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転生貴族の異世界冒険録~自重を知らない神々の使徒~ 作者:夜州

第二章 少年期編

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第三十話 教会との確執1

 昨日は、少し冷めてしまったミノタウロスのステーキは、最後まで食べることができた。

 ダッシュが「作り直します!」と言っていたが、少し冷めてしまっても味は満足だった。

 ダッシュとヒミカにお礼を言うと、逆に恐縮されてしまった。

 領主ということがバレたこともあり、気遣いがひどくなってしまったが、今まで通りに対応して欲しいとお願いして、なんとか落ち着いた。

 領民にもバレてしまったが、あの場にいた一部の人たちだけだし、衛兵については問題ない。


 いつもの豪華な部屋で泊まらせてもらったあと、猫の和み亭で朝食を食べながら、今日、何をするか考えていた。冒険者ギルドについては、先週ギルドマスター達と会うことが出来たので、次は教会だろう。あの他の街より割高な回復魔法を、なんとかしなくてはならないとカインは思っていた。


「ごちそうさまでした。朝食も美味しかったよ」


 カインは食事を済ませ、ホールで働くエナクに声をかけた。


「カインお兄ちゃん、また行っちゃうの?」


 エナクは、寂しそうな表情を浮かべながら聞いてきた。


「うん、今日と明日は、領主の仕事もしないといけないからね。また食事しにくるよ」


 カインは、エナクの頭を軽く撫でてから伝えた。エナクは気持ちよさそうな顔をしている。

 ダッシュとヒミカも厨房から出てきた。


「領主様、昨日はありがとうございました。お陰でエナクもケガをしなくて済みました」


 二人が頭を下げてお礼を言ってくるが、カインは今まで通りで良いと伝えた。


「そうは言っても……」


 ダッシュは苦笑いをしながらも頷いてくれた。


「また、美味しいものが用意できるようにしておきますね。良ければまたきてください」


 隣でヒミカがそう答えた。それにカインも頷く。


「また来週、泊まるか食事には来るようにしますね。エナクちゃんもまた今度ね」


 カインは三人に挨拶をしたあと、宿を出て領主邸に向かった。

 門ではカインの姿が見えた途端、衛兵の一人がエライブを呼びに向かい、一人は頭を下げた。


「おかえりなさいませ領主様」


「うん、ただいま」


 衛兵に手を上げながら、そのまま領主邸の執務室に入っていく。

 すぐにエライブが部屋に入ってきた。


「おまたせいたしました、カイン子爵様、本日は調べるものはありますでしょうか」


 エライブの質問に対しカインは頷く。


「まだすぐにではないけど、内政官が来ることになった。この街の状態を変えないといけないしね、僕の父親のガルム辺境伯領から人を出してもらうことになる。その時は協力して欲しい」

「……内政官ですか……わかりました。泊まる場所を検討しておきます」

「あと、今日の予定だけど、午後に教会の司祭と会えるかな? 聞かないといけないこともあるし」


 カインは高額な治療費を含め、教会に聞かないといけないことがあった。これからの街を発展させるのに、医療は大事なことだ。誰でも受けられなければ意味がない。


「司祭のスタッグ殿は、あまり教会からでないというか……なんというか……」


 エライブは額に汗をかきながら説明をすることに戸惑っている。


「それはいいよ、僕のほうから教会に行くよ。最近教会にも行ってないし、たまにはお祈りもしないといけないからね。少ししたら向かうよ」


 カインは領主になってから教会に行ってなかった。またお祈りすれば神様たちと会うことになると思うが、報告も兼ねて行きたかった。

 カインはエライブから受け取った書類に、目を通しながら決済の印を押していく。そのまま執務室で昼食を食べ、少し上等の平服に着替え教会へ向かった。

 エライブは馬車を用意しようとしていたが、まだ領主になって日も浅いため、もっと街並みを自分の目で確かめたかったこともあり、断って徒歩で向かった。エライブはせめて護衛だけでもと言っていたが。

 教会は、中央広場から少し南に向かった場所にあることを確認し、領主邸からのんびりと街並みを確かめながら歩いた。人通りもそれなりにあり、店もそれなりに繁盛しているように見える。中央広場には冒険者ギルド会館もあるが、そこを通り抜け南に向かった。

