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25話目 神樹
フィーガルさんは腹ペコキャラじゃありません。寝食忘れる天然キャラ…の予定です。
フィーガル老師改め、残念エルフ、フィーのために今、温室の隣の小屋で農夫テッドは料理の最中だ。
食堂に行こうと言ったが、時間外喫食の常習犯らしく、「グレアムが怒るからイヤ。」だそうだ。
…ふふふ、何故、農夫の修行に来て始めての作業が料理なのか…っ。
「…(ぐぅー)。」
…ええい、無表情のくせに期待感だけはしっかり伝わってくるとか、面倒な!
使うのは小麦粉、バター、クリームチーズ、フルーツ数種類、砂糖、以上!
バターを馴染ませたフライパンで水で溶いた小麦粉を薄焼きにし、砂糖加えたクリームチーズと、中庭の端にあったイチゴとメロンみたいな果物をカットしたものをのせる。…おまけで蜂蜜も少し垂らしてクルリと生地を巻く。…出来上がりだ。
・[手作りクレープ]
:手作り感溢れるクレープ。生地は厚く、クリームチーズに甘味が足りないのを蜂蜜で誤魔化している。フルーツも熟していないため、甘味がうすい。…しかし、不思議と味わい深い。
HP回復4%
ひとりで作った始めての料理(リアルでは経験あるよ?)だし、こんなものか。…てか、説明文にダメ出しくらってんだが…。
「…出来ましたよ。簡単なものですが、材料も設備も俺の腕前も足らないので我慢してください。」
「…そんなことはない。」
「はい?」
「貴方が私の為に作ってくれた。…それだけで価値がある。」
…、
…うん、嬉しいよ?…ただ、残念さを露呈する前に聞いてみたい言葉だっただけ…。
「(もぐもぐ)」
「…お味はいかがです?」
「美味しい。甘さ控えめのクリームチーズと蜂蜜がマッチしてる。」
…いや、それは狙った訳じゃないし。
「お腹、減ってたから、モッチリ厚めの皮も嬉しい。」
…いや、それも狙(ry
食べ終わったフィーは、皿を切なそうな目で(やはり、無表情ではあるが)見ている。
「…おかわりいるか?」
「お願いする。」
その後、クレープを更に2枚焼き、フィーの腹が満たされてから仕事の説明がなされた。 長い時を生きただけあるのか、フィーは多種多様な知識を分かり易く、丁寧に伝授してくれた。
実際に作業をしながら、手本を見せ、間違いはその都度指摘し、出来たら誉める。
山本 五十六の名言ばりの指導をしてくれたのだ。
フィーは残念エルフではなかった。やはり立派なエルフの賢(きゅぅ、ぐぅーーっ)…、残念な所がチャームポイントの賢者様なんだよ。うん。
…人は決して完璧にはなれない生き物だと思うんだ。
俺のあげた蜜カボチャをかじりながら歩くフィーの後ろについていく。なんでも、とても珍しい植物を見せてくれるらしい。
「その植物ってなんなんです?」
「…私が王家に請われて庭師…、正確には樹医をしている理由そのもの。」
じゅい、…樹医?
「庭師でなく樹医?」
「そう。」
「…病気の木があって、王家はそれをどうにかしたい?」
「…合ってる。」
連れてこられたのは中庭の隅にある目立たない扉。
「ここ。」
そう言って、さっと入っていくフィー。
後に続いて入るとそこは中庭にも引けをとらない広さの空間。しかし、芝に覆われたそこには一本の木しかない。
高さは10メートルほどだろうか?枝葉が多く、弱っているようには感じない。
フィーはすでに樹の下にいて、俺を待っている。
近くと、枝に一つ、小さな実が見えた。それは日本人なら見慣れた実で、パッとみてそれしか実がなってないのがおかしく見えた。
「…これ、梅の樹か?」
「ウメ?…違う、これは神樹。」
「…ん?真珠?」
「神の樹、神樹。」
神の樹、確かに普通の樹とは違い、プレッシャーのようなものがあるが…。
「神は、人間と獣人、妖精と魔族、その四種族に一つずつ神樹を与えた。」
「…この世界の神話か?」
「そう、神話。そして、事実。この樹、神樹〈霊香梅樹〉が証拠。」
「れいこうばいじゅ。」
「…この樹には万病を癒やすと言う霊薬の材料になる木の実がなる。」
「あれか?」
さっき見つけた実を指差す。
「そう。でも、500年前はもっと沢山実ったらしい。」
「ん?そうなのか?」
「…ん、今はあまり実がならない。少なくとも妖精族の神樹は元気だから、寿命とかではない。」
妖精族としての勘も、寿命ではないといっているらしく、何か、病気の類では…と、フィーも王家お抱えの魔術師や研究者も考えているらしい。
「神樹を救うのが私の仕事。」
…おー、かっこいい。エルフが樹に手をついて、決意の顔をするって…、絵になるなあ。
「えーと、で、俺に神樹を見せた理由は?」
見せただけ?それとも、自分の仕事を説明したかったのだろうか?
「テッドも大地や植物と関わる職業だから。」
ん?
「この世界の植物の最高峰を見て欲しかった。…この樹を癒せる程の人になれるように。」
なんと、そんな考えがあったのか…。
「…うーん、期待に応えられるかはわからないが、努力はするよ。」
「ん、…それでいい。」
一瞬、まったく似てないのに、フィーが師匠とダブって見えた。
…いやいや、ないって。あの最終兵器師匠と、この残念エルフ老師だぞ?ないわー。
「…そう言えば、ウメってなに?」
「ん?…ああ、俺がマレビトなのは知ってるだろ?梅ってのは俺らの世界の木だよ。神樹の実と似た、てかほぼ同じ実をつける。まあ、万病を癒せる霊薬?てのはつくれないが…。」
フィーは何か考えているのか、俯いている。
「……。テッド、そのウメと神樹、同じ物だとして、おかしな所を指摘して。」
「…、まあ、いいけど、専門知識がある訳じゃないから期待しないでくれよ?」
神樹をみる。
大木と言っていい大きさ、沢山の枝葉、少ない実。
ふと、リアルでの諺が思い浮かんだ。
神の樹なのに梅。
梅、美味しいですよね。鶏笹身のサラダ梅ドレverを食べながら梅酒とか…。いいよね!
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