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1,400億円事業が更に大幅成長できたマーケティングの真実。香椎由宇、山本美月、波瑠の大ヒットCM「鎌倉三姉妹」の裏側を探る

鎌倉三姉妹

「馬鹿にしないでよ そっちのせいよ」——懐かしのフレーズを歌いながら、鎌倉の古民家から登場する三姉妹。そんな個性的なCMが2015年秋、話題になった。今回は、その仕掛け人である、GUマーケティング担当の土居正英さんにCM大ヒットの裏側を伺った。

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土居正英 1979年、東京生まれ。慶應義塾大学卒業。P&Gに入社し、5年半営業でキャリアを積んだ後、マーケティング部でヘアケア、男性グルーミングを担当し、スイスのヨーロッパ本部に赴任。グローバルブランド戦略及び商品戦略を策定し、主にヨーロッパ、北米、アジア地域への実行を指揮。2015年 5月、株式会社ジーユー マーケティング部 部長に就任。

1,400億円事業が更に大幅成長!

2015年の9月からGUは「鎌倉三姉妹」というTVCMを中心に、大々的なキャンペーンを展開しています。香椎由宇さん、波瑠さん、山本美月さんの3人を、鎌倉の古民家に住む仲良し三姉妹という設定で起用し、劇中では山口百恵さんの「プレイバック Part 2」を使いました。

GUワイドパンツ「三姉妹お出かけ」篇 – YouTube

このキャンペーンが火付け役となり、前年1,400億円規模だった売上は更に大幅な伸長を続けています。デジタルでもFacebookやYouTubeでCMを流したのですが、合計で160万回の再生を突破するなど反響も大きかったです。CM好感度ランキングアパレル部門で1位になり、CM放映直後から客数(レジ通過人数)も一気に増えました。

「どんな感情を呼び起こしたいか」を考える

マーケターとして一番考えなくてはならないのはそのブランドがどう見えるかということ。このCMを見て、ブランドを感じ、お客様の心に起こる気持ちは何か。それをきちんと定義し、設計してから作り始めました。

まずやったのは、GUがこれからどういったブランドになっていきたいのか、書き起こしていくことです。「どんな感情を呼び起こしたいのか」「何が強みか」「現状はどう受け止められているのか」。これをもとに、広告代理店様と議論して生まれたのが、この「鎌倉三姉妹」シリーズであり、「ゆるく、楽しく、美しく」というコピーです。

鎌倉三姉妹
伝えるべきはGUの「自由さ」

GUはトレンドのファッションを気軽に楽しめるブランドです。ですがブランドの未来を考えたとき、その先にある生活まで描きたいと考えました。鎌倉という洗練されリラックスできるような場所で、せかせかせずゆるくファッションを楽しんでいく。そういうライフスタイルを表現したかったのです。

GUのスローガンは「ファッションを、もっと自由に」。GUという名前も、もともと「自由」から来ています。ファッションのトレンドを楽しむには、まだまだ不自由さもあるなと思います。流行しているものをいいなと思っても、自分に合うかわからない。価格が高ければ、失敗するのも怖いですよね。だから今欲しいトレンド商品が、安価に手に入って気軽に試せるということは、ものすごく自由で楽しいことのはず。その自由になれる気持ちを伝えたいと思いました。

5年計画でギャップを埋める

ブランドのイメージはすぐに変わるものではありません。短期的な視点しかないとブランドの軸がブレてしまいます。ブランド戦略を考えるときは「消費者にどう思ってもらいたいのか」ということの設計図を最初に作るべきです。

鎌倉三姉妹

この設計図は未来の理想像ですから、消費者が今持っているイメージとの間には必ずギャップが生まれます。このギャップを埋めていくのが、さまざまなブランド戦略の施策であり、お客様とのコミュニケーションなのです。

ファンはブランドの価値を誰より知っている

理想と現状の間にあるギャップを埋めるためには、消費者の声をよく聞かなくてはなりません。GUのブランド戦略を考えるとき、私は消費者の自宅にまで赴いてインタビューをしました。1ヶ月間毎週のように話を聞きに行きました。

話を聞いてみると、本当にGUが好きな人がいるんですよ。ある人は、GUの過去のCMを全て覚えていて、これまでのアイテムの変遷も全部把握しているんです。クローゼットの中はもちろんGUだらけ。
「これは3年前に買ったもので……」とひとつひとつ解説してくれました。

