この連載では、在庫回転率の改善ノウハウを公開しています。
弊社が不良在庫によ る倒産の危機を乗り越える過程で得たノウハウです。
在庫が増えて困っている方、資金繰りに困っている方、ぜひ読んで下さいね。

第1回:不良在庫で倒産しかけた弊社が、ユニクロより高い在庫回転率で復活した話

前回の記事では、在庫をコントロールできるようになるための重要指標として在庫回転率というものを説明しました。
在庫回転率が高ければ、少ない在庫で多くの売上をあげることができますので、資金力の弱いネットショップにとっては非常に重要な指標だということも説明しました。

在庫回転率を改善するコツは、とにかく余分な在庫を持たないことに尽きます。
在庫回転率の計算式を見ると明らかです。

在庫回転率 = 売上高 / 平均在庫高
※平均在庫高 = (期首在庫高 + 期末在庫高) / 2
※月の在庫回転率を計算する場合、期首 = 月初、期末 = 月末
※年間の在庫回転率を計算する場合、期首 = 年初の月初、期末 = 年度末の月末

この式を見ると、在庫回転率は分母の平均在庫高を小さくできれば改善することがわかります。
(在庫回転率は売上高の増加でも改善できます。そちらは別の記事でお話します。)

つまり余分な在庫を持たなければ良いということですね。
しかし、余分な在庫を持たないというのは実に難易度が高いことでもあります。

これから、余分な在庫を持たない方法を2つ紹介します。
どちらも弊社がベビー服ネットショップ『べびちゅ』で実際に行った方法です。
『べびちゅ』はこの方法を突き詰めて、在庫回転率17回転 / 年を達成しました。

本記事では2つの方法の1つ目を紹介します。
2つ目は次回の記事で紹介しますので、楽しみにしていて下さいね。

それでは参ります。

何が不良在庫なのかを知る

前回の記事で紹介しましたように、弊社は不良在庫が多すぎて会社の預金残高が枯渇し倒産の危機に陥りました。

この『不良在庫』という言葉、すごくよく使われる言葉なのによくわからないことが2つあります。

  • いったいどの商品が不良在庫なの?
  • 商品を不良在庫だと認定する条件は何?

つまり、多くの人は「なんとなく売れ残っている商品」のことを不良在庫と呼んでしまっているということです。

弊社もそうでした。
だから弊社はこう考えました。

「不良在庫が多すぎて・・・って言うけど、どの商品が不良在庫で金額にするといくらなの?」

もしこの金額が小さい金額なのであれば、不良在庫問題で倒産の危機に陥っているという理解は間違っていることになります。

そこでまずは不良在庫だと認定する条件を考えました。

不良在庫の認定条件

在庫回転率を改善する目的は、資金繰り問題を解決することです。
弊社はその観点で不良在庫の認定条件を決めました。

不良在庫 = 1カ月に1つも売れていない商品

弊社ではこれを不良在庫の認定条件にしています。

なぜ1カ月に1つも売れていない商品を不良在庫とみなすかと言うと、資金繰りのためにはその月に仕入れた商品をその月に売り切ることが一番効果的だからです。

不良在庫を削減する

不良在庫の認定条件が決まったので、次は不良在庫の削減に着手しました。

不良在庫で倒産の危機に陥った月の月末にその月の全注文を見直して、1つも売れなかった商品のリストを作りました。
当時は全てが手作業でしたので骨の折れる作業でしたが、生き残るために必死だったので頑張ってリストを作ったのを覚えています。

この作業は大変かもしれませんが、ネットショップを安定して経営するために必要な作業ですので皆さんにもぜひ頑張ってほしいと思います。

話を戻します。
作った不良在庫リストを眺めていて、気付いたことがあります。

  1. この商品、去年からずっと売れ残ってる
  2. あぁ、確かにこの商品は売れてない
  3. え、この商品はちゃんとアピールすれば売れるはず

弊社は、1と2に該当する商品を削減対象にすることに決めました。

不良在庫の削減にはセールを使いました

「なんだ、セールか」

と思われるかもしれませんが、ポイントは不良在庫だけに絞ったセールだということです。
不良在庫ではない商品(=売れる商品)をセールで値下げするようなことは行わず、月に1つも売れなかった商品に絞ったセールを行ったのです。

弊社は倒産の危機でしたので、目的は不良在庫を何としても現金に戻すことでした。
ですから不良在庫商品のセールで利益を出すことは諦め、採算度外視で現金化に動きました。

その結果、

311万円

の現金を取り戻すことに成功しました。

倒産の危機に陥った弊社にとって、311万円の現金が戻ってきたのはとても大きな出来事でした。
弊社はこの数か月後に不良在庫商品に絞ったセールをもう一度行い、その時は405万円の現金を取り戻しました。
この2回のセールで取り戻した合計716万円は、弊社が復活するのに十分な金額でした。

ここで1つ注意があります。

もし皆さんのネットショップが倒産の危機ではなく、単純に在庫が増えてきているだけなのであれば、採算度外視にはせずに粗利の出る価格でセールするようにして下さい。
ネットショップは発送するのに運送費がかかりますので、採算度外視にする必要がないのであれば利益は少しでも出しておく方が良いからです。

在庫回転率が急回復

冒頭に掲載しましたように、在庫回転率の計算式の分母は、平均在庫高です。
平均在庫高というのは、次の計算式で算出します。

平均在庫高 = (期首在庫高 + 期末在庫高) / 2

この記事で紹介した不良在庫商品に絞ったセールを行うと、上記の計算式の中の期末在庫高を減少させることができます

そうすると、平均在庫高も小さくなります
在庫回転率の分母である平均在庫高が小さくなるということは、在庫回転率が大きくなります

このようにして在庫回転率を一気に改善することができるのです。

『べびちゅ』では、倒産危機に陥った月に約0.7回転 / 月だった在庫回転率を不良在庫商品に絞ったセールを行うことで1回転 / 月にまで回復させることができました。

しかし、不良在庫商品に絞ったセールでの在庫回転率の改善には大きな欠点があります。

それは、翌月にはまた在庫回転率が悪化する可能性が高いという欠点です。
『べびちゅ』では、その苦しみも経験しました。

そこで生まれたのが、在庫回転率の改善効果を持続させる方法です。
これが冒頭に書きました、余分な在庫を持たない方法の内の2つ目になります。
次回はそれを紹介したいと思います。

まとめ

いかがでしたか?

ネットショップを経営していると在庫問題は本当に悩む問題だと思います。
小さなネットショップも中堅や大手のネットショップも、金額の規模は違えどもお金が在庫になったまま眠ってしまう状態が続くと資金繰りを悪化させてしまいます。

この記事で紹介したノウハウは、どんな規模のネットショップでも使うことができるノウハウです。
ぜひ参考にして下さいね。

ちなみに弊社では、どの商品が不良在庫かを見える化できるツールを開発中です。
完成しましたら、また紹介させて頂きますね。