英国の政治はギリシャの道をたどっている。欧州連合(EU)離脱による経済リスクは繰り返し述べられたが、政治リスクは軽視された。離脱の決定は英議会議員の過半数の意思に反するものだった。それが残したのは、かじ取りを失った保守党政権と内紛状態に陥った野党労働党、次に何をすればよいのか途方に暮れた政治エリートたちだ。これが、世界で最も安定した民主主義国の一つとしての存在の追求をあきらめた国の姿だ。
詩人のW・B・イェーツは、「中道は持ちこたえられない」といらだちを示した。英国は中道の追求を避けてきた。議員の約3分の2が(EUとつながる)跳ね橋を上げる(離脱)ことに反対した。ところが今となっては、英国を陰鬱な孤立に導かなければならなくなってしまった。
キャメロン首相の辞任表明後、分裂状態の保守党はイギリス・ナショナリズムにとりつかれた。スコットランドは再び独立を思考している。労働党のコービン党首は、ベネズエラのウゴ・チャベス元大統領が社会主義の成功物語を描いたと確信し、それは揺るがない。英国の二大政党制は長年ほころびを見せていた。それが今、ばらばらになりつつある。
ボリス・ジョンソン議員(前ロンドン市長)はキャメロン氏の後継者として最有力視されてきた。だが、EU離脱派の同士、マイケル・ゴーブ議員が保守党党首選に立候補したことで両者間には亀裂が生じた。このため、煮え切らない残留派だったテリーザ・メイ内相が党首選で有利な情勢となった。皆が認めるジョンソン氏の強さとは、もしそう呼べるのなら、それは旧来の政治的な清廉さとはほど遠いことだ。5人の保守党党首候補者の中で、党首決定の最終的な決定権を持つ保守党の活動家党員らに最も堅実な候補だとアピールしそうなメイ議員が最有力候補に浮上した。
状況は左派にとってはあまり良くない。労働党議員の4分の3はコービン党首への不信任票を投じたものの、同氏は極左の活動家と労働組合幹部の支持を得て、退任を拒んでいる。その結果、議員間だけでなく党全体が取り返しの付かない分裂状態に陥った。これに加え、スコットランドが「リトル・イングランド」と同じ運命をたどり、EU離脱に直面する中、連合王国は危機にひんしている。
経済をみても何の好材料もない。それどころか、短期的な金融市場の混乱から逃れても、英国経済は急速な減速に向かい、かなりの確率でリセッション(景気後退)に陥るだろう。政治リスクを考慮すると、EU離脱後の形も定まらない段階で誰が英国に投資するというのか。
ロンドンを拠点とするレウェリン・コンサルティングは、金融サービスの見通しは「恐ろしい」とする一方、大幅な財政赤字と対外赤字で、英国からの資本逃避リスクが高まると指摘している。中期的には痛みを伴う国家支出の削減と増税が必要になるとみている。残留派のオズボーン財務相が残留キャンペーン中に主張したことは嘘ではなかった。