北海道大学とカリフォルニア大学サンディエゴ校、ウィスコンシン大学の日米共同研究グループは5日、脊髄損傷を起こしたマウスにほかのネズミの脊髄から作った神経幹細胞を移植し、傷ついた神経を再生することに成功したと発表した。まひした手の動きも改善した。
実験では14匹のマウスの大脳と脊髄をつなぐ、手指の動きをつかさどる神経回路の束の一部を切断した。7匹には1週間後、損傷部に、他のマウスの脊髄から作った神経幹細胞を移植した。残る7匹には何もしなかった。
健常なマウスは1度に9~10個の砂糖粒を食べる。何もしなかった7匹は受傷から11週間たっても手がうまく使えず、1~2個しか食べられなかった。
一方、神経幹細胞を移植した7匹は、砂糖粒を4~5個食べられるまで手の動きが改善した。移植した神経幹細胞が神経細胞に変化し、損傷した神経回路を再生したとみられる。大脳など脊髄以外の神経組織から作った神経幹細胞では再生できなかった。
ほかのマウスの脊髄ではなく、ヒトのiPS細胞から脊髄由来の神経幹細胞によく似た細胞を作ってマウスに移植しても、同様の効果を確認できた。今後、技術を確立して臨床応用を目指す。