はじめての寝台列車!「サンライズ出雲」の旅/古谷あつみの鉄道旅 番外編Vol.1

2017.02.07

皆さま、こんにちは!古谷あつみです。今回は古谷あつみの鉄道旅の「番外編」ということで、女子旅の要素をたっぷりと詰め込んだ、寝台特急「サンライズ出雲」の旅をご紹介したいと思います。撮影担当のカメラマンは、久保田敦さんです。

今回の見どころはここ!

1.仕事帰りでも出発OK!東京駅からはじまる旅
2.憧れの寝台列車の車内をお見せします!
3.出雲市に向けて出発!「サンライズ出雲」の旅
4.岡山駅でのお楽しみ、旅情あふれる朝食をゲット!

1.仕事帰りでも出発OK!東京駅からはじまる旅

ブルートレインと呼ばれ、親しまれていた寝台特急が姿を消し、最近は「ななつ星in九州」のような豪華クルージングトレインが注目されています。
けれど、夢のような体験ができる列車が走っている一方で、もっと気軽に利用できる寝台列車もまだあります!

その寝台列車は、ここ東京駅から出発する「サンライズ出雲」!
今や、毎日運転される最後の寝台特急です。
▲「サンライズ出雲」は東京と島根県の出雲市を結ぶ

清潔で美しく、車内設備が整った「走るホテル」のような寝台列車なので、女性も安心して利用できます。
はじめての寝台列車の旅にピッタリな列車なんです。

今回の目的地は「出雲市駅」。 そう、女子らしく縁結びの旅をするため、出雲大社を目指すのです!

「サンライズ出雲」の東京駅発車時刻は22時ちょうど。 これなら、忙しい人も仕事帰りに東京駅に直行すれば間に合いますね!
実は、私もこの日は仕事でした。 仕事帰りのサラリーマンに囲まれながら、東京駅でちょっとした優越感を味わいました(笑)
▲「サンライズ出雲」の寝台券。週末や観光シーズンには満席になることも多い

「サンライズ出雲」は「サンライズ瀬戸」と東京~岡山間を併結して走ります。
そして、途中の岡山駅で2本の列車に切り離されます。 「サンライズ瀬戸」は香川県の高松行きなので、四国の旅にもぴったりです。

きっぷを買うのも、決して難しくありません。
乗車券と特急・寝台券は「みどりの窓口」で、新幹線などと同じように買えるのです。 人気の列車なので、週末や連休は満席になることも。 乗車日の1ヶ月前からの発売なので、早めにきっぷを購入しましょう。
▲「サンライズ出雲」は、入線から出発まで約25分間、東京駅で停車。ゆっくり買い物や記念撮影もできる

「サンライズ出雲」には車内販売がなく、車内には自動販売機しかないので、東京駅で朝食や飲み物などを購入しておくのがオススメです。
私は、「あるもの」を注文してあるので、今回は朝食を買わず乗り込みます!
▲東京の夜景に包まれて、出発!

2.憧れの寝台列車の車内をお見せします!

▲シャワーカードの自動販売機

さて、さっそく車内設備の紹介!と、いきたいところですが、「サンライズ出雲」に乗ったらまずはコレ!
3号車と10号車にある自動販売機で、シャワーカード(320円)を購入しておきます。シャワーカードは数量限定なので、早めに手に入れておきたいもの。女性はお風呂に入れないと辛いですものね。
▲上下2階建てになっている車内に、個室が並ぶ

シャワーカードを手に入れたら、早速自分の部屋に向かいます。個室がずらっと並ぶ廊下を歩くだけで、ワクワクしちゃいますね!

「サンライズ出雲」「サンライズ瀬戸」には、さまざまなタイプの部屋があります。2階建てになっていて、上段・下段ともに大きく造られた窓が旅の気分を盛り上げます。 

今回、私が選んだのは「シングル」と呼ばれる1人用個室の上段。
「シングル」は、もっとも部屋数が多く、値段も比較的リーズナブルなため、いわば「スタンダードなお部屋」といったところでしょうか。 
なお、東京~出雲市間の利用だと、「シングル」の寝台料金7,560円に、乗車券11,990円、特急券3,240円(乗車券、特急券は他の個室寝台でも同額)を加え、お値段は22,790円になります。
▲「サンライズ瀬戸・出雲」でもっともスタンダードな個室寝台「シングル」(上段) 

部屋のなかは、コンパクトにまとめられています。身長171cmの私でもゆったりと眠れるベッドの脇には、オーディオのコントロールパネルやテーブルなどが備えられています。
浴衣やスリッパなども用意されているため、最小限の荷物だけ持って乗ってもOKです!