ブランドに命を吹き込むのは、必要性です。どんな風に生活の中で必要とされているかがわかれば、自ずとブランドの価値も明らかになるのです。

ブランドが嫌いな人にも話を聞く

ブランドが好きな人に話を聞く一方で、嫌いな人にも必ず話を聞きます。ビジネスとして考えれば、ブランドを愛する人に買ってもらうだけでなく、嫌いな人にこそ関わってもらえるようになることが大切。ブランドを嫌いになってしまった人に話を聞くと、必ず嫌いになってしまった原体験があることがわかりました。たくさんの人に話を聞いていくと、意外に似た体験をしていることが多くあります。
ブランドは人のようなもの。ブランドとお客様の関係は、人間関係です。そのブランドが嫌いになっているということは、どこかで喧嘩しちゃったんですね。コミュニケーションにギャップがあるんです。ブランドが好きな人が語ってくれる価値と、ブランドが嫌いな人が語る体験をどう埋めるか。これはマーケターの役割です。

自分に関係ない、と思う人を減らす

今回のキャンペーンに当てはめてみましょう。このCMは、GUの「若者向け」というイメージを変えていきたいと思った施策だったんです。

お客様に話を聞いてみると、30代の方からは「若者向けのブランド」と思われていることがわかってきました。数年前まで10代に人気の女優や歌手を起用していたため、30代のお客様はCMを見て「若い」と思い、実際に店舗に行ってみて「やっぱり若いわ」と感じすぐに店を出る。そして「私には関係ないブランドだから、もうGUには行かない」と思ってしまう。そんな原体験が見えてきました。

GU以前のCM

以前のCM映像より(日刊キャリアトレック編集部手配)。ロゴも違うが起用タレントも違った

こうした方の多くは、トレンドを取り入れるだけでなく、自分らしく大人っぽいものが好きですし、そこそこ値が張ってもデザインが凝っているものが欲しいと思うので、わざわざ安いものを買わなくてもいい。GUはこういったお客様との関係を失ってしまっていました。だから、GUはそんな大人の方でも着られるトレンドの服がたくさん揃っているというメッセージを、TV、デジタルなど、あらゆるメディアを駆使して発信していきました。

結果、GUの特集を組んでくれる雑誌やTV番組が大幅に増え、SNSを中心に好意的な口コミがお客様から自発的に発信されるようになっていきました。その流れの中で、徐々に自分は関係ないと思っていた人との関係が新たに始まり、そうした人が店に足を運んでくれ始めています。 嫌いな人にも話を聞き、「これがあったら好きになってくれる」ことを設計していく。ブランドの設計とは、非常に地道な作業なのです。

顧客の幅を広げる仕掛け

山本美月さん、香椎由宇さん、波瑠さんを起用したのも、こうした背景があってのことでした。ブランドイメージの調査でも、10代から20代前半には支持されているのですが、20代後半から、30代40代になるにつれてブランドの支持はどんどん下がっていました。だから20代に加えて、30代以上にも支持がある方を起用して支持層を拡大しようという狙いがありました。
CMで80年代のヒットチューンを使ったのも、こういう意図がありました。

また、GUはメンズ向けの認知度がまだまだ低かったため、高良健吾さんを起用し男性にも来てもらえるような施策を行いました。このCM放映以降、メンズにおいても大きな売上伸長を継続できています。

高良健吾さん

「鎌倉三姉妹」はなぜ三姉妹なのか

アパレルのCMですから、服の見え方も大事。三姉妹にしたのは、3つのスタイリングを同時に見せられるからです。バリエーションをつけることでより多くの人に共感してもらいやすくなりますし、CMに出ている商品を店頭で展開して販売を促進することもできます。

ドラマ仕立ての展開をしているところもポイント。幅広い層に訴えていて、商品も変わっていくとなれば、すぐに忘れられてしまいなかなか消費者の心には残りません。「ああ、あれね」と覚えてもらうための一貫性が必要です。そのため、共通するテーマとして、4人の関係を描いていく物語にすることにしました。

GU ハイウエストボリュームパンツ 「マルシェ」篇 – YouTube

2015年の3本に加えて、2016年もこの「三姉妹」シリーズのCMを継続しています。4人の関係が実は……といった観点で楽しんでいただければ、と思います。

まとめ

常に消費者の声をひろい上げ、目指すべきブランドの姿とのギャップを明らかにし埋めていくマーケティング、ブランド戦略の手法の結実が「鎌倉三姉妹」だ。後編では、一流マーケターである土居さんがどのように仕事に取り組んできたのか、その軌跡を追う。

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後編:【ルールはない。あるのは「今何ができるのか」。GU土居正英が語るマーケティングの真髄】は明日5月20日(金)公開予定です