家を売りたいときやマンションを借りたいとき、まず最初にすることといえば、不動産屋選びですよね。
「不動産屋のこと何も知らないから、どこに頼んだらいいのかわからない・・・」
そんな不動産初心者の方にオススメの本があります。
現役不動産屋である斎藤智明氏の著書『サザエさんの「花沢不動産」はなぜ潰れないのか?』。
「花沢不動産っていつもお客さんがいなにのに、どうやって儲けているのだろう?」
をテーマに、不動産屋さんの仕事や儲けの仕組みをわかりやすく教えてくれる本です。
さらに、この本は不動産屋のしくみだけでなく、良い不動産屋の選び方や注意点も紹介しています。
この本を読めば、きっと不動産屋選びの参考になることでしょう。
もくじ
1. 花沢不動産が潰れないのは「賃貸仲介」と「賃貸管理」が主な業務だから
冒頭でも言いましたが、花沢不動産っていつもお客さんがいなにのに、どうやって儲けているのでしょうか?
その答えは花沢不動産の業務内容にありました。
実は、一口に不動産屋と言っても不動産の業務は全部で12種類もあるのです。
それぞれの業務について見てみましょう。
- 開発型不動産屋
大きい土地を購入し、マンションや複数の戸建てを建てる仕事。
「デベロッパー」とも言われる。 - 販売代理型不動産屋
デベロッパーが建てたマンションや戸建て物件を代理人として一般の消費者に販売する仕事。
デベロッパーから販売代理手数料を得ている。 - 売買仲介型不動産屋
建物の売り主と買い主を仲介する仕事。
街の不動産屋の多くは売買仲介型不動産屋か、賃貸仲介型不動産屋。
売主または買主から仲介手数料を得ている。 - 賃貸仲介型不動産屋
貸主と借り主を仲介する仕事。
売買仲介型不動産屋同様、街でよく見かける不動産屋。
貸主、借主から仲介手数料を得ている。 - 賃貸管理型不動産屋
不動産物件の管理をする仕事。
賃貸不動産の場合は賃貸仲介会社が管理業務も行うことが多い。
分譲マンションの場合は、管理専門の会社が多くある。
業務手数料を得ている。 - 大家型不動産屋
自らが地主やアパート・マンションの貸主である不動産屋。
- サブリース型不動産屋(転貸型不動産屋)
貸主から複数の物件を借りて、今度は自分が貸主となって転貸する仕事。
マンション20室を、1室8万円で借りて、10万円で貸すと1室2万円の利益となり、全室埋まれば一月40万円の利益が生じる。 - 買い取り転売型不動産屋
不動産の買取をして、その不動産に付加価値をつけて再び売却する仕事。
マンションを早く売却したいときに、一般の消費者を探すのではなく買取転売業者に売却することもある。 - 地上げ屋型不動産屋
地主を説得して土地を買い、マンション業者などに転売する仕事。
- 任意売却型不動産屋
住宅ローンが払えなくなり、家を手放さなければいけないとき、より高く売却できるように手伝う仕事。
金融機関は満額を回収したいが、競売にかけても市場価格よりも低い値段しかつかないことが多く、債権額の満額回収ができない。
少しでも高い値段で売却を行い、満額回収できるよう務めなければならない。 - 競売買取型不動産屋
競売の入札に参加して、競落した不動産に付加価値をつけて売却する仕事。
競売に掛けられるのは、所有者が住宅ローンを払えなくなり手放すこととなった不動産。
競売に掛けられた物件を実際に見ることなく、物件資料だけで買い取る。 - コンサル型不動産屋
不動産売却、土地活用、相続処理など不動産に関する悩みや問題を解決する仕事。
問題解決による成功報酬を得ている。
以上が不動産業務の種類です。
アニメから分析した結果、花沢不動産は「賃貸仲介型不動産屋」であり、「賃貸管理型不動産屋」であると考えられます。
2. 花沢不動産が潰れない2つの理由
では、なぜ賃貸仲介型不動産屋であり、賃貸管理型不動産屋でもある花沢不動産は潰れないのでしょうか?