上段の部屋は、窓が天井へとカーブを描いており、星空などが眺められます。
私はやっぱり上段派!
▲こちらが「シングル」の下段

でも、アドバイザーの鉄道ライター・土屋武之さんは「頭上が広々としているから」下段派だそうです。自分好みの部屋を探すのも楽しいですね。
▲各個室にはコンセントが備え付けられている 

また、個室にはどの部屋にもコンセントが設置されています。
携帯電話の充電は欠かせませんし、鏡を見ながらヘアアイロンなども使えるので、女子には嬉しい設備ですね!
▲個室の鍵は暗証番号式 

また、各部屋には暗証番号式でロックができる鍵が設置されているので安心です!
今夜は、ここが私の城です。さて、どんな旅が始まるのでしょう。

ここまで、個室の設備をざっと紹介しましたが、他のお部屋も気になりますよね?
▲割安で人気があるノビノビ座席 

まずは、若者に人気の「ノビノビ座席」。寝台料金がかからず、乗車券+特急券だけで利用できるとってもリーズナブルな座席です。
東京~出雲市間なら、乗車券11,990円+特急券3,760円で15,750円となります。

室内は長距離フェリーのカーペット席のような雰囲気。
上下の2段構造になっており、頭の部分は座席ごとに仕切られていて、自分専用の空間を楽しめます。
友達同士で、修学旅行のような気分を楽しむのもいいですね!
▲「ソロ」は個室寝台のなかでは、いちばん寝台料金が安い

こちらは「ソロ」。「サンライズ瀬戸・出雲」のなかで、最もリーズナブルに楽しめる個室(寝台料金6,480円)です。
先ほど紹介したシングルと比べ、ややコンパクトにまとめられた個室です。
秘密基地のような雰囲気があって、ワクワクしてしまいます。
▲唯一、上下に寝台が並ぶ「シングルツイン」。車両の端の、2階建てになっていない部分にある

天井の高いこちらの部屋は「シングルツイン」です。
上段には跳ね上げ式の補助ベッドがあり、2人で使用することも可能です。下段のベッドは折りたためばソファになります。
2段になったベッドは、寝台列車らしい雰囲気。知らない人と相部屋になることはなく、友人同士などの旅におすすめです。
寝台料金は1人利用の場合は9,430円。2人で利用する場合は1室14,830円です。

他に、2人用の個室としては「サンライズツイン」があります。広いベッドが2つ並んだ部屋は、まるでシティホテルです。寝台料金は1室15,120円になります。
▲1人用の個室A寝台車「シングルデラックス」

さて、最後に紹介するのは、「サンライズ出雲」でもっとも贅沢な旅が楽しめる「シングルデラックス」です!

1人用の室内には、広いベッドと洗面台やデスクが設置され、一晩だけ利用するにはもったいないくらい、ゆったりした贅沢な造りです。
「サンライズ出雲」「サンライズ瀬戸」それぞれに6室ずつしかなく、寝台料金は13,730円もしますが、大変人気がある部屋です。

実は、今回の取材では、この個室を取ろうとしたのですが、寝台券が手に入らなかったんですよ!
利用してみたい方は、くれぐれも早めにきっぷを購入してくださいね!いつかは私も乗ってみたいです。

3.出雲市駅に向けて出発!「サンライズ出雲」の旅

▲窓の外には、日常風景が流れる(横浜駅)

さて、いよいよ出雲市へ向けて出発!寝台列車の旅が始まります。
東京とはしばらくのあいだ、お別れです。

ゆっくりと出発した「サンライズ出雲」は、さまざまな通勤列車とすれ違います。
先ほどまでこの街で仕事をしていたのかと思うと、なんだか不思議な気分です。
▲車窓には、さまざまな街の灯りが流れては消える

流線型にながれる光を大きな窓から眺めてみると、これぞ寝台列車の旅!といった雰囲気。まだ明るい駅を通過していくたびに、ワクワクした気持ちが高まってゆきます。
ずっと眺めていられる景色です。
▲寝台特急の旅の友は、やはりビール?

