宋美玄のママライフ実況中継
コラム
ウェルクだけの問題? 怪しい健康情報を発信するメディアは猛省を
ウイルス性の胃腸炎が流行しているようですね。保育園児の息子を皮切りに娘と私も感染し、 嘔吐 して大変でした。1日でガリガリになりましたが、脱水によるもので、すぐに元に戻りそうです。インフルエンザも流行しているようですし(我が家は全員ワクチン接種済み)、冬本番というところでしょうか。皆様もどうぞお気をつけください。
複数コラムサイトが非公開に
ようやく、いい加減な健康情報をもっともらしく載せていたコラムサイトが大炎上し、ディー・エヌ・エー(DeNA)が運営するインターネットサイト「WELQ(ウェルク)」を初め、大手が運営するサイトが複数非公開に追い込まれました。私は主にネット上に 蔓延 する眉唾健康情報に対し、真偽を検証したり流出元に警告したりして戦ってきましたが、大手が大量に生産するとんでもない内容のコラムに疲弊しきっていたので( トンデモ情報の寄せ集め? コラムサイトにご用心 )ようやく大炎上して社会問題になって 嬉 しい限りです。
テレビや新聞、雑誌、書籍だって人ごとではない
しかし、テレビでこの件が取り上げられるのを見ていると、違和感を覚えざるを得ません。今でこそネットの影響力に押されているテレビですが、これまでにテレビが流してきた怪しげな健康情報については知らんぷりでしょうか。新聞、雑誌や書籍だって、今回のことを人ごとのように批判できるでしょうか。
特にベストセラーになった健康関連の書籍の中には、がんの放置を勧めるものなど、専門家から見ると有害とも言えるものは少なくありません。以前そのような本の制作に関わったライターと議論したことがありますが、制作サイドは「事実と異なる内容だと知りながら、 儲 けのために出版している」のではなく、「著者の言説を完全に信じて出版している」ということが分かり、 愕然 としました。
出版業界はいわゆる文系学部出身の人が多いため、基本的な体の仕組みに関する知識やヘルスリテラシー(健康情報を見極める能力)を持った人材が不足しているのだと思います(ちなみに、私はヨミドクターの記事作成や運営に関わる読売新聞医療部をとても信頼していますし、必ずしも医療系学部の出身者である必要はないとは思います)。
また、一般向け書籍の制作には論理よりも感性が重んじられ、内容の正確性よりも「それ、売れそう」ということが重要視されるという点も大きいと思います(これがネットだと、「それ、クリックされそう」ということになります)。
「医師監修」「医師執筆」でも安心できない
ネットの世界で大手の運営するコラムサイトのうち、健康情報を扱うサイトは、いったん非公開になったところが多いようです。内容を確認の上、順次公開するとされていたりしますが、内容の質を担保するのはなかなか難しいでしょうから、健康に関する情報発信から手を引くというところも現れそうです。
一方で、大手ではないコラムサイトでいまだに不正確な情報を流し続けているところもありますし、裏に商品の販売が絡んだもっともらしいサイトなど、現在も怪しい情報は多く流れています。
医療監修がついていたり医師が執筆していたりしても、必ずしも内容が正確とは限らないことが問題を深くしています。(私自身を含め)医師にも専門分野や主義主張があり、医師免許を持った人が書いているから「正しい」ということではありません。健康情報に限ったことではないでしょうが、なるべく正確な情報を発信するには執筆者と編集部の不断の努力が必要であり、それには当然ながらコストと労力がかかるため、安易に考えていたところは中止するのが無難かもしれません。
公的機関が正しい情報発信を
健康情報に関しては、厚労省や各種学会、大学病院などの公的な役割を持つ機関や団体が積極的かつタイムリーに発信していくといいと思います。できれば、検索エンジン側でもそういう機関のページを優先的に表示するなど、利用者をなるべく妥当な情報へ誘導する仕組みになるといいな、などと妄想します。
私自身は自分が情報発信すると同時に、ライターや編集者向けの女性ヘルスケアセミナーを開くなど、発信側の人たちに“眉唾健康情報”を流さないように学ぶ機会を持つなど、少しでも「ネットにこう書いていたのですが本当でしょうか」「ネットを見て不安になって眠れません」という患者さんが減るようにできることをしています。ようやく「売れてナンボ」がまかり通らない時代になったということなので、これを機に良い方向へ変わるといいなと思います。
※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。
※個人情報は書き込まないでください。