堀ちえみの「ドジでのろまなカメ」から戸田菜穂「すっとびウサギ」に進化した1990年代のCA候補生～1994年『スチュワーデスの恋人』より／懐かし番組表

地上デジタル放送化に伴い、テレビ番組表というものから遠ざかってしまった人もきっと数多いだろう。WEBメディア『テレビPABLO』では、そんな大人のためにかつての番組表を紐解きながらタイムトリップをお届けしたい。ウン年前の今日、夢中になって観ていたテレビは何だったのか？　テレビ情報誌『テレパル』（小学館刊）の番組表と共に、当時の世相を振り返ってみよう――今日は1994年6月21日にタイムスリップ。

23年前の今日、1994年6月21日の『テレパル』番組表からはTBS21時『スチュワーデスの恋人』にスポットを当てる。まだ「キャビンアテンダント」という言葉が一般化される前のこと。堀ちえみの「ドジでのろまなカメ」で大ブームになった『スチュワーデス物語』（1983年～1984年TBS）から10年、同作品の原作者である深田祐作を監修に、機長を目指す副操縦士とスチュワーデス訓練生の恋を描く。制作はもちろん“大映テレビ制作”だ。

コーパイ（副操縦士）・香月秀夫役で主演するのは宅麻伸。彼に恋するスチュワーデス訓練生のヒロイン・野村奈津役には、堀ちえみの事務所の後輩・戸田菜穂。同期の訓練生に井上晴美、喜多嶋舞など。今回スチュワーデス研修の“教官”となるのは森尾由美。ほか、内藤剛志、宮崎ますみをメインキャストに、純愛とその障壁が大げさすぎる展開とセリフで描かれた“大映ドラマ”らしいドラマになった。

「ドジでのろまなカメ」が「すっとびウサギ」に、恋路を邪魔するキャラクターが両手を失った片平なぎさから車いすの宮崎ますみに。ところどころ『スチュワーデス物語』へのオマージュを感じさせつつ、ハマると癖になる独特の世界。今年１月クールで話題になった『奪い愛、冬』（テレビ朝日）もお手本にした世界だ。

野村奈津（戸田菜穂）は、幼い頃からの夢、スチュワーデスを目指していた。しかし、面接がうまくいかなかったことで落ち込み、パイロットをしている叔父の野村吉郎（内藤剛志）にコネでもいいからと泣きついて叱責される。そんな奈津は、偶然出会った副操縦士・香月秀夫（宅麻伸）に励まされ、機長になる夢を追って頑張る香月の姿を見て発奮するのだった。結果、奈津はスチュワーデス訓練生になるための試験に見事合格。

その夜、香月は先輩でもありパイロットの師匠でもある野村から、姪の合格祝いの席に招待されて行ってみると、そこには奈津の姿が。奈津は香月に恋をするが、香月には行方不明で死亡認定された妻・リサ（宮崎ますみ）がいた。香月も明るい奈津を気に入り、「すっとびウサギ」とあだ名をつけて可愛がるも、リサの存在や年齢差から、奈津の想いを受け取ることは踏みとどまる。しかし、それでも奈津のスチュワーデスへの夢と自分に対する一途な思いに、やがて香月も奈津を受け入れることに。

だが、死んだはずのリサは生きていた。数年前、旅行先のフランスで海難事故に遭遇し消息を絶っていたリサは、記憶喪失の状態で画家の桜木（緒形拳）に救出され、下半身が不自由な状態で桜木の愛人同然の生活を送っていたが、記憶を取り戻して日本に戻り、香月に復縁を迫るのだった……。

『スチュワーデス物語』では片平なぎさが風間杜夫と堀ちえみの前で、義手の上につけた手袋を口をつかって外して迫るのがお決まりの場面だった。それ同様、宮崎ますみは車いすで登場する際に、「チリンチリーン♪」と鈴を鳴らすのがお決まり。それはそれで『奪い愛、冬』の水野美紀に匹敵する怖さと面白さだった。

日本航空が全面協力した『スチュワーデスの恋人』が放送された1994年、日本航空は国内においては他社に先駆けて客室乗務員の雇用形態を見直し、契約社員化させていくことでコスト削減に成功する。その後他社も追随し、「客室乗務員=契約社員」が一般化する。

「スチュワーデス」という呼称から「キャビンアテンダント」に変わったものの、待遇が下がるという現象に。すでに女性の花形職業No.1の位置は女子アナに明け渡していた“スッチー”だが、それでも男性にとっては「いつかは“スッチー”と……」と思わせる魅力的な存在であり続けている。最近CAが出てくるドラマがめっきり減ってしまったのは、ちょっと残念なことである。