Q13: 政府方針が変化した根拠は?

金子氏の発言

国会決議の直前まで、政府の方針は、アイヌの人々は国連宣言に言う先住民族ではないというものでした。なぜならば、そのような根拠が歴史的にないからであります。(2014/9/22 札幌市議会)

第131回国会 参議院内閣委員会(1996年)

○萱野茂君 次に、先住民族であることの確認についてお伺いします。大変しつこく質問して恐縮でありますが、とても大切なことでありますので、次に先住民族の定義についてお伺いしたいと思います。
ここまで私は、旧土人保護法、外人土地所有法、オットセイ保護条約など、これまで日本政府が条約や法律の中でアイヌ民族をどのように扱ってきたかについて申し上げてきました。政府の行為としてアイヌモシリを異国として扱ってきたこと、アイヌを異民族として扱ってきたこと、アイヌが先住民であり、日本はアイヌモシリを侵略し、支配してきた事実について十分御理解いただけたものと思います。それにもかかわらず、政府はアイヌを先住民族として認めようとしていません。これまでの国会の政府答弁を要約しますと、少数民族であることは最近になって渋々認めました。しかし、先住民族であるか否かについては、古くから住んでいることは認めるが、先住民族との固有名詞を使うことはちゅうちょせざるを得ないとしてきています。
官房長官、私は個人的に長官には三十年来、私の貧しい平取町の中の二風谷村の民芸品アツシ織などをすべてお買い上げ願って、長官に向かって言いづらいし、顔を見ただけでもありがたい人がそこに座っているということで言いづらいのでありますが、官房長官、あなたはかねがねアイヌが北海道の先住民であることを政府に求めてきた第一人者でありますが、きょう私が申し上げたことでさらにその確信を深められたものと想います。先住民族として認めてくださるかくださらないか、その辺をお伺いできれば大変ありがたいと思います。
○国務大臣(五十嵐広三君) ただいまの萱野委員の御意見は、我が国国政史上アイヌ民族出身の国会議員としての、しかもみずからの民族にかかわる初めての御質問でございまして、大変意義深くお伺いをした次第であります。
ただいまるるお述べになりました御意見は、これまでの歴史においてアイヌの人々が受けた深い悲しみや痛みに満ちたその思いというものを率直に訴えられたものと存じまして重く受けとめさせていただきたい、このように存ずる次第であります。
御質問の点でございますが、アイヌの方々が北海道に先住していたということは既に学説上の通説でございまして、また先ほどのお話にもございました北海道旧土人保護法の制定自体が北海道に土着する民族としてのアイヌの方々の存在を示しているものであろうというふうに思うところであります。
しかし、いわゆる先住民族の定義につきましては、先住権との関係もございまして国際的にもまだ明確な定義がございませんで、国連の関係機関でも議論が続けられている難問でありますことは御承知のとおりでございます。政府としては今後アイヌ新法問題論議の中で真剣に検討を進めさせていただきたい、このように思う次第であります。

A13:

金子氏が主張するように「根拠が歴史的にないから」先住民族と認めなかったわけではなく,先住民族の定義が確定するまで政府が対応を先延ばしにしていたのがその理由。

Q12: 民族という意識

金子氏の発言

まず、ここにお集まりの皆様は何民族でいらっしゃいますでしょうか。私自身は、何民族という意識は持っておりません。一人の日本人という意識を持っております。北海道にアイヌの血を引く人々が大勢暮らしていることは、私も当然承知をしておりますけれども、アイヌの人々も同じように日本人として暮らしているはずです。(2014/9/22 札幌市議会)

金子氏の別の日のツイート

第131国会 参議院内閣委員会における萱野茂氏の質問(1996年)

イタップリカ ソモネコロカ シサムモシリモシリソカワ チヌムケニシパ チヌムケ カッケマク ウタペラリワ オカウシケタ クニネネワ アイヌイタッアニ クイタッルゥェ ネワネヤクン ラモッジワノ クヤイライケプ ネルウェクパンナ。

(アイヌ民族の言葉で
言葉のあやではありませんが、日本の国土、国土の上から選び抜かれてこられた紳士の皆様、淑女の皆様が肩を接しておられる中で、成り行きに従いアイヌ語でしゃべらせてもらえることに心から感謝を申し上げるものであります。)

A12:

民族を意識するのは,自分と異なる存在に出会うときである。金子氏の「一人の日本人」という言葉が,韓国人など他の民族の存在を前提にしていることは言うまでもなく,しかもそのことを金子氏自身が強く意識していることが上のツイートからわかる。一方,萱野茂氏が国会でアイヌ語によって質問したことに象徴されるように,アイヌ民族としての意識を持つ人は少なくない。これを「同じように日本人として暮らしているはず」と断言するのは間違い。

 

 

Q11: 北海道は「植民地」か?

金子氏の発言

もちろん、我が国政府がアイヌの人々に植民地支配を行った事実はありませんし、アイヌ先住民族論はまさに歴史の歪曲にほかなりません。(2014/9/22 札幌市議会)

北海道庁編『新北海道史』による解説

開拓の進行はアイヌに新しい環境をもたらし、原住者植民地から居住植民地への変化と同時に、新しい高度な社会組織が移入されたが、海岸の日本人との接触の激しい地方の少数の者を除いては,アイヌは旧態依然たるもので、これらに対処しているだけの能力を有するものはまれであった。(第三巻 通説二, p.879)

A11:

北海道庁が編纂した『新北海道史』では,江戸時代の状況を経済的な収奪を行う「原住者植民地」,開拓使以降の状況を和人がそこで社会を営む「居住植民地」として解説している。

Q10: アイヌ差別は解消されたか?

