シンガポール政府は外国企業に対し毎年開催されているゲイ・ライツ(男性同性愛者の権利)集会の協賛企業にならないよう警告を出した。同国は同性愛をめぐり深い社会の亀裂を抱えているが、今回の措置は政府の姿勢が一段と保守的になってきたことを示している。
ピンクドットSG(性的マイノリティーが生きやすい社会を、と願う人々がピンク色のものを身につけて集う運動)の協賛企業にはゴールドマン・サックス、JPモルガンからバークレイズ、グーグルに至るまで大企業が名を連ねている。だが、シンガポール内務省はこのほど「外国企業がそうした催しに資金を提供、支持あるいは影響力を行使することのないよう措置を取る」との方針を発表した。
保守派の活動家は多国籍企業がシンガポールの政治に介入していると非難、この集会への協賛をやめるよう求めている。今回の政府の決定はこうした反発を受けたもので、同性愛者の権利に対する当局の姿勢が強硬になってきたことを物語る最新の動きだ。近年、同国の裁判所は成人男性間の性行為を犯罪だとする法律を是認し、ゲイを取り扱った児童書は国立図書館の成人図書の棚に移された。
シンガポール政府は同国が異性間の夫婦で成立する家族を基盤とする保守的社会であると主張している。
当局は男性同士の性行為を積極的に取り締まっているわけではなく、シンガポールにはゲイのクラブやバーが存在する。しかし、メディアがゲイをテーマとする記事を掲載する場合には検閲がある。
シンガポール当局は、外国からの資金提供や支援への規制はゲイ・ライツに反対する催しにも適用されるとしている。
近年、ピンクドットの集会が開かれる週末には、キリスト教徒が白い衣服をまとって伝統的な家族的価値への支持を表明してきた。
ピンクドットの催しは2009年から毎年行われており、先週土曜日に開かれた今年の集会には、ピンク色の衣服で身をまとった数千人が金融街の近くにある公園に集まった。
シンガポール経営大学の政治分析の専門家、ユージーン・タン(陳慶文)准教授は、政府の介入について、同性愛をめぐる国内の緊張を緩和することを目的としているようだと指摘する。
また、同氏は「ピンクドット運動が協賛企業を増やすようだと、性的少数者(LGBT)に反対するグループも運動を強めるだろうと政府は言っているのだろう」と述べた。また、「私は今回の発表は(相反する運動の対立で熱くなっている)温度を下げようという試みだとみている」と指摘した。