「Thinkstock」より

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 あのSMAPが分裂・解散か。一転、全員ジャニーズ事務所に残留か――。

 国民的アイドルグループの去就が揺れている。事務所も「SMAPの一部メンバーの独立問題と担当マネジャーの取締役辞任等に関する報道について、協議・交渉がなされている事実は存する」と認めているが、発端はSMAPのマネジャーで“育ての親”である飯島三智氏の2月退社に伴い、同氏に恩義を感じるメンバー4人(中居正広、稲垣吾郎、草なぎ剛<編注:「なぎ」は正式名は漢字>、香取慎吾)が独立の動きを見せたというものだ。

 飯島氏は、副社長のメリー喜多川氏と長らく対立しており、それが今回の退社にもつながったといわれる。現在発売中の「週刊新潮」(新潮社)では、飯島氏はメリー氏から「辞めろ」と圧力を受けて退職に追い込まれたと伝えており、「解雇」の文字も躍る。

 また、2015年1月の「週刊文春」(文藝春秋)のインタビューでは、さらに辛辣な言葉が並ぶ。メリー氏は取材中にもかかわらず飯島氏を呼びつけ、「『(娘の藤島ジュリー景子氏と)対立するならSMAPを連れていっても今日から出て行ってもらう。あなたは辞めなさい』と言いますよ」「もしジュリーと飯島が問題になっているなら、私はジュリーを残します。自分の子だから。飯島は辞めさせます」と発言しているのだ。両者の溝は、これで決定的になったともいわれる。

 インターネット上では、こういった言動について「立派なパワハラだ」「まるでブラック企業」との意見が噴出しているのが実状だ。メリー氏の飯島氏への態度について、弁護士法人ALG&Associates執行役・弁護士の山岸純氏は「仮に事実であれば、法律上、大変問題があると考えざるを得ません」と語る。

「まず、労働者と使用者の間の労働条件などを規律する『労働契約法』は、『使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする(第5条)』と規定し、使用者に対して労働者の安全を配慮する義務(健康配慮義務)を課しています。

 もともとは、危険な作業を行う場合に必要な訓練をさせたり、危険回避に必要な設備・用具を準備したりすることなどが主な内容でしたが、最近ではセクハラやパワハラが起きないように相談窓口を設置すること、過酷な残業を強いられないように労働者の勤務時間をしっかり管理することも内容に組み込まれています。

 このように、経営陣は、パワハラなどを防ぐための方策を立てなければならないのです。それにもかかわらず、経営陣の1人であるメリー氏自ら“退職強要”を行ったのであれば、法的には損害賠償責任を負う可能性が高くなります。ただし、上記の法律は刑事責任までは規定していないため、罰則が科せられることはありません」(山岸氏)

●中居正広もメリー氏に慰謝料を請求できる?

 では、仮に飯島氏の退社が「退職強要」の末の「解雇」によるものだったとしたら、飯島氏側がなんらかの対処をすることは可能なのだろうか。

「『解雇』には『普通解雇』と『懲戒解雇』がありますが、法律上『解雇』するには条件がとても厳しく、それらの条件を満たさない場合は『不当な解雇』として、解雇の撤回や損害賠償請求を行うことができます」(同)

 また、メリー氏は前述のインタビューで、SMAPについて「SMAPは踊れないじゃないですか。踊れる子たちから見れば、踊れません」と自社のタレントを批判するような発言もしている。一部報道によると、特に中居はその発言にショックを受け、独立志向を強めたことが今回の騒動につながったともいわれる。

 ダンスの実力は折り紙つきで、プライドもあったであろう中居にしてみれば、まさかの低評価は屈辱的だったと思われる。仮に、同発言で精神的苦痛を受けた中居が事務所を退社した場合、メリー氏の法的責任は問われないのだろうか。

「中居さんの場合、労働法が適用される『労働者』ではなく、ジャニーズ事務所からタレント業務の依頼を受けた『受任者』になると考えられるため、『労働者』を守るべく立法された各種の労働法が適用されることはありません。もっとも、メリー氏の言動により、法的な意味において(受忍の限度を超えた)精神的な苦痛を受けたのであれば、慰謝料請求を行うことができると考えられます」(同)

 泥沼化しそうなこの騒動がどんな決着を見せるのか、日本中が注目している。
(文=編集部、協力=山岸純/弁護士法人ALG&Associates執行役・弁護士)