『深夜食堂』小林薫が語る――第1回:主演であって主役でない“めしや”マスターの立ち位置「レギュラーメンバーは動く書き割り」
“元祖・食”ドラマとしても名高い小林薫・主演の『深夜食堂』シリーズ。昨年、Netflixで世界190カ国に同時配信された『深夜食堂 第四部』のBlu-ray&DVD発売に続き、昨秋に公開された映画『続・深夜食堂』もBlu-ray&DVDが発売された。
『深夜食堂』は『ビッグコミックオリジナル』(小学館刊)で連載中の「食」コミックを映像化した人気シリーズ。マスターがひとり、メニューは酒と豚汁定食だけという繁華街の路地裏にある小さな“めしや”を舞台に、訪れる客たちの悲喜こもごもの人生模様が描かれる。
2009年にドラマ版の第一部が始まって以降、回を追うごとに注目を集めた『深夜食堂』は、アジア各地でも話題となり、2015年に公開された劇場版は、大ブームを巻き起こした。
そして、第2弾として昨年公開された『続・深夜食堂』は、「第26回日本映画批評家大賞」実写部門で、主演の小林が主演男優賞を受賞。5月16日の授賞式直前、小林に自身が考える『深夜食堂』の魅力を聞いた。
主演だけど…「物語の中心にはいない」?
――日本映画批評家大賞 主演男優賞受賞、おめでとうございます。
小林:(クスリと笑って)ね。
――(笑)。どうされました?
小林:なんかね、おかしいなぁって(笑)。賞をいただけるって聞いたときにも、え? 主演男優賞なの? オレなの? と驚きました。なんでやねん、て。
――意外でしたか。
小林:そうですね。『深夜食堂』のマスターって、たしかに主演ではあるんです。でも、決して物語の中心にはいない。ドラマは“めしや”に来るお客が運んでくるんですよね。セリフにしても、マスターは『いらっしゃい』『あいよ』『お待ち』が大半(笑)。このあと『深夜食堂』のレギュラーキャストのメンバーに会うんですが、彼女たちから“なんでアンタだけが賞取るのよぅ!”とかしましく言われるのが想像できてしまって。実は楽しみにしているんです。
――『深夜食堂』が醸し出す世界観や人の心にやさしくタッチする空気感は、小林さんが演じるマスターあってのものだと思います。
小林:ありがとうございます。そうですね。だから、僕だけがっていうよりも、作品そのものの評価をしてもらえたっていう気持ちですね。監督、全スタッフ、キャストの代表として、主演をさせてもらっている僕が(授賞式に)登壇するんだと思っています。