知ってます?電力自由化で電気料金が高くなるケース
電力自由化で電気代が高くなる?
2016年4月から本格的な電力自由化がスタートしたことで「電気代が安くなるから大歓迎!」との声が聞かれる一方で、「今まで利用していた電力会社から変えてしまっていいのだろうか…」と不安視する声も聞かれています。
スーパーや工場などの商業施設向けには既に電力自由化が始まっていましたが、一般家庭向けの電力自由化については始まったばかりなのでよくわからない部分が多くて不安を感じてしまうのも当然です。
特に一番気になる部分である、「本当に電気代が安くなるのか?ひょっとしたら逆に高くなってしまうのではないか?」という疑問についてははっきりしたことがわからないので今すぐに他の電力会社に変えるつもりはないと考えている方も多いようです。
実は、電力自由化によって電気代が高くなるケースがあるという話は本当の事で、電力会社を変えたからといって必ず電気代が安くなるとは限りません。
では、具体的にどのような場合に電気代が高くなるのかを確認して、損をすることがないようにしましょう。
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電気代が上がる事例① 消費電力が少ない場合
電力自由化によって電力会社を変更した結果、電気代が値上がりしてしまうというのはもともと消費電力が少ない場合です。特に一人暮らしをしている方の場合は消費電力が少ないため、電力会社に変更することで電気代が値上がりする場合が多いのです。例えば北海道電力エリア、従量電灯B、20Aで契約して一人暮らしをしている方が1ヶ月100kWh使用した場合で確認してみましょう。(燃料費調整額、再生可能エネルギー発電促進賦課金は加味していません) 北海道電力の場合
基本料金:669.60円
電力量料金 23.54円×100kWh=2354円
合計:3023円
基本料金:502.20円
電力量料金 22.83円×100kWh=2283円
合計:2785円
基本料金:1004.4円
電力量料金 23.54円×100kWh=2354円
合計:3358円
このように現在北海道電力で契約している方が新電力会社へと契約変更した場合で確認してみると、安くなる場合もありますが、高くなる場合もあることがわかります。
この事例のように現行の電力会社よりも基本料金が高くなっている場合もありますし、従量課金が高くなっている場合もあります。
一人暮らしでなくても、契約電流が30A未満の場合や一ヶ月の電気料金が平均して4千円以下しか請求されていないという場合には新電力会社への契約変更は慎重に検討する必要があります。
電気代が上がる事例② オール電化住宅場合
オール電化住宅の場合は通常の従量電灯プランよりも安い料金設定になっている特別な電気料金で契約している場合が多いです。時間帯によって電気料金が安く設定されている場合があり、通常プランと比較すると平均して5~10%安い料金で設定されています。
オール電化住宅の場合は電気料金が値上げされた影響により、以前よりも電気代が高くなったと実感している方も多いはずですが、電力自由化が始まったからといって変更をするのはまだ早いです。
現状ではいずれの新電力会社もオール電化住宅向けの料金プランは設定しておらず、従量電灯プランに適合する料金設定しか設定していません。この状態で新電力会社に変更しても電気料金が更に値上げになる結果になるため、今のところは特に変更する必要はないといえるでしょう。
ただし、今後はオール電化住宅向けの料金プランが設定される可能性もあるので、その時には新電力会社への契約変更を検討しても良いと考えられます。それまではまだ静観するようにして、現段階では今まで通りの電力会社との契約を続けたほうがよさそうですね。
今後の電気料金は値上がりする可能性も
電力自由化によって新規に電力事業へ乗り出した企業は2015年5月の時点で600社を超えており、現在は700社以上の新電力会社が存在していると考えられます。
このうち、実際に電力販売実績があるのは1割にも満たない状況で、ほとんどは届け出を出しているだけの段階で新電力会社としては本格的に稼働していない状況です。
電力自由化がスタートした時点で特定規模電気事業者への届け出制度が廃止されており、小売電気事業者の登録がなければ新規に電力小売事業へと参入できません。