潰れない理由1. 花沢不動産は貸主から直接物件を預かっている
まずひとつ目の理由として、花沢不動産は貸主から直接物件を預かっていることがあげられます。
「貸主から直接物件を預かっているとどういうメリットがあるの?」
という疑問を解決するために、まず仲介型不動産屋が利益を得る仕組みについて見てみましょう。
利益を得る仕組みの前に、売買仲介型不動産における不動産売買の流れを知っておくと、より理解しやすいので説明していきます。
不動産売買の流れ
- 売主が不動産屋Aに物件の売却を依頼する。
- 不動産屋Aは物件のメイン管理者になる。
- 売主が不動産屋Aと「専任媒介契約」または「専属専任媒介契約」を交わした場合、不動産屋Aは「レインズ」に物件を登録する。
※専任媒介契約
売主は物件の売却を1社の不動産屋しか依頼できない。※専属専任媒介契約
売主は物件の売却を1社の不動産屋しか依頼できず、売主自らが買い手を見つけても、その不動産を通して売買契約を行わなければならない。※レインズ
不動産情報を各不動産屋で共有するための情報ネットワークシステム。
専任または専属専任媒介契約を交わした場合、不動産屋は「レインズ」に物件を登録しなければならない。
東日本不動産流通機構REINS TOWER - 不動産会社Aが直接買主を見つけるか、別の不動産会社が「レインズ」を見てお客さんに物件を紹介する。
- 売買契約成立。
これが売買仲介型不動産における不動産売買の流れです。
花沢不動産が儲かるしくみ
不動産屋は売買契約が成立すると、大きく分けて2つの手数料をもらうことができます。
ひとつ目は売主が払う仲介手数料。
もう一つは買主が払う仲介手数料。
手数料は売主も購入者も同じで、物件が400万円を超える場合、物件価格の3%+6万円+消費税になります。
たとえば物件が4000万円だった場合、手数料は売主、買主それぞれ126万円+消費税になるということです。
ここからが儲けのポイント。
もし、売主から売却の依頼を受けた不動産屋Aが直接買主を見つけた場合、売主と買主の両方から仲介手数料を得ることができます。
「レインズ」を通して不動産屋Bが買主を見つけた場合は、売主の仲介手数料は不動産屋Aに支払われ、買主の仲介手数料は不動産屋Bに支払われます。
つまり、売主と買主の両方から仲介手数料をもらう方が利益が2倍になるということです。
このように両方の手数料をもらうことを、業界用語で「両手」と言い、片方の手数料のみもらうことを「片手」と言うのだそうです。
ではここで、花沢不動産の話に戻りましょう。
花沢不動産は賃貸仲介不動産屋で、貸主から直接物件を預かっていると話しましたよね。
賃貸の場合も売買仲介と同様に手数料が生じます。
つまり、花沢不動産がもしお客さんと直接賃貸契約した場合、両手で手数料を得ることができるし、別の不動屋がお客さんを仲介したとしても、少なくとも貸主から手数料を得ることができます。
だからお店を派手に飾ったり、必死に客引きなどしなくても利益が生じるというわけです。
潰れない理由2. 賃貸管理業務で手数料を得ている
花沢不動産が潰れない理由2つめは、花沢不動産が賃貸管理業務を行っているということです。
賃貸管理業務は、契約更新業務や保険契約締結業務、家賃集金代行など契約後の業務も多く、その都度手数料が得られるから利益が生じるというわけです。
3. 不動産屋は会社ではなく人で選べ!失敗しない不動産屋の選び方
では、ここから『サザエさんの「花沢不動産」はなぜ潰れないのか』で紹介されている良い不動産屋の選び方を見ていきましょう。
著者は、良い不動産屋の見分け方として会社ではなく人で選ぶようアドバイスしています。
不動産屋担当者を見る4つのポイント
1. 不動産取引の経験が豊富であること
経験はとても大切なこと。
担当者に直接不動産取引の経験を聞いてみましょう。
2. 宅地建物取引士であること
難しいことで有名な宅地建物取引士資格試験(宅建)。
不動産適正取引推進機構「28年度宅地建物取引士資格試験実施結果の概要」によると、平成28年度の宅建受験者数198,463人のうち、合格者数が30,589人で、合格率が15.4%という結果から見ても、合格する難しさがわかります。
宅建に合格したということは、不動産に関する知識が豊富である証でもあるから、安心して相談できますね。
3. メリット・デメリットをしっかり説明できること
良いことだけでなく、悪いこともしっかり説明できる人であるかどうかを見極めましょう。
お客さんが聞くよりも前にデメリットを説明できるかがポイント。
利益を求めて良い事だけをいう人には要注意です。
4. 判断をするための材料を提供できること
お客さんがどういう人なのかを把握して、お客さんのニーズに合わせた説明ができるかどうかが大切。
お客さんが求めるすべての条件を満たす物件はなかなか見つからないので、何を優先にするべきか一緒に考えてくれる人が良いですね。
4. 中古物件の売却「囲い込み」に要注意!不動産選び3つの注意点
お客さんの不利益になるような不動産屋はできれば利用したくないですよね。
そんな人のために、『サザエさんの「花沢不動産」はなぜ潰れないのか』には不動産選びの注意点も書かれています。
1. マンションを借りるときは「おとり物件」と「仲介手数料無料」に注意
不動産屋の前を通ると、間取りの広告がたくさん貼ってありますよね。
それを見て気になる部屋があれば、店内に入って詳細を聞く人もいるでしょう。
その広告が常に新しいものに更新されているかどうかをよく見てみてください。
ただ貼り替え作業をしていないだけかもしれませんが、お客さんを引きつけるための「おとり物件」の可能性もあるから注意しましょう。
また、賃貸仲介不動産屋の広告でよく見る「仲介手数料無料」という言葉にも要注意です。
仲介手数料が無料だからといって不動産屋はその分の利益を削っているわけではありません。
借主の仲介手数料を無料にする代わりに、貸主が手数料を多く払っていることが多いのです。
その場合、もっと良い物件があったとしても、貸主から手数料をもらっている物件しか紹介されない可能性があります。
2. 不動産売却したいときは「囲い込み」に注意
不動産売却を依頼したいときは、「囲い込み」に注意しましょう。
先ほど、仲介手数料の話で「両手」の話をしたのを覚えていますか?
