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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

盾の勇者の成り上がり

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研究資料

「古いRPGのダンジョンかよ……」


 罠は結構あるが、物理的に破壊する事が出来た。

 岩が転がってきたり、天井が落ちてきたが、フィーロとガエリオンでどうとでもなった。

 岩は蹴り飛ばして破壊だ。

 天井? 俺がつっかえ棒で抑えている内にガエリオンがフィーロに張り合ってぶち壊した。


 なんて言うか、正義ゾンビつながりで生物災害のゲームが脳内再生される。

 探索時間は30分程度で、結構奥まで進めたけどさ。

 一度、外に出て、洞窟みたいな場所に出た。

 キールが言ってた洞窟とはここの事だろうか?


 牢屋みたいな格子の嵌まった部屋があったし、盾の悪魔の配下収容所とか書かれていた。

 やがて研究所みたいな所に入って、資料を調べると俺の行動がメモされた書類とか出てくる出てくる。

 戦闘分析をしていたようだけど、どうも人伝の情報ばかりで実際の戦闘能力は低く見積もられていたようだ。


 バイオプラントの奪取計画とか、色々と俺の領地への嫌がらせを画策しては凍結している物が目立つ。

 ラトの研究所みたいな試験管が置いてあったりするし、ここには錬金術師も居たみたいだ。

 というか……。


「一体どこまであるんだよ、この建物」

「俺の事が書かれた書類があるぞ?」


 錬の名前が書かれた書類を本人が広げる。

 ま、問題は書かれている内容を、まだあまり読めないから理解できていないみたいだけど。


 推定Lv75って実際よりも低く見積もられている。

 熟練のLv80の戦闘員を20名配備すれば殲滅可能。

 脅威度(中)って……かわいそうに。


 剣術の腕前はマルド曰くそこまで高くない。

 王女の証言では我等の計画に同意する事は無いだろう、との事で戦力となりそうな装備、金銭を奪って放置とか経緯まで書かれている。


 あのさー……錬も別に本気で戦っていた訳じゃないんだから強さは測れないと思うぞ?