金子氏の発言

今は、戸籍謄本にアイヌとの記載はございませんし、就職、進学の差別もなく、誰もが日本人として自由にひとしく平等に暮らしている現代こそが、知里先生の考える理想社会だったのではないでしょうか。(2014/9/22 札幌市議会)

内閣官房アイヌ総合政策室による調査結果(2015年実施)

アイヌ民族1000人に対してアンケート調査を行い,705名から有効な回答を得た。

その結果,回答者の36.6%が「自分が差別を受けている」と答えている。

北海道アイヌ生活実態報告書(2013年実施)

道内に住むアイヌ民族586人に対して聞き取り調査を行った。

その結果,回答者の23.4%が「差別を受けたことがある」と答えている。

A10:

残念ながら,現在においてもアイヌ差別は解消されていない。

Q9: 「民族としてのアイヌは既に滅びた」?

金子氏の発言

実際に、アイヌ出身の故知里真志保北大教授が、今から半世紀ほど前に平凡社の世界大百科事典にこう書いておられます。民族としてのアイヌは既に滅びたと言ってよく、厳密に言うならば、彼らはもはやアイヌではなく、せいぜいアイヌ系日本人とでも称すべき者であると。つまり、これは、決して私一人の特異な意見ではなく、学術的定説であると思います。

「平凡社大百科事典第二版」の記述(執筆は知里真志保)

今これらの人々は一口にアイヌと呼ばれているが、その大部分は日本人との混血によって本来の人種的特質を希薄にし、さらに明治以来の同化政策の効果もあって、急速に同化の一途をたどり、今はその固有の文化を失って、物心ともに一般の日本人と少しも変わることがない生活を営むまでにいたっている。したがって、民族としてのアイヌは既に滅びたといってよく、厳密にいうならば、彼らは、もはやアイヌではなく、せいぜいアイヌ系日本人とでも称すべきものである。

平凡社による訂正の告知(2007年)

このたび、小社では『世界大百科事典』の「アイヌ」の項目を全面的に改稿することといたしました。現行の同項目は、1970年代後半の編集になるもので、アイヌ民族が日本の先住民族であるとの視点にないものであり、現時点では適切なものではないばかりか、アイヌ民族に対する偏見や差別を助長しかねないとの認識にいたったためです。この改稿は本年秋に予定しております同百科事典の2007年版に反映いたしますが、2002年以降にご購入いただき、読者登録をされている皆さまには、改稿あるいは今回新規に立項します項目を小冊子「アイヌ関連項目集」にまとめ、お届けいたします。なお、小社で把握できない購読者の皆さまにつきましては、下記へお問い合わせください。読者の皆さまはじめ関連項目の当事者、利用者の皆さまにはご迷惑をおかけいたしますが、上記経緯につきご理解いただき、ご容赦くださいますようお願いいたします。

平成19年4月28日

株式会社 平凡社 営業部

A9:

知里真志保の見解は現在では有効ではない。

Q8: 先住民族宣言は、憲法の「法の下の平等」に抵触しない?

金子氏の発言

これは、まさに差別の再生産にほかなりません。全て国民は法のもとに平等であるべきであって、理由なき差別、優遇策にはもはや終止符を打つべきだと思います。(2014/9/22 札幌市議会)

日本国憲法

第十四条  すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律

第一条 この法律は、法の下の平等を保障する日本国憲法 の理念にのつとり雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を図るとともに、女性労働者の就業に関して妊娠中及び出産後の健康の確保を図る等の措置を推進することを目的とする。

第八条 前三条の規定は、事業主が、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保の支障となつている事情を改善することを目的として女性労働者に関して行う措置を講ずることを妨げるものではない。

A8:

憲法は、「法の下の平等」を実現するために必要な是正措置を禁じていない。

 

Q7: アイヌになるのは自己申告制?

金子氏の発言

そもそもアイヌの定義とは、北海道アイヌ協会によりますと、アイヌの血を引くと確認された者及びその家族、配偶者、子孫がアイヌであり、養子縁組などでアイヌの家族となった者も含まれるということで、しかも、これは自己申告制であります。(2014/9/22 札幌市議会)

公益社団法人 アイヌ協会定款

第5条 この法人に次の会員を置く。

(1) 正会員

①第1類正会員 この法人の目的に賛同して入会した、この法人と主たる目的を同一 とし、その主たる構成員がアイヌの血を引く者又はアイヌの血は引かないがア イヌの血を引く者の配偶者若しくはアイヌ家庭で養育された一代限りの者であ る団体

第6条 第1類正会員及び賛助会員として入会しようとする者は、理事会において別に定 める入会申込書を提出する。

『アイヌ語をフィールドワークする』

また、貧しい和人家庭で育てられなくなった子供を、アイヌ人が引き取って自分の子供として育てた例が数多くあり、これまでわれわれが「古老」「伝承者」として、アイヌ語やアイヌの伝統文化の聞き取りを行っている人の中にも、アイヌの血が一滴も入っていない人はけっして珍しくない。(中川裕,pp.184-185)

A7:

アイヌ家庭に養子として育てられた和人の子がアイヌとして扱われるのは当然であり、それがアイヌ協会の規定に反映されているといえよう。また、現在では除籍謄本などの公文書をつけた家系図の提出が求められているために、「自己申告」だけで会員になることは不可能。さらに言えば、アイヌ協会の会員であることとアイヌ民族であるという自認を持つことは全く別の話である。