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デザイン思考のトップランナーが語る「振り返り会」〜その効能と最新アプローチ〜

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“未来を変える” プロジェクトでは、2015年12月から2016年1月にかけて、「振り返り/プランニング」をテーマに、記事の制作段階でさまざまな方と議論しながらコンテンツを制作しています。

AmazonのKindleで2015年度の年間ビジネス書ランキングで2位に輝くなど、ビジネス書として大きなインパクトを残した『21世紀のビジネスにデザイン思考が必要な理由』。その著者である佐宗邦威さんも、独自の「振り返り会」を活用し、自らの方向性を見定め続ける一人です。

そんな佐宗さんに、かつてから行っている「1年間の振り返り」を回顧していただき、またその方法をどのように進化させているかご紹介いただきました。私たちが振り返りの第一歩として、まずどのようなことができるかについても伺いました。

PROFILE

biotope 代表取締役社長 佐宗邦威
佐宗邦威
biotope 代表取締役社長
東京大学法学部卒。イリノイ工科大学デザイン学科(Master of Design Methods)修士課程修了。P&Gにて、ファブリーズ、レノアなどのヒット商品のマーケティングを手がけた後、ジレットのブランドマネジャーを務めた。ヒューマンバリュー社を経て、ソニークリエイティブセンター全社の新規事業創出プログラム(Sony Seed Acceleration Program)の立ち上げなどに携わった後、独立。消費財のブランドデザインや、ハイテクR&Dのコンセプトデザインやサービスデザインプロジェクトを得意としている。

現在の自分を形作っている過去の「振り返り会」

—佐宗さんは、「振り返り会」の記事でも紹介した方法を、かれこれ5〜6年前から行っていましたよね。ここに、懐かしい昔の振り返り会の資料があります。

図:佐宗氏が2011年末に行った振り返りの資料
図:佐宗氏が2011年末に行った振り返りの資料

佐宗:これはなつかしい(笑) 2011年末頃に振り返り会を実施した際に翌年のビジョンを描いたものですね。これから間もなく、イリノイ工科大学のデザインスクールに留学したんですよ。「達成状態」の一枚絵に描かれたことは基本的には実現していますね。

 

ー手書きのイラストが印象的です。

佐宗:いま見ると下手すぎてなにを描いているかさっぱり分からないのですが、世界中で共創をし、まわりのひととそれを推進するための方法論を「型化」しているという図ですね。そして、世界中にフィールドワークに行って、インスピレーションを得ている。個人としては不安だった状態から飛躍するブースターの入り口にいるという自分を描いていますね。

 

「振り返り会」が発揮する効果

—「振り返り会」にはどのような効果がありましたか?

佐宗:1年間の自分の経験を棚卸しし、一旦吐き出した後でそれをさまざまなひとのストーリーと混ぜ合わせて考え直すことで、自分のモノごとの捉え方にジャンプが起きるんですよね。「グローバル」や「家族」といったキーワードは、自分だけで振り返りを行った時点で挙がっていました。振り返り会で自分の1年間を語ることで、パーツともいうべき自分の一つひとつの経験を再解釈できるんですよ。さらに、ほかの人からフィードバックを受け、同時にほかの人の1年間を聞くことで、ストーリーがさらに再構成されていくんですよね。

 

—なるほど。そのような効果が振り返り会にあるとして、その後に翌年のビジョンに落とすためには、もう一つステップが必要でしょうか?

佐宗:そのとおりですね。まず、1. 事実をダウンロード→事実の書き出し、2. 視点の混ぜ合わせ→友人のストーリーから自分を振り返る、 3. 未来のイメージをプロトタイプで統合するというステップですね。

3. についてはあるフォーマットを決めて統合するのですが、毎年実験的にやり方を変えています。「未来年表をつくる」「1枚のメタファを描く」「新しいシステム図を書く」など、その年の目的に合わせて統合するためのフォーマットを変えています。

 

佐宗氏が現在実施している「振り返り」

ー現在は、どのようなメンバーでどのように開催していますか?

