卒業シーズン。子どもが持ち帰った学校だより3月号は、6年生の将来の夢が特集されており、121名の子どもたちの夢が書かれていた。「サッカー選手」「サラリーマン」「水族館でイルカショー」「インテリアコーディネーター」「ノーベル賞」「パティシエ」「金融マン」「ピアノの先生」「獣医」「映画監督」「保育士」など、思い思いの夢が並ぶ中で、目を引いたものがあった。
「人を楽しませるユーチューバーになる」
以前、大阪の小学校で夢についてのアンケートでYouTuberが3位にランクインしたという話があったが、YouTuberになりたい小学生は現実にいることがわかる。さらに見ていくと、以下のようなものも見つかった。
「ゲーマーになりガッポガポ稼ぐ」
プロゲーマーを指しているのか、ゲーム実況動画を配信しているYouTuberを指しているのかはわからないが、いずれにしろ小学生の中でYouTuberやゲーマーが仕事の1つとして認識されていることは事実のようだ。
0~12歳の子どもがいる保護者を対象としたBIGLOBEの「子どものスマホ動画視聴に関する調査」(2017年1月)によると、小学生の好きな動画ジャンルは、「ゲーム実況」「ユーチューバー「歌手のMV」となった。
また、小学生では半数以上の55.3%がYouTuberの動画を視聴し、高学年では7割近くが見ていることがわかった。なお、YouTuberの中では「HIKAKIN」がトップで、「はじめしゃちょー」が続いた。三姉妹で遊ぶ動画が人気のキッズYouTuber「Kan&Aki’s CHANNEL」に投票したのは、全員女児だったそうだ。
HIKAKINは「HikakinGames」というゲームチャンネルを持っており、ある小学2年生の男児は「マインクラフト(Minecraft)のやり方はHIKAKIN動画で覚えた」と言い切るくらい毎日のように見ている。YouTubeは次々にお勧め動画が表示されるので、筆者の子どもも検索できない幼児の頃から1人でiPadでYouTubeを見ていたほどだ。
小学生にもなれば、好みの動画を見つけ出すのは簡単だ。マインクラフトは小学生の間でとても人気が高く、未就学児の頃から遊んでいる子を何人も知っている。最近では、子ども向けのコミック誌やテレビ番組でも特集されるほどの人気だ。子どもたち自身は、YouTubeで知ったり、友だちがプレイしていて知ることが多いようだ。
「YouTuberイベントを開催したら来るのはほとんど小学生」というくらい、YouTubeは小学生の中に深く入り込んでいる。今回は、小学生の動画視聴実態と背景、問題点について見ていきたい。
実は、ゲームの実況動画視聴は小学生には限らない。スマートアンサーの調査結果(2017年2月)によると、10代男性の46.2%が週に1回以上ゲームの実況動画・プレイ動画を見ていると回答。さらに、ほぼ毎日見ていると答えた割合も26.1%と、4人に1人がほぼ毎日見ていることがわかっている。
「よく見る実況動画・プレイ動画のジャンル」は、男性はすべての世代で「アクション」がトップ。若い世代ほどマインクラフトを選んだ割合が高く、特に10代男性では34.4%と、36.6%の「アクション」に並ぶ人気だった。また、「実況動画・プレイ動画を見るかを選ぶ際に重視する点」について聞いたところ、「好きなゲームであること」「面白そうなゲームであること」が上位を占めた。
3位以下には、「好きな実況者であること」「ゲームプレイがうまいこと」「自分でプレイしたことがあるゲームであること」と続き、「自分でプレイしたことがあるゲームであること」は「自分でプレイしたことがないゲームであること」より高くなっていた。
これは、「球場で観戦した野球の試合を翌朝新聞で確認する」行為だろう。映画などでもそうだが、「もう一度追体験する」「他の人はどう感じたのか確認する」ことは楽しい行為だ。自分が知らなかった新たな情報が得られ、楽しみが深まることもある。
「ゲームは自分がやるもので他人がやっている動画を見ても面白いはずがない」と思う人もいるかもしれないが、他人がやっているのを見る意味はある。私もかつて、弟がやっているゲームを隣で見せてもらっていたことがあった。弟の方がゲームがうまく、先の展開やエンディングが効率よく見られて、ゲームの疑似体験ができて楽しかったからだ。
YouTubeの場合、1つの動画はわずか10分程度と短時間で効率よく見たいところが見られるので、時間がなくてもゲームの世界が楽しめる。また、自分が真似したいときも、動画を止めたり繰り返して見れば真似しやすい。自分がクリアできないゲームの先を見せてくれたり、裏技を教えてくれたり、プレイがうまかったりすることは、子どもたちにとって見る理由となるのだ。