民泊のルールを定めた「住宅宿泊事業法」(民泊法)が6月9日に成立し、2018年にも全国で民泊が解禁されます。今回はその法律の最初の部分を見てみたいと思います。
目次
住宅宿泊事業法の主なる条文
民泊で利用できる施設は、「住宅」に限定されていますが、その「住宅」の定義は「住宅宿泊事業法」において、次のように定められています。
第2条1項 この法律において「住宅」とは、次の各号に掲げる要件のいずれにも該当する家屋をいう。
1号 当該家屋内に台所、浴室、便所、洗面設備その他の当該家屋を生活の本拠として使用するために必要なものとして国土交通省令・厚生労働省令で定める設備が設けられていること。
2号 現に人の生活の本拠として使用されている家屋、従前の入居者の賃貸借の期間の満了後新たな入居者の募集が行われている家屋その他の家屋であって、人の居住の用に供されていると認められるものとして国土交通省令・厚生労働省令で定めるものに該当すること。
上記をまとめると、以下のようになります。
- 民泊として貸し出される施設は、台所、お風呂、トイレ、洗面設備など人が住むために必要なものとして省令で定める設備が設けられていること。
- 現に人が住んでいること。または、従前の入居者の賃貸借の期間の満了後、新たな入居者の募集が行われている家屋その他の家屋であり、人が居住するために供されていると認められるものとして、省令で定めるものに該当すること。
具体的な詳細は、これから明らかになっていきますが、上記の要件を満たしていなければ、「住宅」には当たらず、本法案の適用対象外になるものと考えられます。
年間180日の上限規制
当センターで度々解説しているように、この部分が民泊新法の最も大きなポイントになります。
民泊新法で許される民泊の範囲は、1年間の宿泊日数が180日を超えないことが条件とされています。(第2条3項)
もし180日を超えて提供された場合、どうなるのでしょう。
その事業は住宅宿泊事業に当たらなくなり、本法案は適用されないことになります。その結果、(当該事業は原則どおり旅館業に当たるため)無許可の旅館営業として、旅館業法に基づく指導、処分、罰則の対象となり得るものと考えられます。
また、180日の上限は、政令で定める基準に従って条例で引き下げることも可能(第18条)とされています。今後の動向にもよりますが、地域によっては上限日数が180日未満に制限されるケースも出てくると思われますので、注意が必要です。(年間提供日数の具体的な算定方法は省令で定められることになっています。)
なお、旅館業法の営業許可を受けた者は、民泊新法の対象外ですので、当然のことながら、180日の上限規制はかかりません。
その他の義務
その他、ホストには以下のような義務が課されています。
宿泊者の衛生の確保(第5条)
床面積に応じた宿泊者数の制限、定期的な清掃その他の宿泊者の衛生の確保を図るために必要な措置であって厚生労働省令で定めるものを講じなければならない。
宿泊者の安全の確保(第6条)
外国人観光客の宿泊者に対する義務(第7条)
宿泊者名簿の備付け等(第8条)
- 国土交通省令・厚生労働省令で定めるところにより届出住宅その他の国土交通省令・厚生労働省令で定める場所に宿泊者名簿を備え、これに宿泊者の氏名、住所、職業その他の国土交通省令・厚生労働省令で定める事項を記載し、都道府県知事の要求があったときは、これを提出しなければならない。
- 宿泊者は、住宅宿泊事業者から請求があったときは、前項の国土交通省令・厚生労働省令で定める事項を告げなければならない。
周辺地域の生活環境への悪影響の防止に関し必要な事項の説明(第9条)
- 国土交通省令・厚生労働省令で定めるところにより、宿泊者に対し、騒音の防止のために配慮すべき事項その他の届出住宅の周辺地域の生活環境への悪影響の防止に関し必要な事項であって国土交通省令・厚生労働省令で定めるものについて説明しなければならない。
- 住宅宿泊事業者は、外国人観光旅客である宿泊者に対しては、外国語を用いて前項の規定による説明をしなければならない。
近隣からの苦情への対応(第10条)
標識の掲示(第13条)
都道府県知事への定期報告(第14条)
これから民泊を始める人は、これらを一つ一つクリアしていかないと、法律によって罰せられる可能性があります。
これから2020年の東京オリンピックにかけて、各種メディアで民泊が騒がれることになると思いますが、くれぐれも「違法民泊」にならないよう、民泊ビジネスに参入していただきたいと思います。