【シカゴ=川合智之】未知の粒子の痕跡ともみられる現象をとらえ、その検証を進めていた欧州合同原子核研究機関(CERN)は5日、「世紀の発見か」と期待された新粒子は「なかった」と発表した。痕跡はデータが少ないために現れた見かけの現象で、実験は仕切り直す形となった。
東京大学などが参加するCERNの国際研究チームは2012年、大型加速器「LHC」で、万物の質量(重さ)の起源であるヒッグス粒子を発見。その後、装置を増強して新たな実験を始め、15年に新粒子の痕跡の可能性がある現象をみつけた。
新粒子の痕跡なら、世界に3次元を超える別の次元が存在するなど、従来の標準理論を超える物理学が開ける可能性がある。だが測定データを積み重ねると信号は弱まり、痕跡ともみられた現象は「統計的な変動だった」と結論づけた。
実験は続ける計画で、高エネルギー加速器研究機構の花垣和則教授は「これからも前を向いて(新粒子を)探していきたい」と述べた。