野菜宅配2位のオイシックスと同3位の大地を守る会(千葉市)は22日、2017年秋をめどに経営統合すると発表した。売上高を合算すると最大手のらでぃっしゅぼーや(東京・新宿)と肩を並べる新連合が誕生することになる。消費者が食の安心・安全への意識を高めるなか、支持を広げる「ネット八百屋」。今後はオイシックス・大地を守る会連合と、らでぃっしゅぼーやの「2強」が市場をけん引することになりそうだ。
オイシックスと大地を守る会は22日に統合に向けた基本合意書を締結した。来年2月末までに開催される臨時株主総会で承認を得た後、株式交換により統合する。株式の割当比率は大地を守る会1株に対し、オイシックス株261株。
統合会社の名称は未定だが、大地を守る会の藤田和芳社長が会長、オイシックスの高島宏平社長が社長に就く予定。物流センターやカスタマーサポートの共同運営などで収益力を高めるほか、相互に商品を供給するなどして顧客開拓につなげる構えだ。
オイシックスの設立は2000年。競合が少ない食品分野でネットビジネスを手掛けようと、高島宏平社長が仲間と立ち上げた。農家と直接取引して自社サイトを通じて販売するビジネスモデルで、豊富な品ぞろえが強み。自社で品質検査することで、消費者の食の安全志向に応えてきた。今では契約農家は1000軒、会員数は12万人を誇る。5月には移動スーパーを全国展開するとくし丸(徳島市)を買収して販路を広げた。2016年3月期の売上高は201億5800万円、純利益は5億3800万円だった。
一方の大地を守る会は1975年に発足した非政府組織(NGO)「大地を守る市民の会」が前身。有機野菜など健康に配慮した方法で栽培した野菜を中心に宅配事業を手掛けてきた。契約農家は2500軒、利用者数は31万人という。2016年3月期の売上高は135億7200万円、純利益は2億2200万円。
世帯あたり人口の減少などを背景に、食品宅配市場は成長を続けている。矢野経済研究所(東京・中野)によると、生協の個配サービスや宅配ピザなどを含めた市場規模は2019年度に2兆1470億円と、14年度から10%強拡大すると予測する。
成長性を見込み、大手企業も関心を高めており、オイシックスにはリクルートホールディングスが10%超、大地を守る会にはローソンが33.4%出資している。売上高が年220億円規模のらでぃっしゅぼーやも今はNTTドコモの子会社だ。
最近はイオンなどスーパーも宅配事業に乗り出すなど、競争も激しくなっている。ただ、「ネット八百屋」の存在感が高まれば、「アベノミクス」の成長戦略の目玉の一つである農政改革にも追い風となる。契約農家と直接取引してネットで販売する「ネット八百屋」のビジネスモデルそのものが、これまで農産品の流通市場を牛耳ってきたJA(農協)の役割を低下させるからだ。
野菜宅配業界でにわかに進む再編は、新たな流通システムを広げる号砲になるかもしれない。
(岸本まりみ)