大停滞と昭和恐慌プラクティカル経済学入門」が本棚にあるんでしょ?
それのp67図3−2を見なさいよ。
私はNBERからデータを引っ張ってくる方法を知りませんので、調べていただけるなら助かります。
そう信じるっていうか、同じ本がお互い手元にあるんだから開いて見ましょうよってそれだけですw

shavetail1shavetail1 2014/09/13 20:39 >FRBの国債保有状況とCPIの相関を表すグラフです。
変化率で見れば完全に正の相関がありますが、なぜこれをスルーするんですか?

スルーも何も、私は金融政策無効論など述べていないので、正の相関はあって当然と思いますよ。 それは上記図1と何ら関係のない話ですから今持ちだされても無意味でしょう。

rayさんが、図1は「たまたま」だと主張する根拠を書いてくれますか。 民間にマネーが出て行ったと推定されるタイミングで物価が上がっているようにしか見えませんけれど。

もし為替を固定したいのなら、擬似的には、外貨を売買すればいい話ですから、外貨の売買+財政政策は有効という主張に変更されても別に構いません。 それなら財金併用論者の私の主張と大同小異です。