この数週間、企業トップへのばかげた報酬額ばかりが目に付く。英石油大手BPが赤字の年だったにもかかわらずボブ・ダドリー最高経営責任者(CEO)に支払った1400万ポンド(20%アップ)をはじめ、英広告大手WPPのマーティン・ソレル卿に支払われた7000万ポンドというとんでもない額まであった。
だが、もう一つ、とりわけ注目すべき支払いがあった。その理由は、報酬額が他より高かったから(近年730万ユーロはCEOの報酬としては多くない)でも、株主を驚かせたからでもない(株主は驚かなかった)。その報酬が独フォルクスワーゲン(VW)から追放された元トップのヴィンターコーン氏に支払われたものだったからだ。同氏は自動車産業史上おそらく最悪の不祥事のさなかに同社を統率していた人物だ。
そして、決定的に狂っている点は、ヴィンターコーン氏に支払われた報酬パッケージの内の590万ユーロが2015年の「業績に関連する」ものであった点だ。この年は同社が排ガス不正によりほんの数日間で企業価値を400億ユーロ下げ、信頼が傷ついた年だ。
同氏はVWを昨年9月に退社したが、その際に「自分は不正行為を認識していなかった」と反論した。とは言え、この人物は責任者だったのだ。失敗に対する報酬という例があるなら、これがまさにそれにあたるだろう。
■物言う投資家に役割
すべては、欧州で最も米国スタイルの物言う投資家に近い存在であるクリス・ホーン卿の手柄だ。フィナンシャル・タイムズ紙(FT)が6日に明らかにしたとおり、ヘッジファンド、ザ・チルドレンズ・インベストメント(TCI)の代表である同氏は、風変わりなVWのガバナンスや報酬の改革を行うべく、同社の12億ユーロ相当の株式を保有している。
ヴィンターコーン氏に支払われた報酬を取り戻すのはもう手遅れだが、TCIはVWの企業文化を幅広く変え、効率を向上させ、昨秋に失った株価損失分を取り戻すことはできるだろう。もし(独ニーダーザクセン州と元トップ一族に権力が集中している)所有構造の抜本的な見直しを推進できれば、この一癖ある企業グループの市場における企業価値の低下を改善できるだろう。
ホーン氏は多くの投資家が報酬やガバナンスに対して感じている動揺を反映しているとみられる。
FTは先週、ノルウェーの石油ファンドが役員に過剰な報酬を支払っている企業の公表に乗り出すと報じた。英投資協会はリーガル・アンド・ゼネラル(L&G)のナイジェル・ウィルソンCEOに同様の問題に関するタスクフォースを率いるよう要請した。