九州電力は11日午前10時30分、川内原子力発電所1号機(鹿児島県)を再稼働させた。原子炉の核分裂反応を抑える制御棒を段階的に引き抜いた。今後、徐々に出力を高めて9月上旬にも営業運転を開始する。東日本大震災に伴う東京電力福島第1原発事故の反省から、原発の安全対策の基準は大幅に引き上げられた。長期の稼働停止という経験がない事態を経て、日本の原発は約2年ぶりに再び動き出した。
運転を管理する中央制御室では、藤原伸彦所長以下23人の社員らが緊張した表情で再稼働に臨んだ。「制御棒を引き抜いてください」。当直課長の指示で運転員が盤上のレバーを操作し、まず4本の制御棒を引き上げて原子炉を起動させた。
川内1号機の再稼働は4年ぶり。瓜生道明社長は「これまで以上に緊張感をもち、安全確保を最優先に慎重に進める」とのコメントを発表した。
川内原発前には早朝から数百人の原発反対派が正門前に座るなどして抗議活動を行った。多くの警察官や警備員が取り囲む厳戒態勢の中での再稼働になった。
宮沢洋一経済産業相は11日の記者会見で「万が一事故が起きた場合は国が先頭に立ち、迅速な対応などが円滑に行われるよう責任を持って対処する」と述べ国の責任を強調。原発の必要性に関しては「エネルギー安全保障、経済性、地球温暖化対策の観点から重要。経済の健全な発展や国民生活の安定に不可欠と認識している」と説明した。
九電は徐々に核分裂の連鎖を増やし、午後11時ごろに核分裂が安定的に続く「臨界」に到達させる。14日夜から蒸気でタービンを回して発電し、電気を送り始める。トラブルを警戒して通常より慎重に出力を100%に高めるため、原発全体の性能を確認する検査を経て営業運転に移行するのは9月上旬になる。
東電福島第1原発の事故を受け、2013年に新規制基準が施行され安全対策は大幅に強化された。九電は川内原発1、2号機の安全審査を新規制基準の施行と同時に原子力規制委員会に申請。14年9月に審査に合格した。
今後は10月中旬を目指す川内2号機の再稼働を急ぐ。再稼働に向けた最終手続きとなる使用前検査を円滑に進めるため、1号機で検査に対応していた社員ら約450人を当たらせる。
川内1号機は11年5月に運転を停止した。約4年間という長期にわたって停止した原発を再稼働させるため、原子力規制委員会は3月末からの検査で、九電が新たに導入した安全対策を厳しく確認してきた。引き続き、予期せぬトラブルに備えて運転状況を注意深く監視する。
九電は再稼働前に福島第1原発事故と同様に全電源が喪失したと想定した大規模な訓練を実施した。規制委の更田豊志委員長代理は「最低限できているかどうかの確認だった」と話し、再稼働後も運用能力の向上の必要性を指摘していた。
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