robot_151001_bnr_a

価格は1000ドル、年間契約もなし

中国にペッパーの強敵現る。一人っ子の相手をする「兄弟ロボ」

2015/10/1

しゃべり方も興味も子どもに合わせる

またペッパーの競合が現れた。今度は中国発のロボットである。

このロボット、「アイパル」は、南京を拠点にするアバターマインド・ロボット・テクノロジーが開発したもので、来年製造に入る予定という。先だってシリコンバレーで開催されたロボット会議で展示され、関係者を驚かせたものだ。

なぜ驚いたかというと、アメリカでは決して出てこないヒューマノイド・ロボットである点もあるが、何と言っても「ペッパーをこんなに早く真似したのか」という思いが持ち上がるからである。

「真似した」などと、証拠もなくそんな言葉を使うのは言い過ぎだろう。だが、現在の中国の開発、製造技術をもってすれば、日本や西欧でみんなが大切にしているロボットなど、すぐできてしまいそうだ。

その肝心のアイパルだが、ペッパーよりも背丈はひと回り低めで、小学生の低学年くらいの背格好である。2本の足がついているが、足下は台車になっているので歩くわけではなく、車輪で移動するタイプだ。

手はペッパーのように動き、また顔もペッパーのように目の周りが光って、表情がある。胸にタブレットを付けているのもよく似ているのだ。

だが、アバターマインドによると、アイパルはペッパーのようなファミリー・ロボットとして開発されたものではないという。ここがユニークなのだが、「中国の一人っ子政策で兄弟のいない子供のためのフルタイム・コンパニオン・ロボット」なのだそうだ。

アバターマインド・ロボット・テクノロジーが開発した「アイパル」

アバターマインド・ロボット・テクノロジーが開発した「アイパル」

アイパルの機能も、家で子どもの相手をするようにつくられている。たとえば、自然言語で子どもとおしゃべりをする。しゃべり方も、対象とする子どもと同じような年齢の4〜8歳児のようなものという。相手のことも時間をかけて学んでいき、その子どもの興味に合わせた話題を提供したりする。

感情もある。触れられれば感知して反応するほか、話し方を聞いてその時の子どもの感情を計測する。楽しいとか寂しいとか、その感情に対応して、一緒に喜んだり励ましたりする。

あとは、親のために毎日子どもの写真を撮り、それをクラウドに保存する。親はそこにコメントを書き込んで、クラウド上の成長アルバムをつくることができる。

また、子どもがソーシャル・ネットワークで他の子どもとつながったりするのをモニターするペアレント・コントロール機能などもついている。一人っ子のための、至れり尽くせりロボットといったところだ。

ペッパーが破った壁をアイパルが超えていく

デモではほんの一部を披露しただけで、しかもまだ開発中のため、これだけ謳っている機能がどの程度遂行できるのかは判断しにくい。

だが、アバターマインドでは「消費者市場向けの、おもちゃでない初めてのロボット」だと売り込んでいる。しかも、値段は1000ドル。ペッパー本体値段の約半分である。ペッパーのような年間契約もつかないので、驚くべき安さだ。

このアイパルを見て感じるのは、ある程度の機能を果たすこうしたロボットは、これからどんどん出てくるだろうということだ。1〜2年もすれば、1000ドルどころか600ドルとか700ドルで、背丈もあって人間っぽい存在感のあるヒューマノイド・ロボットがもっと売られているのではないだろうか。

これまでのヒューマノイド・ロボットは、ホビイストがつくる卓上サイズのもの、あるいは大学の研究室でつくっているような高度に精巧なロボットだった。その壁をペッパーが破ったわけだが、そのペッパーをアイパルのようなロボットがまたどんどん超えていくのだ。

こうしたロボットは、手足の動きはまだまだでも、ソフトウェアが優れていて、流ちょうな会話がつたない身体の動きをカバーしてくれるようになる。とは言え、手足の機能も少しずつ進化していくので、われわれは1〜2年に一度ロボットを買い替えたりするようになっているのではないだろうか。

どの家にもタブレットがいくつかあるように、これからは使わなくなったロボットが何体か、クローゼットに入っているようになるのかもしれない。

アイパルを見て、もうロボットは大量生産の時代に手をかけているのだという感慨を深くしたのである。

*本連載は毎週木曜日に掲載予定です。