スマートフォンが普及し、多くの人がいつでもどこでも写真を撮り、ソーシャルネットワークサービスに投稿できる時代になりました。そんなスマートフォンのカメラを顕微鏡にしようという試みは世界中で行われており、実際に製品になっているものもあります。
今回、スタンフォード大学からもスマートフォンを用いた新しい顕微鏡システムが報告されました。一体どういったものなのでしょうか?
3Dプリンタで作製できる教育用スマートフォン顕微鏡システム
スタンフォード大学の研究チームは、3Dプリンタで出力し、簡単に組み立て、スマートフォンを顕微鏡として用いることができるデバイスを発表した。
彼らの目的は子供たちに微生物学をもっと楽しんで学んで欲しいというところにある。
工学や理学では、子供が楽しんで組み立て、体験できるキットがたくさん販売されているが、微生物学ではそのようなキットがないというのが現状である。
そこで研究チームは、最初にスマートフォンを通じて、生きている細胞と遊ぶというプロジェクトを立ち上げた。
だが今回発表したデバイスはそこに止まらなかった。
スマートフォンを通じて、生きている細胞と遊べるばかりか、自分自身で組み立てから楽しめ、本格的な測定まで行える顕微鏡システムを作り上げたのだった。
LudusScope
彼らのデバイスはLudusScopeと名付けられた。
Ludusとは、「遊ぶ」とか「ゲーム」という意味のほか「小学校」という意味もあり、まさに生きている細胞と遊べ、学べるこの顕微鏡にはうってつけの名前だろう。
LudusScopeは、顕微鏡用スライドガラスを保持する試料台と周囲に4つのLED、そのLEDの明るさを変化させるジョイスティック、サンプルを上から撮影するためのスマートフォンホルダーを兼ね備えている。
子供たちが細胞と遊ぶ際には、ユーグレナと呼ばれるミドリムシをスライドガラスにセットし、試料台に乗せる。
このユーグレナは光のある方向に泳ぐ性質をもっているため、4つのLEDの明るさをジョイステックで操作することにより、好きな方向に泳がせることができるのだ。
そうすることで、例えば1980年代に流行ったテレビゲーム「パックマン」のように、ユーグレナを迷路の中を縦横無尽に走らせたり、サッカーのようなゲームを楽しむことができるようになる。
ゲーム以外のアプリケーション
ゲームとしての用途だけでなく、もちろん顕微鏡として用いることも可能だ。
その際には、試料の大きさを計測できるようスケールバーを表示したり、ユーグレナが泳ぐスピードをリアルタイムで表示したり、拡大し個々のユーグレナを観察することもできる。
子供達はこれらのデータを集め、学校で習ったScratchというプログラムを用いて、ユーグレナの振る舞いの簡単なモデルを作成するという教育的な使い方も可能だ。
またこの顕微鏡の部品は、プラスチックでできており、3Dプリンタで出力することができ、簡単に組み上げることができるため、子供達自身が顕微鏡を作るという段階から学ぶことができる。
顕微鏡と触れ合うことの少ない子供達だが、自分自身で組み立て、微生物と遊び、本格的な計測までできるこのシステム。
子供達に微生物学へ進む道を示すことができると期待される。
この記事を読んで、顕微鏡というのは私にとっては子供の頃の憧れの一つだったなぁと思い出しました。学校の理科室にしかない高級な顕微鏡。レンズを覗けば、普段とは全く違う姿を見せる試料たち。欲しいなぁと思い、通信教育のポイントを一生懸命ため、手に入れた覚えがあります。
子供だったので、数回使って興味を無くしてしまいましたが、今の子供にとっても異世界を覗くようで楽しいものではないでしょうか。科学技術が発展し、それが簡単に、しかも普段使っているスマートフォンを使って、覗くだけでは無く、写真もビデオも撮影出来る現代は子供達を科学の世界へと誘うのにとてもいい時代なのかもしれません。
なかなか生物学というのは、工学や理学と違い、目で見て楽しませるといったことが難しい学問だなと感じています。ですが今回のようにアイデアによっては、生物学も目で見て、体験してもらうというのが可能なのかもしれません。いかにしてアイデアの殻を破るのか、それが子供たちに新しい体験をさせる重要なことなのでしょう。