【サンクトペテルブルク=田中孝幸】ロシアのプーチン大統領は17日、サンクトペテルブルクで開いた政府主催の国際経済フォーラムで演説した。ウクライナ問題で対ロ制裁を続ける欧州連合(EU)に対し「我々は恨みを抱いていない」と強調。「(欧ロ関係に)信頼を取り戻す必要がある」と述べ、経済分野の協力を再開するよう呼びかけた。
米国にはEUとロシアとの関係修復を妨げないように要請。「(対ロ制裁で)損害を受けたのは欧州であり、米国には全く影響を与えていない」と指摘し、EUに米国と独立した外交政策を求めた。米大統領選に関しては「当選したどの大統領とも協力する用意がある」と述べるにとどめた。
北大西洋条約機構(NATO)との間で高まる軍事的緊張に関しては「我々は冷戦に入るのは望まない」と語った。親ロ派武装勢力と政府軍の対立が続くウクライナ東部問題では、昨年2月の和平合意の履行を遅らせているとしてウクライナ側を批判した。
旧ソ連圏の中央アジアで「一帯一路(新シルクロード)」構想を展開する中国とは「大きなユーラシアのパートナーシップづくりを考えたい」と言明した。月内にロシア主導の自由貿易圏「ユーラシア経済同盟」との連携強化に向けた協議を始めることを明らかにした。
マイナス成長が続くロシア経済に関しては「近い将来、再び成長するようになる」と語った。輸出産業の支援や中小企業の権利保護などに取り組む姿勢を見せたものの、経済活性化の新たな具体策は示さなかった。
プーチン氏と共に登壇したイタリアのレンツィ首相は「欧州とロシアの双方が(両者間の)問題解決に努力しなければならない」と強調した。「イタリアはロシアでのプレゼンスを高めることに最も興味を持っている国の一つだ」と述べ、経済関係の拡大を目指す考えを表明した。