こんにちは。ライターをしておりますヨッピーです。
前回に引き続き、アルバイト情報サービス「an」の人から、「日本の記念日にまつわるバイトを調べてほしい」と言われました。
3月17日は「漫画週刊誌の日」。なんでも、日本初の少年週刊マンガ誌「週刊少年サンデー」と「週刊少年マガジン」が創刊された日なんだとか。
そんな日にちなんで、今回は週刊連載しているマンガ家さんの仕事場にお邪魔して、アシスタントとしてバイトしてみることにしました!
しかし、なぜ僕がこんな風に神妙な顔をしているかというと……、
みなさん忙しそうで、僕みたいな人間が気軽に声をかけられる雰囲気ではないからです。
本日お邪魔したのは、「少年ジャンプ+(プラス)」で人気マンガ『カラダ探し』を連載している村瀬克俊先生の仕事場です!
三大週刊少年マンガといえば、「ジャンプ」「マガジン」「サンデー」ですよね。実は、「ジャンプ」は、ほかの2誌に比べて約9年後に創刊。にもかかわらず、少年マンガ誌のトップを走り続けているのであります。
©ウェルザード・村瀬克俊/集英社
『カラダ探し』は「最叫&最恐のサバイバルホラー」というキャッチコピーで人気の作品です。
クラスメイトから「私のカラダを探して」と依頼された主人公たち。それは、学校に伝わる“赤い人”の怪談を想起させます。強制的に「カラダ探し」に参加することになった6人は、すべてのカラダを見つけなければ、永遠に同じ日が繰り返され、何度も“赤い人”に殺されてしまうという……。
僕も「ジャンプ+」で読んでみたのですが、主要キャラクターがバッシバシ死んでいくし、絶望感がすごい……! そういうマンガが好きな方は、こちらで一度試し読みしてみてもいいかもしれません。
アシスタント作業の
基本を学ぼう
そんな『カラダ探し』を連載している村瀬先生のところにお邪魔して、アシスタントの仕事をお手伝いさせていただくことに。
参考までに、先生が描いた原稿を見せてもらったのですが……、
「絵が上手すぎる。こんなもん手伝えることなんて何にもないやんけ! ちなみに、この絵を描き上げるのには、どれくらい時間がかかったんですか?」
「これは動きもある結構難しい絵なので、1時間くらいですかね」
「これを1時間で描くのは異常だと思う。そんな人たちに交ざって手伝うなんて、どう考えても無理でしょうよ……! ガッチガチのプロの大人たちが全力でラグビーやってるところに子どもが入っていったらどうなると思います? 下手したら死にますよ」
「じゃあ、まずはこれをやってみてください。この作業で、なんとなくマンガを描くセンスがわかるんですよ」
「何ですか、これ?」
「線です。丸ペンと定規で線を引くっていうただそれだけなんですが、これが意外と難しいんですよ。理想は、スーッと段々細くなって消えていくような線ですね」
「あれ、馬鹿にされてるのかな? さすがにこれくらいできるわ!」
「まぁまぁ。1度チャレンジしてみてください」
さっそく先生のお手本を参考に、見よう見真似で線を引いていく僕。
「うわー、何これ!? 線の太さが全然均一じゃない! 思ったよりめちゃくちゃ難しい! できるわけないじゃないですか、こんなもん!!」
「えー! さっき自信満々だったじゃないですか!?」
「いや、たかだか線を引くだけでこんなに難しいとは……。でも、こんな技術がなくたって、マンガは描けるでしょうよ!」
「それがそうでもないんですよ。たとえば、この家の外観。木の塀の部分なんですけど……」
「ね? さっきの技術を利用して、質感を出したり陰を作ったりしているんですよ」
「うーむ。じゃあ、もしこの線が描けないと……?」
「少なくともウチのアシスタントとしては使い物にならないですね」
「マジか!」
そんなわけで、一生懸命線を引く練習をする僕。
「先生」
「どうしました?」
「飽きました」
「飽きっぽいのは完全にマンガ家に向いてないと思いますよ」
マンガの上手さは
技術だけにあらず?
「では、仕方ないので次はこれをやりましょう」
「おぉ! 集中線!」
「そうです。こんな風に画びょうと定規を使って、集中線をつけてみてください。さっきの技術の応用です」
「任せておいてください!」
「おっ、悪くないですよ。さっきよりだいぶ線が描けてます!」
「やったー! ちなみに、今僕が引いたこの集中線を、アシスタントの人が『できました!』って言って持って来たらOK出しますか?」
「うーん、『どうした? 寝てないの?』とか『酔っぱらって描いた?』って聞くかもしれませんね」
「全然ダメじゃねぇか!」
ほかにも、指定された場所を筆ペンで塗りつぶす「ベタ塗り」という作業もある。
「やべぇ。塗った所がはみ出してデコボコしてる……まさか基本的な作業だけでここまで難しいとは……!」
「でしょう? 一言でマンガを描くと言っても、1本1本の線からすべてプロのテクニックが詰まっているんです」
「村瀬先生から見て、上手なマンガ家さんってどなたですか?」
「やっぱり、『DEATH NOTE』や『バクマン。』の小畑健先生、『アイシールド21』『ワンパンマン』の村田雄介先生などですかね。線にも技術の高さが表れている気がします」
「ふーむ。ちなみに、福本伸行先生はどうですか? 僕、福本先生の作品は大好きで『アカギ』も『金と銀』も『黒沢』も全部読んでますけど、『ひょっとしてこの人、絵はヘタなのでは……?』くらいに思ってます」
「福本先生の絵って、『ああ、これは福本先生の作品だな』と、一発でわかるじゃないですか。そのくらい強烈なインパクトがあるのはすごいことなんですよ。単に上手いだけではたどりつけないブランドを確立している。作品の雰囲気ともぴったりマッチしていて、一つのマンガとして完成されていると思いますよ」
「なるほど。上手く逃げましたね」