 あの時の錬はそこまで強くなかっただろうけどさ。

 間違っても、鎧よりは強い。

 伝説の武器によるごり押し的な意味で。


「そこにお前がヴィッチに捨てられた理由が書かれてんぞ」

「そうなのか?」

「我等の計画に同意する事は無いだろうってさ」

「そりゃあ……こんな所で尚文だけならともかく、国を占領する事を計画していたら断る、と思う、多分」

「いや、そこはハッキリ頷けよ」

「ああ、あの時の俺はおかしかったから自信が……」

「昔のお前は自称クールで冷静に分析してるって思っているあまのじゃくだもんな。こんな頭のおかしい所、話をするまでもなく去るだろ」

「ハッキリ言うなよ……まあ、そうだけど」


 その隣には凄く分厚い資料で俺のがあった。


 推定Lv特定不能。

 脅威度(極大)。

 神敵。

 霊亀の攻撃を防いだとされるが真相は不明。

 しかし相応の防御力はあると思われる。

 短所は攻撃能力の欠如だが、戦力を抱え込み始めている。

 早急な対策が必要。


 入念に策を練り、知略を使わねば倒す事は叶わないだろうって……。

 その戦力の中にラフタリアとフィーロについても詳しく書かれている。

 盗賊に偽装し、修行中のラフタリアや行商中のフィーロを襲撃して「正義」に目覚めさせる計画があったみたいだが、失敗及び同志の消息不明と書かれている。


 どこでかは知らないが、既に返り討ちにしていたのか。

 おそらく、修行中のラフタリア達はどこぞの町で捕まえた盗賊を連行したんだろう。

 あの短剣、アトラ位しか違いがわからないからな。


 他にも剣の勇者の強さを物差しに俺の能力を特定したとの書類もある。

 これは割と最近の物みたいだ。


 推定Lv100。

 盾に養成された捨て駒を多数使えば殲滅する事が可能と思われる。

 切り札であるマルドに最強の武具を授けて止めを刺す。

 理論上もっとも有効的な手段。


「こ・れ・は」


 盛大に大失敗! こりゃあ愚かでしかないな。

 残念ながら予想は悪い意味で裏切られた様だ。

 どうやら素手で最強の武具とやらを受け止められるとは思っていなかったみたいだな。

 次も俺の資料。少しだけ古い物のようだ。


 強固な防御を突破する手段の研究とか、変幻無双流についても書かれているが実行は難しいと凍結されている。

 まあ、あの武術は才能が必要だろうし、長い期間の修行を要する。

 使える時間が少なく、楽して強くなりたい様な連中じゃ難しいだろう。

 それに、今の俺はちょっとやちょっとの防御無視攻撃なら無効化できる。


 他、色々と短い期間で考えていたみたいだけど、最終的には俺の配下を「正義」に導くという計画にシフトして行ったようだ。

 ご苦労な事で。

 その無駄な努力を何故別の事に使えないのか。


「ごしゅじんさまーこっちの壁に何かあると思うよ」

「そうか。ぶち破れ!」


 謎解き? 知らんな。

 どうせどこかにマスターキーみたいのがあるんだろうが、探すのが面倒臭い。

 まあ、三勇教の幹部とかが持ってそうだが、その必要も無い。


「はーい!」

「キュア!」


 フィーロとガエリオンが張り合う様に壁をぶち壊した。

 その中には隠し扉があったようで中に、もう一部屋出てくる。


「また研究棚か」


 部屋の中に入ると研究資料らしい書類をまたも発見した。


「なになに、勇者の武具の……複製?」


 手始めに書類の端から、読み解いてみる。

 ……教皇が所持していた武器の解析が書かれていた。


 維持コストや魔力を振り込む方法など、様々な角度から武器の複製を試みていたようだ。

 過去の文明が作りだした遺産であったらしく、現在の錬金術でも再現は難しいとか。


 それでも量産計画が無かった訳ではないみたいだ。

 最終的には……失敗に終わったと書かれている。

 ただし……。


「勇者と言う被検体の確保が出来れば……研究は進むだろう?」


 その隣にはスケッチされた何か……武器の欠片が書かれている。


 魔王の武具の欠片のスケッチ?

 勇者の武器って破損しないはずだぞ?

 そんな物があったのか?


 というか鎧は何処へ逃げたんだ?

 鍵とかを開けて進んでいるのだろうか?

 いい加減、ウンザリしてくる。

 この辺りは後で女王に調査を依頼しておこう。

 調べたらキリがないし。


 で、追跡を重視して行くと、研究所の最深部に辿り着いた。

 沢山の試験管みたいな培養層の中に短剣が浮かんでいる。

 どうやらここがあの武器の出所みたいだな。


「アトラ、何かわかるか?」

「はい。禍々しい気が……あちらから漂ってきます」


 アトラが短剣を指差した後、試験管から伝わる管の先を追っていく。

 ま、そうだよな。


「前よりも強くなっています」

「という事は奴等の本命があるかもしれないな」


 結構、面白くもあった。後で徴収でもするか。

 ラト辺りが喜びそう。錬金術繋がりで。

 資金援助があまり出来なかったから、この施設の物品を後で押収して再利用しよう。


「キュア!」


 ガエリオンが特定の方向を見ながら俺の裾を銜えたがる。


「なんだ?」

「あっちに宝の匂いがするみたい」

「後にしろ」


 宝が大好きドラゴンだもんな。

 後で、押収しような。

 どこで集めてきた宝かは知らないが。


「やーい、怒られたー」


 フィーロもフィーロだな。

 なんてやっている内に大きな部屋に出た。

 そこで鎧が石板をキーボードみたいにポチポチと叩いていた。


「こんな所に居たのか。案内ご苦労、報酬にあの世へ送ってやろう」

「く……もう来たか! 盾の魔王め!」

「色々な仕掛けがあったようだが、ぶち破ってきたぜ? 聞こえなかったのか?」


 というか何をしていたんだ、コイツは。

 鎧の奴がニヤリと笑いながら石板に指を置く。


「だが、遅かったな。既にこちらの目的は果たした!」


 この路線だと、何か出てくるんだろうな。

 そう思いながら眺めていると鎧の後ろの床が二つに別れて下から何かが上がってくる。

 見た感じ、何かの試験管か?


「尚文様」

「ん?」

「あそこから、強烈に禍々しい気が流れてきます。おそらく、今回の事件の根源かと思います」

「そうか」


 一体何が出てくるんだ?

 この建物と雰囲気的には暴君的な魔物が出てきそうだよな。

 鎧はその犠牲になって殺される感じ。


「ハッハッハ!」


 高笑いする鎧を無視して試験管を凝視する。


「な――」


 そこには弓の勇者である樹が、試験管の中で眠っていた。

 だけどその様相は少々異彩を放っている。


「ぶふっ!」


 目隠し、そして口にギャグボールを咥えた樹。

 なんの冗談だ?

 無難に捕まっていたと考えるべきなんだろうが、SM的な意味を想像する俺は相当汚れているな。


 ともかく酷い姿だ。

 これは笑う。

 どこに消えたかと思っていたら、ここで奴等に監禁されていたのか。


「い、樹!? 一体どうしたっていうんだ!?」

「ふぇえええええ!?」


 笑いを堪える俺とは対照的に錬とリーシアが困惑した表情で驚いている。

 どちらと言えば、二人の反応の方が正しいと思う。

 ラフタリア辺りが居たら注意されそうだ。


「それがお前の切り札か?」


 鎧に取って樹は正義じゃないんじゃなかったのか?

 ああ、困ったから泣きついた的な感じ?

 でもなんで試験管に入っているんだ?


「さあ、目覚めよ! そして盾の魔王を殲滅するのだ!」

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