東京駅で購入したビールでひとり、乾杯です。優しい光に包まれながら飲むお酒は格別!車内の自動販売機にはソフトドリンクしかありませんので、東京駅で買い忘れないでくださいね!(笑)
▲8人分の椅子とテーブルがあるミニラウンジ

3号車と10号車に設けられたミニラウンジで、仲間同士でお酒を飲むのもアリですね!ときには、他の乗客と話が弾み、旅の情報交換ができることもあります。寝台列車ならではの夜です。
▲夜も更けて、熱海駅に停車。東海道本線をさらに西へと走る

東京駅を出た下り「サンライズ出雲」は切り離しがある岡山まで、横浜、熱海、沼津、富士、静岡、浜松、姫路に停車します。

寝台列車の夜の楽しみ方はそれぞれですが、今回は早起きをして「あるもの」を見るため、早めに眠ることにします。
▲コンパクトなシャワールーム内

購入したシャワーカードでは6分間、シャワーが使えます。
6分と聞くと短く感じますが、途中で止めることもできますし、寝台列車とは思えない水圧なので時間が余るほどです。もちろん、シャンプーやボディーソープも備え付けられています。

列車が出発してすぐは、シャワーが込み合います。深夜か翌朝、岡山を出てからの時間が空いていて利用しやすいですよ。観光に出かける前に汗を流しておきたいですもんね!

では。スッキリしたところで、おやすみなさい~!

4.岡山駅でのお楽しみ、旅情あふれる朝食をゲット!

▲岡山へ向けて夜明けの山陽路を走る「サンライズ瀬戸・出雲」

翌朝、目覚ましが鳴ったのは5時。 みなさま、おはようございます!
私がこんなに早起きしたのは、朝陽が昇る瞬間を見たかったからです。
寝台列車の旅の大きな楽しみが、日の出!列車名だって「サンライズ」ですもんね。
▲夜行列車の旅をしている実感が湧く、夜明け

季節によって違いますが、兵庫県の姫路を過ぎた頃には、窓の外がゆっくりと明るくなってきます。目を閉じた時は熱海を過ぎたあたりだったのに、もうこんなところまで来たなんて信じられません。

でも、「サンライズ出雲」の旅はここからが本番です!
まずはラウンジに移動して日の出の瞬間を拝みます。
▲夜明けの山陽地方を眺める

ラウンジでは、美しい日の出と出合えました!
この瞬間を見ようと、多くの乗客がサロンカーに集まっていました。

車内から朝日を眺めていると、とっても清々しい気持ちになります。
▲ミニラウンジでは、到着までのひとときを過ごせる

岡山駅到着は6時27分。景色を眺めながら待ちます。
他のお客さんとも仲良くなり、楽しいひとときが流れます。

実は、岡山駅では「あるもの」を受け取るため、事前に電話をして予約していたのです。
▲岡山では約7分間停車。予約していた駅弁を受け取る

岡山駅で受け取ったのは、この紙袋。そう、朝食の駅弁を予約していたのです。昨夜は夕食も食べずに列車に乗ったので、もうお腹はペコペコ。出雲市までの車窓と一緒に楽しみたいと思います!
▲岡山で「サンライズ出雲」と「サンライズ瀬戸」はお別れ

岡山駅での楽しみといえば、もうひとつ。これまで一緒に走ってきた「サンライズ瀬戸」との切り離し作業を見ることが出来るのです。
▲朝の岡山駅名物になった「サンライズ瀬戸・出雲」の切り離しシーン

切り離し作業を写真に収めようと、多くの乗客が集まっていました。
ここで、「サンライズ瀬戸」とはお別れ。それぞれの目的地へと別々に走り出します。
▲「サンライズ出雲」だけの7両編成になって、岡山を出発

さて、朝食もゲットしたところで車内へ戻ります。お弁当はサロンカーでいただいてもよし、個室で楽しむのもよし!私は、車窓を独り占めしながら楽しみます。
▲三好野本店の「千屋牛と松茸のわっぱめし」

私が受け取った駅弁は、「三好野本店」さんへあらかじめ電話をし、号車、希望するお弁当を伝えておいて、列車のドアの前まで届けていただいたもの。
「サンライズ瀬戸・出雲」が到着する時間には、ホームにあるキオスクも開店していますが、混雑するのでとっても嬉しいサービスですね。

今回、私が食べたのは「千屋牛と松茸のわっぱめし(1,480円)」。岡山県のブランド黒毛和牛である「千屋牛」のしぐれ煮と松茸や栗など、秋の山の幸が詰まった贅沢な品です。
▲「後楽園のお弁当」は、岡山の定番駅弁

一方、三好野本店さんの定番駅弁といえばこちら「後楽園のお弁当(1,130円)」。季節によって内容が変わるこちらの弁当は、岡山の味覚がたっぷり詰まっており、根強い人気があります。

写真は秋・冬バージョンのお弁当で、鰆の白醤油焼きや舞茸とさつま芋のかき揚げ、岡山県の豚肉を使った焼豚スライスなどが入っています。さらには、岡山名物の「祭ずし」も楽しめる豪華なお弁当です!

