生物は体のサイズによって時間の流れる速さが違う。こんな視点から書かれた著書「ゾウの時間 ネズミの時間」がベストセラーとなった
本川達雄・東京工業大学教授。生物学の面白さを学生たちにわかりやすく伝えたいと考え、講義内容を作詞作曲して、授業中に自ら歌う「歌う生物学者」としても知られる。
本川氏は、日本人科学者と英語の関係についても独特の視点を持つ。氏の名前を有名にした論考「スシサイエンスとハンバーガーサイエンス」では、日本と西洋のサイエンスの違いを東西の思想をベースにして論じ、アメリカで話題になった。その主張とは、サイエンスはもともと西洋が作ったものであるゆえ、英語中心主義になるのは仕方ないが、その土地、その文化固有のサイエンスの形があって、科学者はその多様性を認識する必要がある、というものだ。
「赤毛のアン」や「ナルニア国物語」が大好きというメルヘンチックなエピソードを織り交ぜながらの英語体験談は、ついには英語というテーマを飛び越えて、本川氏の目指すサイエンスとはなにか、科学者の役割とは、というところまで及んだ。
取材・構成=古屋裕子(クリムゾンインタラクティブ)