通常国会で明らかになった問題は数々ある。
公文書管理問題
安倍首相が自ら浮き彫りにさせた課題の一つは「公文書管理」問題だ。
行政職員が作成・取得し、組織共有し、保有するもの、という「行政文書」の定義を満たしているにもかかわらず、「私文書」だ「個人メモ」だと強弁する「定義」の不当解釈はその最たるものだ。
森友問題では財務省が「ない」と言い張り、加計問題では当初は「隠蔽」させ、文科省から出てくると「怪文書」、より明らかになると菅官房長官が「『怪文書』という言葉が1人歩き」と誤魔化した。一貫してそれは最初から「行政文書」だった。
国会が閉じた今、首相が真っ先に指示すべきは、二度と同様の問題が繰り返されないように、すなわち、政権や行政職員による不当解釈の防止を目指すための「公文書管理法」と「情報公開法」の運用改善と法改正の準備に与野党とも着手すべきだ。
一つは、公正な行政活動を促せるよう国民が監視できるよう、「行政文書」の範囲を明確に広げること。
一つは、行政文書の作成→管理・保存(=国民の利用)→廃棄のライフサイクルを明確に位置づけた公文書管理法の下に位置づけられた「細則」をブラックボックスにして「保存期間1年未満の行政文書」として「隠蔽」を可能にし(既報)、「細則」で「無法状態」になっている問題(既報)を解消しなければならない。
秋の臨時国会では、改正公文書管理法と情報効果法の改正案が提出され、それを徹底審議するのが、国会が実践すべき正常なPDCAサイクルである。
「PDCAサイクル」は計画し(Plan)、実行し(Do)、評価し(Check)、改善する(Act)ことによって、品質管理や仕事のやり方などを改善するためのビジネス用語だが、「政策」も同じことだ。「立法」し、「運用」し、「国会でチェック」を受け、「法改正」することをグルグルを繰り返して、その各段階とも「スパイラルアップ」させることが、この上なく重要だからだ。
総理夫人の地位濫用問題
「総理夫人は私人」問題も同様である。
首相夫人は明らかに「公人」でありながら、その権力の濫用を抑える合理的なルールが何もなく「政治腐敗の温床」であることが明らかになった。
「私人」だと強弁し、公務員を首相夫妻のお友達への利益誘導の一翼を担わせた。事実が「行政文書」で明らかにされると、それは「私文書」であり、国家公務員が公務時間中に内閣府のFAXなどを使ってやったにもかかわらず、「個人」がやったことと言い逃れた。
それが事実ではないと国民を納得させたいなら証人喚問に応じるべきだが、自公与党は応じなかった。選挙運動にも同行させる「私的流用」問題も曖昧なままだ。
質問主意書で「内閣総理大臣夫人の地位は規定されているのか」、「現時点では法的地位が必ずしも整理できていないために不都合が生じていると思われる。今後、総理大臣夫人に法的地位を付与するなどの制度化が必要ではないか。政府の見解を示されたい」と問われても、「お尋ねの『総理大臣夫人に法的地位を付与するなどの制度化』の意味するところが必ずしも明らかではないが」ととぼけ、「現在のところ、内閣総理大臣の夫人による総理公務補助は適切に行われている」と改善する気配もない。
PDCAサイクルの要は、課題があることを前提に少しでも「改善」を目指すことにあるが、安倍政権の場合は、「改善」は「問題を認める」ことにつながるために、「改善」が阻まれる。それがこの答弁で明らかになった。負のサイクルだ。
法制度のPDCAは国会で
法制度の場合、PDCAサイクルを回す場は「国会」である。
ところが、自民党・公明党は、国会法を濫用して、共謀罪法の採決を強行し、「評価(Check)」のところで回っているサイクルを断ち切った。首相のスキャンダル火消しと都議選のためであることは国民の目からは自明であり、支持率が低下すると、首相は記者会見という独壇場で「信なくば立たずであります。何か指摘があればその都度、真摯に説明責任を果たしていく」と述べた。
数えると、その他も足して計6回「説明」という言葉を使っている。
2回目
国民の皆様から信頼が得られるよう、冷静に、一つ一つ丁寧に説明する努力を積み重ねていかなければならない。その決意をこの国会の閉会に当たって新たにしております。
3回目(森友学園や共謀罪法について記者に聞かれて)
国会において、政府として説明を重ねてきたところでありますが、残念ながら、必ずしも国民的な理解を得ることはできていない。率直に、そのことは認めなければならないと考えています。
4回、5回、6回目(加計学園問題について聞かれて)
国家戦略特区における獣医学部の新設につきましては、文書の問題をめぐって対応は二転三転し、国民の皆様の政府に対する不信を招いたことについては、率直に反省しなければならないと考えています。今後、何か指摘があれば、政府としてはその都度、真摯に説明責任を果たしてまいります。国会の開会・閉会にかかわらず、政府としては今後とも分かりやすく説明していく。その努力を積み重ねていく考えであります。
今国会の論戦の反省の上に立って、国民の皆様の信頼を得ることができるように、冷静に、そして分かりやすく、一つ一つ丁寧に説明していきたいと思います
ちなみに「反省」という言葉は計3回。しかし、それは、数多く求められた証人喚問の要求を無視し、説明責任を果たさなかったことへの「反省」ではなく、支持率が下がったことに対する「保身」から出た言葉だった。それが明らかになったのは昨日(6月24日)だ。「来るべき臨時国会が終わる前に、衆参の憲法審査会にの自民党の案を提出したい」と講演したというのだ(毎日新聞)。
民進、共産、自由、社民の野党4党が、憲法53条に基づいて臨時国会を開催するよう要請を行ったのは6月22日。現在、与党は否定的で、週明けには首相に対して申し入れが行われると報道されている。
安倍政権では2015年秋にも同様のことがあり「安倍政権が臨時国会を開かないのは憲法違反である」と南野森・九州大学法学部教授に批判されたが、今回の事態はそれを凌ぐ。
臨時国会の開催が求められ、自らの説明責任を果たすことが、憲法53条に基づいて臨時国会で求められているにもかかわらず、その決定の前に、その憲法の改正に言及したのである。
「何か指摘があればその都度、真摯に説明責任を果たしていく」は、まったくのウソだった。
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