佐宗:シカゴ留学時代に出会ったまったく別の分野で、国を超えて活躍している面々がいて、年末のメンバーの帰国に合わせてそのときに振り返るようにしています。分野は違うけれど、価値観が結構近いひとたちと1年を振り返ることにいまは価値を感じています。

 

ーそのメンバー構成で実施するとどのようなことが起きるのですか?

佐宗:探求分野が違うけれど、目指している方向性は近いので、同じものを別の視点で探求できる感覚があります。4人とか5人でそれをつなげていくと、それぞれが追っている最前線が自分たちの分野を超えて解ってくるんですよね。

 

—具体的には、どんな分野ですか?

佐宗:言語化したことはないですが、広い意味でクリエイティブラーニング、創造的学びというテーマを探求しているメンバーですね。合宿というか、オフサイトっぽく開催しているんです。

今年で3回目なのですが、今年(2015年)になってから、一人ひとりが世に出てきたので、より独自の世界観を進んでいる感覚があります。だからこそ、今年の振り返りはまた楽しみですね。

自分の道を歩み出したからこそ、なんでも言える心の拠り所がほしいという感じもあります。

 

ー振り返り会は1年に1回実施されていますが、それとは別に短期的なレビューや振り返りなども行っていますか?

佐宗:僕の場合は、コーチをつけて月次で振り返りを実施しています。自分の仕事のスピードも速くなってきているので、1カ月ごとに振り返りをしないと、その変化に振り返りが間に合わないんですよね。この毎月の振り返りでは、自分自身の思考をダウンローディング(棚卸し)して、優先順位を置いていくことを主眼としています。その上で、1年に1回の友人たちとの振り返りを通して、大きなメンタルチェンジを図っています。

 

明日から手軽に取り組める「ジャーナリング」という振り返りの方法

ーこうした一連の振り返りにこれから取り組もうというビジネスパーソンに、最初にオススメする方法はどのようなものでしょうか?

佐宗:第一歩としては、「ジャーナリング」という方法ですね。記事に紹介されているような振り返り会を、ひとを集めてやるというのは結構ハードルが高いですよね。ジャーナリングは、以下のような手順で自分だけで手軽に取り組むことができます。

【ジャーナリングの方法】

  • 手書きをするためのノートとペンを用意する
  • 今年1年間どういうことがあったかを、ありのままに書いていく
  • 自分が「これ以上書くことはないな」と思ったら終了(おそらく20〜30分程度で終わります)

これを行うだけで、相当頭がスッキリするはずです。また、ポイントはパソコンで打つのではなく、手書きで書き出していくこと。文字を手書きする行為は右脳を使っているので、自分の中で出来事がどんどんと咀嚼・消化されていきます。

その上で、もしも友人や知人を集めることができるなら、振り返り会を開催すると、とても効果的だと思います。手軽な第一歩ですので、ぜひとも試してみていただければと。

このあたりの原理や背景については、僭越ながら拙書の第1章、「シンキング」にて触れています。書いて考えること自体が、ビジュアルシンキングなんですよね。手を動かす過程で、答えが見えてくる。考えるのではなくて、手を動かす。そんなことを解説しています。

いずれにせよ、一旦書き出してしまえば、それらを素材にして思考を深めていくことが格段に取り組みやすくなります。

ちなみに書籍の中では、さらにそこから手で動かして形にして、ばらばらにして、組み合わせて、ストーリーに統合するといった一連の思考法をご紹介していますのでなにかの参考になれば嬉しいです。

振り返り会に取り組むハードルが高いと感じる方は、まずはぜひともジャーナリングなどに取り組んでみてください。

 

—佐宗さん、本日はありがとうございました。

いかがでしたか? 現在、デザインシンキングの領域で第一人者として活躍する佐宗氏が、日々のめまぐるしい活動を振り返り、その方向性を打ち出し続けるために駆使しているアプローチ、そしてその入口となる「ジャーナリング」など、明日からの仕事へのヒントが満載でした。ぜひ今回の内容をご活用ください。

本文中で紹介された「21世紀のビジネスにデザイン思考が必要な理由 [Kindle版]」

佐宗氏の現在の活動などが紹介された「biotope」社のページはこちら

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