なお、「サンライズ瀬戸・出雲」への配達は、ほとんどすべての弁当で1個から可能です。出発の3日前まで、ファックス、電話、公式ホームページの問い合わせフォームで受け付けてもらえます。
受け渡しは事前に指定した号車の乗降ドア付近にて。配達料は無料ですが、事前に、お釣りがないよう弁当代金を用意しておきましょう。
▲寝台特急の個室で駅弁をいただくという贅沢もできる

朝陽が降り注ぐ部屋のなかで、お弁当をいただきます。
列車は倉敷から伯備(はくび)線に入り、中国山地を横断。山あいを駆け抜ける車窓を眺めていると、山の幸が詰まった弁当が、よりいっそう美味しく感じます!
▲伯備線の車窓は、川と渓谷の風景が彩る 

出雲市到着は9時58分なので、岡山からまだ3時間ほどかかります。それまで、ゆったり思い思いに過ごせばOK。
流れゆく伯備線の車窓を個室からゆっくり眺めながら、誰にも邪魔されずにくつろいでいると、とっても気分が良いです!
▲天気が良ければ、伯耆富士(ほうきふじ)と呼ばれる大山(だいせん)も進行右側に見える。山陰の最高峰だ

東京駅からの旅を思い返すと、今ここにいることが夢のよう。ひと晩眠ると、見知らぬ遠くまで運ばれる。それが、いつもの旅とまた違った、夜行列車の旅の楽しみです。
▲寝台特急の旅の最終コースで、宍道湖(しんじこ)の風景が車窓に広がる

伯備線から山陰本線に入り「サンライズ出雲」の旅も終盤に差し掛かったころ、宍道湖の美しい風景が車窓いっぱいに広がります!

出雲市はもうすぐ!なんだか、とっても長い一夜でした。しかし、それも寝台列車の魅力。飛行機や新幹線の旅では決して味わうことのできないゆったりとした時間を楽しむことができました。
▲間もなく、終点の出雲市

さぁ、出雲市に到着です。
列車から降りるのは名残惜しいですが、旅はまだまだ始まったばかり。今日一日、たっぷりと観光をする時間があるのです。
▲出雲市に到着!しまねっこがお出迎えしてくれる

今まで、飛行機や新幹線で旅をしていたあなたも、寝台列車の旅をしてみたくなりましたか?観光でもビジネスでも、時間を有効に使うことができる「サンライズ出雲」で、ぜひ寝台列車デビューしてみましょう!

取材協力:西日本旅客鉄道(JR西日本)

土屋武之(鉄道ライター)

鉄道を専門分野として執筆活動を行っている、フリーランスのライター・ジャーナリスト。硬派の鉄道雑誌「鉄道ジャーナル」メイン記事を毎号担当する一方で、幅広い知識に基づく、初心者向けのわかりやすい解説記事にも定評がある。
2004年12月29日に広島電鉄の広島港駅で、日本の私鉄のすべてに乗車するという「全線完乗」を達成。2011年8月9日にはJR北海道の富良野駅にてJRも完乗し、日本の全鉄道路線に乗車したという記録を持つ、「鉄道旅行」の第一人者でもある。
著書は「鉄道のしくみ・基礎篇/新技術篇」(ネコ・パブリッシング)、「鉄道の未来予想図」(実業之日本社)、「きっぷのルール ハンドブック」(実業之日本社)、「鉄道員になるには」(ぺりかん社)など。

古谷あつみ(鉄道タレント・松竹芸能所属)

古谷あつみ(鉄道タレント・松竹芸能所属)

小学生の頃、社会見学で近くにある車両基地へ行き、特急電車の運転台に上げてもらったことがきっかけで、根っからの鉄道好きとなる。 学校卒業後は新幹線の車内販売員、JR西日本の駅員として働く。その経験から、きっぷのルールや窓口業務には精通している。 現在はタレント活動のほか、鉄道関係の専門学校や公立高校で講師をしている。2015年には、「東洋経済オンライン」でライター・デビューし、鉄道模型雑誌「N」等で執筆活動中。

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