このような流れから、新電力会社同士で淘汰が進み、少しずつ新電力会社の数も減少して絞られてくると考えられています。
現状では新たに電力小売事業に参入した会社が急増したことから、活発に競争が行われて電気料金が下げることができていますが、今後は淘汰される電力会社が増えてくると活発に競争が行われなくなることで電気料金が値上がりすることも予想できます。
そもそも新電力会社はすべての電力会社が電力を作っていたり送電をしているわけではなく、電気を売るための窓口としての役割しか発揮しない会社が多いのです。
新電力会社は電力の小売をしている会社なので、どこかから電力を仕入れていることになります。その電力はどこから仕入れているのかといえば、他の会社が発電した電力や電力の取引市場から仕入れていることになります。
つまり、自社で発電しているわけでも、送電をしているわけでもない電力会社の場合は、安定した電力を確保できなくなれば高い値段で電力を仕入れなければならない状況になることも考えられるため、将来的には電気代が値上げされることも予想されます。
安定した電力供給ができる、信頼性の高い電力会社でなければ、現在の料金プランがいつまでも続くとは限らないと考えられるのです。
電気代が安くなる理由と将来の電気料金
電力自由化がスタートしたら電気代が安くなるとの考え方はある意味正しいと言えますが、なぜ電気代が安くなるのかというカラクリを知らなければ今後電気代が値上がりするかもしれないという話にも納得できないでしょう。
従来は各地域に存在している電力会社が独占的に電力を供給しており、電力会社の言い値によって電気料金が定められていました。しかし、今回の電力自由化がスタートしたことによって新規参入した電力会社を含めた会社同士で競争が行われてお互いに経営の効率化が推進されています。
実際に新規参入している会社を確認してみると、ガス会社や石油会社、大手商社、旅行会社などあらゆる事業を手掛ける会社が参入していることがわかります。
電力事業の他にも収益を生む事業を手がけており、電力事業と組み合わせることで双方の利益を更に伸ばしたいとの狙いもあるのです。
まだ電力自由化がスタートした今の段階は、それぞれの会社が既存電力会社よりも安いプランに設定して新規顧客を獲得する努力を重ねています。
一般消費者にとっては単純に電気料金が安くなるなら、新電力会社へ契約を変更しても良いかなと感じるものです。
しかし、今後は新規顧客を思うように獲得できなかった、電力事業は思ったほどの利益を伸ばせなかったなどの理由で撤退する会社が増えることも予想され、既存電力会社を含めた新電力会社の競争が活発に行われなくなることも考えられます。
そうなると現在のように安い料金プランを設定する必要がないと判断されたり、発電コストや仕入れコストを理由にした電気料金の値上げが発生することも予想できます。
今後の電気料金については、電力会社同士の活発な競争によって値下がりすることも考えられますが、逆に値上がりすることも考えられるため先読みが難しいのです。
あくまでも現在設定されている料金プランは現段階のものであり、この先は下がることも上がることも視野に入れて検討する必要があると言えます。
電力自由化で電気代が高くなる場合のまとめ
電力自由化によって既存電力会社から契約を変更することで電気代が高くなるのは今のところ以下の二通りになります。
① 一人暮らしなどで消費電力が少ない場合
② オール電化住宅にお住まいの場合一人暮らしなどで消費電力が少ない場合
この条件に合致しない場合は既存電力会社から新電力会社へ契約変更することで電気代が安くなる可能性が非常に高くなりますが、将来的には電気代が高くなる可能性はゼロではないと考えられます。
しかし、このケースは大手電力会社と契約維持していても一緒で、発電の費用が上がるのにともなって電気料金が値上げされることが予想されます。
大手電力会社では原子力発電所が本格稼働できる状況であれば、電気料金の値下げに踏み切ることは可能です。
しかし、東日本大震災での原子力事故は原発に対する不信感があることから、稼働に反対する声が多く、本格な稼働に踏み切れないというのが現状です。
消費者としては、電気料金の安さだけに拘るのではなく、安定供給や信頼性の面で良い電力会社を選ぶ必要があると考えられます。