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「ハンド」新ルールどこが変わった? EURO開幕戦でも効果発揮

ハンドのアピールを行うFWチーロ・インモービレ

 11日にイタリア対トルコで開幕を迎えた欧州選手権(EURO2020)では、2021-22シーズンに向けた新競技規則が採用されている。大きな変更点は「ハンド」の反則について。開幕戦でもいくつかのシーンでハンドに関する物議を醸しており、さっそく新ルールにおける基準の変化が印象づけられていた。

 21-22シーズン向けの新競技規則では、ハンドの反則に関する文言が大幅に改訂された。まずはこれまで明文化されていなかった「競技者の手や腕にボールが触れることのすべてが、反則にはならない」という原則が明確に示され、“ボールが手や腕に接触した=ハンド”という誤解にストップがかけられた。

 またVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)の導入を機に設けられていた「競技者の手や腕が肩の位置以上の高さにある」などといった客観的な基準が撤廃され、審判員の裁量に委ねられる範囲が拡大した。解説部分には「主審は、その状況において競技者のプレーと関連して手や腕の位置が妥当なのかどうかを判断しなければならない」という文言も記されており、プレーと手や腕の位置の関係性がより重視される形となっている。

 加えて、2019-20シーズンに新たに登場した、攻撃側特有のハンド基準にも一部変更。これまでハンドとされていた「偶発的にであっても、ボールが味方競技者(チームメート)の手や腕に触れた後に得点する」「偶発的にであっても、ボールが自分や味方競技者の手や腕に触れた直後に得点機会を作り出す」ケースはハンドにあたらないことになった。

 変更点は以下のとおりとなっている。

<旧競技規則>
■競技者が次のことを行った場合、反則となる。
▽手や腕をボールの方向に動かす場合を含め、手や腕を用いて意図的にボールに触れる。
▽ゴールキーパーを含め、偶発的であっても、手や腕から相手チームのゴールに直接得点する。
▽偶発的であっても、ボールが自分や味方競技者の手や腕に触れた直後に
・相手競技者のゴールに得点する
・得点の機会を作り出す
▽次のように手や腕でボールに触れたとき
・手や腕を用いて競技者の体を不自然に大きくした。
・競技者の手や腕が肩の位置以上の高さにある(競技者が意図的にボールをプレーしたのち、ボールがその競技者の手や腕に触れた場合を除く)。
これらの反則の範囲は、ボールが近くにいる別の競技者の頭または体(足を含む)から 競技者の手や腕に直接触れた場合でも適用される。

■これらの反則の範囲を除き、次のようにボールが競技者の手や腕に触れた場合は、反則ではない。
▽競技者自身の頭または体(足を含む)から直接触れる。
▽近くにいた別の競技者の頭または体(足を含む)から直接触れる。
▽手や腕は体の近くにあるが、手や腕を用いて競技者の体を不自然に大きくしていない。
▽競技者が倒れ、体を支えるための手や腕が体と地面の間にある。ただし、体から横または縦方向に伸ばされていない。

<新競技規則>
■競技者の手や腕にボールが触れることのすべてが、反則にはならない。

■競技者が次のことを行った場合、反則となる。
▽例えば手や腕をボールの方向に動かし、手や腕で意図的にボールに触れる。
▽手や腕で体を不自然に大きくして、手や腕でボールに触れる。手や腕の位置が、その状況における競技者の体の動きによるものではなく、また、競技者の体の動きから正当ではないと判断された場合、競技者は不自然に体を大きくしたとみなされる。競技者の手や腕がそのような位置にあったならば、手や腕にボールが当たりハンドの反則で罰せられるリスクがある。
▽相手チームのゴールに:
・偶発的であっても、ゴールキーパーを含め、自分の手や腕から直接得点する。
・偶発的であっても、ボールが自分の手や腕に触れた直後に得点する。

*****

 開幕節のトルコ対イタリア戦でも、新ルールの影響を感じさせるシーンがあった。象徴的だったのは前半44分、左サイドを突破したイタリアDFレオナルド・スピナッツォーラ(ローマ)のクロスがトルコDFゼキ・チェリク(リール)の腕に当たった場面。やや半身のような形で対応したチェリクの腕は、身体のラインから外れており、これまでのルールだと「手や腕で体を不自然に大きくした」としてハンドが取られかねないシーンだった。

 だが、開幕戦を任されたオランダ人のダニー・マッケリー主審はVARのチェックを経て、そのままプレーを再開。新ルールに加えられた「手や腕の位置が、その状況における競技者の体の動きによるものではなく、また、競技者の体の動きから正当ではないと判断された場合、競技者は不自然に体を大きくしたとみなされる」という基準を踏まえ、手や腕の位置が正当な場所にあったと判断したようだ。

 その他にも、イタリアFWチーロ・インモービレ(ラツィオ)のミドルシュートがトルコDFチャグラル・ソユンク(レスター・シティ)の腕に当たった前半22分の場面など、イタリアの選手たちがハンドのアピールを行う場面は試合を通じて多発した。だが、一度もPKが与えられることなく試合は終了。新ルールの導入により、近年続いていたハンドの厳格化(より厳しくハンドを取る方向性)にストップがかかったことをうかがわせる一戦となった。

 なお、2021-22シーズン向けの競技規則ではハンドのほか、以下のような変更も行われている。

■退場要件の拡大
退場要件にあった「攻撃的な、侮辱的な、または、下品な発言や身振りをする」という条文が見直され、「身振りをする」から「アクションをする」に変更。行為の対象が広がった形となり、たとえば口頭で発信したことも含まれるようになった。

■オフサイドにおける手や腕の境界線
オフサイドの項目にも「腕の上限は脇の下の最も奥の位置までとする」というハンド同様の文言が新設された。VARの導入で厳密な判断が要求されることもあってか、手や腕は反則の対象外になるオフサイドの項目でも念押しする形となった。なお、身体の一部がディフェンスラインに残っていればオフサイドにならないという趣旨の、いわゆる“ベンゲル・ルール”は、あくまでも検討段階で今回は採用されていない。

■不当なバックパス
間接FKにあたる反則に「競技者が競技規則の裏をかいて、(フリーキックやゴールキックを含め)意図的に味方のゴールキーパーに頭や胸、膝などでボールをパスする」行為が追加された。これまではゴールキックでこうした行為がみられた場合、ゴールキックをやり直しするのみだったが、今後は一転してピンチを迎えることになる。またGKによってこの行為が行われた場合、イエローカードが出されることも新たに決まった。

 2021-22シーズンの競技規則はEURO2020のほか、7月下旬に開幕する東京五輪でも採用される予定。またJリーグでも、国際Aマッチウィーク中断明けの6月19日から導入される。

<新ルールの導入スケジュール>
▽国内リーグ戦
J1:6月19日(第18節)
J2:6月19日(第19節)
J3:6月19日(第12節)
ルヴァン杯:9月1日(プライムステージから)
JFL:6月19日(第13節)
WEリーグ:9月中旬(開幕節)
なでしこ1部:6月19日(第12節)
なでしこ2部:6月20日(第9節)

▽JFA主催大会
天皇杯:7月7日(3回戦)
各種全国大会:原則7月25日(決勝大会)
※高円宮杯プレミアリーグは9月から

▽都道府県協会主催大会
遅くとも2022年4月1日

(文 竹内達也)
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