両手とは、売主と買主の両方から仲介手数料をもらうことでしたね。
片手と両手では利益の差が2倍があるから、不動産屋はできれば両手で仲介契約したいと思っています。
そこで、両手で仲介するために、物件情報を他の不動産屋にわざと公開せず、自社のみで物件を仲介しようとするのです。
これが「囲い込み」です。
「物件は「レインズ」に登録しなければいけないから、公開されちゃうんじゃないの?」
と疑問に思った人もいるでしょう。
専任または専任専属媒介契約のときは「レインズ」に登録しなければいけません。
だから、囲い込みは次のようにして行われます。
- 売却を希望する人と専任媒介契約を結ぶ
- レインズに物件登録(登録しないと違法)
- レインズを見た他の不動産屋が問い合わせると、「商談中」「契約が決まった」と回答する
こうしてしまえば、他の不動産屋はこれ以上なにもできません。
では、囲い込みされないようにするにはどうすれば良いのでしょうか?
ひとつ目の方法は、不動産売却を依頼するときに「囲い込みはしないでくださいね」と一言いうこと。
囲い込みということばは一般の人は使わないから、「不動産についてくわしそうだ・・・」と思わせることができます。
自分の物件が囲い込みされていないか確かめたいときは、別のお客さんになりすまして問い合わせてみるという方法もあります。
- 客のふりをして自分の物件を任せている不動産屋に電話する(もしくは誰か別の人に電話してもらう)
- 自分の物件がインターネットに掲載されていることを確認したうえで、内見依頼をする
- 他の不動産屋に頼んでレインズに掲載されている自分の物件について問い合わせしてもらう
- 「商談中」ですと返事が来たら囲い込みの可能性がある
※内見依頼した時点で売主である自分に連絡が来ていないのはおかしい。このような不動産屋とは媒介契約解消するのがオススメ。
3. 不動産屋に土地を売るときは「面積の測量」に注意
不動産屋に土地を売るときは「面積の測量」に注意しましょう。
不動産屋が土地を買うときに、売り主が把握ししている面積よりも実際の面積の方が広かった場合、そのことを売り主に告げずに狭い方の価格で購入し、売るときには実際の面積の価格で売却することがあるとのこと。
不動産屋が直接測定するときは測定結果を必ず確認するようにしましょう。
5. 【まとめ】不動産屋選びは、不動産屋を知ってからはじめよう
最後にもう一度、『サザエさんの「花沢不動産」はなぜ潰れないのか』から学んだ不動産屋のしくみと選び方をまとめておきましょう。
- 不動産屋には12種の業種があって、不動産屋ごとに得意分野があるから目的に合った不動産屋を選ぶ必要がある
- 花沢不動産は「賃貸仲介型不動産屋」であり、「賃貸管理型不動産屋」であるから潰れない
- 良い不動産屋は、会社ではなく人で見極める
- 仲介型不動産は「おとり広告」「仲介手数料」「囲い込み」に注意する
- 不動産屋に土地を売るときは「面積の測量」に注意する
不動産屋さんを選ぶ前に、不動産屋さんについて知っておくことが大切です。
儲けよりもお客さんの立場になって親身に対応してくれる不動産屋を選びたいですね。
『サザエさんの「花沢不動産」はなぜ潰れないのか』には、今回ご紹介した内容以外にも「なぜ花沢不動産は磯野カツオを欲しがるのか」など読み応えがある内容がたくさん詰まっているので、ぜひ読んでみてください!



