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がん診療の誤解を解く 腫瘍内科医Dr.勝俣の視点

コラム

正しい免疫療法のすすめ(上)

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 「がんの免疫療法に480万円使いました」

 乳がんと診断されたMさんは、乳房切除手術を受けた後、リンパ節転移があると主治医に告げられました。

 「リンパ節に転移があったので、再発の予防のために、抗がん剤を勧めます」

 手術後の最初の外来を受診した際に、突然、抗がん剤をすると言われ、Mさんは、大変戸惑いました。

 「抗がん剤をするもしないもあなた次第だから、次までに決めてきてください」

 抗がん剤の詳しい説明を受けることもなく、ただ、抗がん剤と言われても、Mさんは納得ができませんでした。

 ネットで調べると、抗がん剤の怖い副作用の話ばかりが載っています。

 Mさんは、抗がん剤を受けるのが怖くなり、他に良い治療はないものかとインターネットで調べてみました。

 すると、がん免疫細胞療法について、たくさん情報を見つけました。

 免疫細胞療法は、

 最先端の治療
 手術ができない、抗がん剤が効かない人にも有効
 手術後の再発予防に有効
 抗がん剤の副作用を抑え、効果を高める
 末期がん患者に有効
 自分自身の免疫力を高めることができる
 副作用がほとんどない
 世界の学会で報告がなされている
 何千例の実績がある

 など

 こんなにすばらしい治療があるのかと驚きました。

 Mさんは、あるクリニックを受診しました。
 そこは、駅から歩いて数分のビルの中にあるクリニックで、クリニックの中に入ると、受付やクリニックの雰囲気はとてもきれいで、落ち着いた様子でした。
 丁寧な受付の女性に案内され、診察室に入ると、医師が笑顔で迎えてくれました。

 医師は、Mさんが、がんと診断されたときから、手術を受け、その後の外来で、突然、抗がん剤と言われて、とても戸惑った話をじっくりと聞いてくれました。

 普段の主治医は、コンピューターの画面しか見ておらず、ちっともMさんのほうを見て話してくれませんでしたが、このクリニックの医師は、Mさんの目を優しいまなざしでしっかりと見てくれました。

 Mさんががんと言われたことのショックを話すと
 「それはつらかったですね」
 と慰めてくれて、Mさんは、思わず涙したそうです。

 結局、Mさんは、抗がん剤を めることにして、
 このクリニックの免疫細胞療法を受けることにしたのですが、
 費用は、1回20万円の治療で、6クールが基本であると。

 保険が利かないのは、費用が高いせいだと思い、特段、気になりませんでした。

 Mさんは、6クールの治療を2年かけて、4回、計480万円を支払ったのです。

 しかし、Mさんのがんは、最後の免疫細胞療法を行った後、半年足らずで、肝臓と、リンパ節に再発しました。

 Mさんは、乳がんのリンパ節転移と診断され、術後抗がん剤を拒否し、免疫細胞療法を受けたわけですが、結局は再発してしまいました。

 このような免疫細胞療法に実際のところ効果はあるのでしょうか?

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katsumata

勝俣範之(かつまた・のりゆき)

 日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科教授

 1963年、山梨県生まれ。88年、富山医科薬科大卒。92年国立がんセンター中央病院内科レジデント。その後、同センター専門修練医、第一領域外来部乳腺科医員を経て、2003年同薬物療法部薬物療法室医長。04年ハーバード大学公衆衛生院留学。10年、独立行政法人国立がん研究センター中央病院 乳腺科・腫瘍内科外来医長。2011年より現職。近著に『医療否定本の?』(扶桑社)がある。専門は腫瘍内科学、婦人科がん化学療法、がん支持療法、がんサバイバーケア。がん薬物療法専門医。

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1件 のコメント

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どこにもある構図

クリオネ

患者の気持ちにつけ込む金儲けの民間療法が蔓延していることには目を覆いたくなります。 命が掛かっていることでなければ重大な事件にもならずウヤムヤに...

患者の気持ちにつけ込む金儲けの民間療法が蔓延していることには目を覆いたくなります。
命が掛かっていることでなければ重大な事件にもならずウヤムヤになることは日常茶飯事、例えばアトピーの治療ではステロイドの使用が学会も認める有効な治療であるにもかかわらず、これを悪者扱いして化粧水や漢方薬、温泉療法など訳の分からない治療を高く売りつける医者や健康業者のなんと多いことでしょう。そのステロイドなしにアトピーに効くと言われた薬が、実は中国から違法に持ち込まれたステロイドの強い薬だったという笑い話の事件が神奈川県でありましたね。
こういう金儲けの民間療法は必ず宣伝媒体を必要とします。そういう意味では新聞やテレビも患者の体験談と称するPRに興味本位で乗せられていないか、お先棒を担いでいないか、検証の必要があると思います。

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