「グアルディオラ渾身の変化球攻撃も、軽く弾き返すシメオネの豪腕」欧州CL 準決勝第1レグ アトレティコ・マドリー-バイエルン・ミュンヘン
世界最高の攻撃力を持つバルサを破ってベスト4に進出したアトレティコと、セリエでダントツの守備力を誇るユヴェントスを粉砕して勝ち上がったバイエルンという、最強の盾と矛の対決となった準決勝。
アトレティコはトーレスとグリーズマンを2トップに並べた4-4-2と準々決勝と大きく変わらないフォーメーションなのに対し、バイエルンはどういう形で対抗するのかと思ったが、レヴァンドフスキの1トップにドグラス・コスタとコマンがウイングに入った4-3-3と、アトレティコに負けたバルサと同じ形にして来たのは意外だった。
そして案の定、前半のバイエルンはほとんど攻撃をさせてもらえなかった。アトレティコは前線から激しくプレスをかけてバイエルンのDFに全くパス出しの余裕を与えず、バイエルンの3トップはガッチリマンマークで張り付かれ、たまにボールが収まってもすぐさま2人目の選手が襲いかかってボールを奪い返してしまう。まるでレスターの岡崎が4人はいるような反応と献身性である。
しかもアトレティコはただ守るだけではなく、ボールを奪ったらFWやSHが必ずサイドに流れてバイエルンのSBが上がったスペースを使う動きが徹底されており、そこにきっちりロングボールを当てて基点を作る事で、攻撃はもちろんだが守備全体も押し上げる時間を作っている。
すると11分に、右のSHで先発したサウールが、右サイドからカットインを交えながらスルスルとPA内へと侵入すると、最後はアラバもフェイントで交わし、ノイアーの反応もギリギリ届かないボール1個分ぐらいの針の穴を通すようなコースに決めてアトレティコが先制点をゲットする。バイエルンはベルナト、アラバという本職じゃないCB起用がやはり裏目に出てしまった。
前半はほとんど何も出来なかったバイエルンだが、流石にペップは後半に修正を加える。アトレティコの守備の特徴として、SBが相手ウイングのドリブルとクロスを封じるためにサイドに寄ってスペースを潰し、CBと距離を空ける独特な守備をする事は準々決勝でも指摘したが、後半のバイエルンはそこにレヴァンドフスキが流れたりビダルが上がったりして穴を突いて来た。
そして前半はサイドに張るばかりだったドグラス・コスタとコマンが中に入る動きを見せるようになって、アトレティコの両SBがマークの相手を絞れなくなり、アラバの強烈なミドルがバーを叩くなどペースは明らかにバイエルンへと傾いた。
さらにペップは、コマンに代えてリベリを投入してサイドだけじゃなくて自由なポジションを取らせつつ、ミュラーも入れて4-2-3-1にし、アトレティコのゾーンの中で受け手となる選手を増やす攻めの采配を見せる。が、ペップにとって誤算だったのはリベリが本調子でなくボールの受け手として機能しなかった事だろう。かえってリベリが入る前のほうが、バイエルンに得点の可能性は感じられたぐらいだ。
そのうちアトレティコも守備を修正して来て、CBとSBの間のスペースについてはボランチが下がって対応し、ボランチが動いて空いたスペースはさらにFWがスライドして埋めるなどで対応する柔軟性を見せる。当然、前線の枚数が少なくなってセカンドボールを支配されるが、それでも守りきれてしまうところがアトレティコの強みでもある。
バイエルンは最後にSBを上げて2バックにする2-3-4-1のフォーメーションにして押し切りを図るが、アトレティコはお決まりのシメオネによる観客煽りで対抗、バイエルンはパワープレイからビダルのシュートも枠を捉えられず試合終了。ホームのアトレティコがアウェイゴールを与えず第1レグで先勝した。
レギュラーCBのゴディンが怪我で欠場しても全く守備が破綻しないアトレティコは流石だが、まだアトレティコが有利とは言い切れない。ビセンテ・カルデロンはピッチの芝が長くてバイエルンのパススピードが封じられていたし、バイエルンが得意とするローテーション攻撃は本来ゾーン・ディフェンスと相性が良い。いずれにせよ非常に面白い試合になる事は確かだろう。
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2016/04/29 | UEFAチャンピオンズ・リーグ
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