 教会はすぐに分かった、この街の規模には、似合わないほどの大きさの教会だったからだ。


「グラシア領都と同じ規模の教会なんて、この街で必要なのか……」


 カインは考えながら教会の扉を開けた。入るとすぐに受付嬢が座っている。


「今日はお祈りですか? それとも治療――ではなさそうですね」


 受付嬢は入ってきたカインに声を掛けてきた。


「今日はお祈りと、あと、ここの司祭様に会いたいのですが」


 カインは丁寧に受付嬢に伝える。

 それに対して受付嬢は額にシワを寄せた。


「お祈りは銀貨一枚になります。あと、司祭様ですが、お約束がない方とはお会いにはなりません」


 教会でのお祈りは、お布施であり、料金ではない。各個人の判断で金額は決められるはずなのに、ここの教会は金額設定していることに、カインは疑問に思った。しかも銀貨一枚は一万円になり、一度のお祈りのお布施としては高額すぎた。


「この教会ではお祈りするのに、お布施の金額まで指定しているのですか? 他の街では、各個人にお布施の金額は委ねられているはずですが」


 悪習であるため、カインは強めに受付嬢に言った。


「私にそんなこと言われても困ります。司祭様からの指示に従っているだけですので。払えないのならお帰りください」


 少し声が大きくなってきたこともあり、教会騎士が二人ほど奥から出てきた。

 教会では、独自の騎士制度があり、王都にある教会から各街の教会に派遣されている。一環して白い鎧を着ており、見ればすぐにわかる。


「騒いでるようだが、どうかしたのかな?」


 教会騎士の一人が受付嬢に聞きに来た。


「この子供が、お祈りするための料金にケチをつけてきたのです」


 受付嬢の話を聞いて、教会騎士はカインのほうを向く。

 教会騎士はカインの目の前まで来て、膝をついて視線を合わせてくる。


「君は他の街から来たんだね。この街ではそういう仕来りになっているんだ。司祭の権限によってね。申し訳ないけど従ってくれるかな」


 この騎士は悪い人ではなさそうだった。ただ、各街の指揮権は、基本的に司祭にある。この騎士はただ従っているだけみたいだ。


「銀貨を払うのは問題ありません。ただ、一般の人がお祈りするのに銀貨は高すぎでは? 治療費についても法外な金額を取っていると聞きました。この料金について今日は話にきたのです。僕は新しくここの領主になったカイン・フォン・シルフォード・ドリントルです。司祭に話してきてください」


「「「えっ……」」」


 カインが領主だと知り、教会騎士と受付嬢の三人は驚いた。


「何か証明できるものは……」


 恐る恐る騎士の一人が問いかけてきたので、領主の証明である短剣を出して見せた。

 短剣を見て領主だと確認した騎士は、顔を青ざめた。


「申し訳ございません。すぐ、司祭様に確認をとってまいります。しばらくお待ちください」


 騎士の一人が走って奥に消えていった。

 待つこと数分で、騎士が戻ってきた。


「遅くなり申し訳ございません。スタッグ司祭がお会いになるそうです。ご案内いたしますのでどうぞこちらへ」


 教会騎士の案内で、応接室に通された。ここの応接室は、金銀の宝飾で飾られ、壁にはいくつもの絵画が壁に取り付けられ、とても教会の応接室とは思えないほど、金をかけて作られていた。

 座ったソファーについてもそうだ。お尻が沈み込むほどの柔らかさをもった高級品だった。シスターが紅茶を出してくれたが、香りがよく味も美味しいもので、とても市販で売っているものではなかった。そして少し待つと、司祭と思われる人が入ってきた。いや、人と言うかオークと見間違えるほどの太った司祭だ。


「待たせてすいません。色々と忙しくてね……。ここの司祭をしていますスタッグです。カイン子爵初めまして」


 スタッグ司祭は、重そうな体を揺らしソファーに座った。一人座っただけでソファー軋むほどの重さだ。

 しかも口からは酒の匂いがしてくる。あまりの臭いにカインは額にシワを寄せた。


「新しくこの街の領主となった、カイン・フォン・シルフォード・ドリントルです。ここの街の教会について質問をするために来ました。まずはですね……」


 こうしてカインとスタッグ司祭の会話での戦いが始まるのであった。

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