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アルツハイマー予防薬、国際研究に東大参加…早期治療導入期待
国内の認知症の半数以上を占めるアルツハイマー病を、発症前に防げるかどうか調べる国際共同研究に東京大学が参加する。米国立衛生研究所(NIH)などが進める研究で、米国以外からの参加はカナダ、オーストラリアに次いで3か国目。
成果が出れば、国内でもいち早く予防治療が導入される可能性がある。
東大が参加するのは、米NIHや米製薬大手イーライリリーなどが官民共同で2014年に開始した「A4」という研究。アルツハイマー病は、発症の10~20年前から脳内に「アミロイドβ」と呼ばれる異常なたんぱく質が蓄積することがわかっている。そこで、認知機能はまだ正常だが、脳の画像検査でアミロイドβの蓄積が判明した65~85歳の人を対象に、このたんぱく質を除去する薬を点滴で投与する群と成分の入っていない偽薬を投与する群に分け、認知機能の低下を防げるかどうか調べる。来春までに世界で1150人が参加。3年間、薬の投与を継続し、早ければ20年に結果が出る見通しだ。
国内では今月下旬から約100人に脳の画像検査を行い、最終的に10~20人が参加する計画だ。
国内の研究責任医師の岩坪
「発症前」の予防効果に着目…アルツハイマー研究
アルツハイマー病では現在、症状の進行を抑える薬が使われているが、根本的に治す薬はない。今世紀に入り、世界でアミロイドβを減らす薬が相次いで開発され、根治薬への期待が高まったが、海外の大規模治験でいずれも挫折した。認知症が進行した状態では、既に神経が死滅しており、薬でアミロイドβは減らせても、認知機能の改善にはつながらなかった。
そこで、神経細胞の死滅が進んでいない「発症前」に世界の注目が集まり、米国立衛生研究所(NIH)の呼びかけで今回の研究は始まった。主任研究者で米ハーバード大学のリサ・スパーリング教授は「文化や遺伝的背景の違いを超えて認知症予防に効果があるかどうかをみるためにも日本の参加は重要」と話す。
効果が確認されれば、アルツハイマー病の治療は「発症前」が主流になり、高齢者の2割が治療の対象になるという試算もある。近年、効果は高いが値段も高い、高額新薬が医療費の高騰に拍車をかけているだけに、医療費の観点からの議論も必要になるだろう。(編集委員 館林牧子)