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Another life online~ファンタジーな世界で最強の農家~ 作者:リアルチートが欲しい

見習い農夫編

24/119

23話目 宮廷料理長

料理回です。
「やあ、待たせてしまったね。私はグレアム・レインウォーカー、マリーシャ・レントの弟だ。」
「マリーシャ師匠の弟子でテッドと言います。こっちはセリーナ。よろしくお願いします。」
 師匠の弟さん、グレアムさんは眼鏡をかけた30歳ほどの男前の人だった。
 180cmほどの身長、肩幅は広くないが引き締まっているのがわかる細マッチョ。切れ長の瞳にかかった丸眼鏡が暖かい印象を与えていた。
 うむ、イケメンだ。宮廷でもメイド達をきゃーきゃー言わせてそう。

「そうか、姉さん達は楽しくやってるみたいだね。」
「ええ、元気にテリオスさんを尻に敷いてました。」
「…本当に変わらないみたいだね。」
 俺たちは暫く、師匠達の近況や、ここに来るまでの出来事を話していた。

「それじゃあ、明日からの事も話そうか。」
 その言葉に俺達は姿勢を正す。
「まずはセリーナ君だけど…。」
「はいっ!」
「いやいや、そんなにカタくならないでいいよ。…で、君たちはマレビトだから、普通の雇用が出来なくてね。」
 マレビトとは《Another life online》におけるプレイヤーの総称だ。異なる場所からの来訪者、と言う意味らしい。
「2人には入城許可証を渡すから、こちらに来たら城にきて欲しい。セリーナ君は私個人が雇った助手、と言うことにしてある。」
「…大丈夫なんですか?いろいろと。」
 たとえ宮廷料理長でも、勝手に人を城に、それも、沢山の人が口にする料理を作る調理場に入れられるのだろうか?
 あと、この国一番の料理人なのだから弟子になりたい人も多いだろう。そんな中に突然よくわからない奴が割り込むのだ。いろいろありそうな気がする。
「ああ、もろもろ含めて大丈夫だ。しっかり準備してあるよ。」
 どこにも文句は言わせないさ、と言わんばかりにニヤリと笑って見せるグレアムさん。…やべぇ、格好いい…!
「それで、テッド君何だが。」
「はい。」
「城の中庭の薬草園の管理をしている宮廷庭師のフィーガル・ユグドラル老師に君の事を頼んである。」
「…庭師?」 庭師ってあれ?植木を刈り込んだり、花壇の世話したりの?
「ああ、老師は所謂エルフでね。確か869歳と言っていたかな?王家からの信頼も厚く、貴重な薬草が多く植えてある城内薬草園をかれこれ三百年ほど任されているよ。」
 おお、老エルフ!あれですね、金髪緑眼の美人エルフに次ぐエルフのテンプレ、エルフの賢者ですね。わかります。
「農夫とは違うが、ただ農園で作業するより学ぶ事は多いと思ってね。」
 何というきめ細やかな配慮!面だけじゃなく心と行動までイケてるとか…。絶対モテてるな…、この人。城のメイド達から女性騎士までキャーキャー言ってる幻影が見える。下手すりゃ王族にもグレアムさんのファンがいるんじゃないか?
「どうだい?農園の方がいいなら、そちらを手配するよ?」
「いえ、そんな方なら是非ともお願いしたいです。」
 そう、森に生きるエルフ族であり、永く植物に関わってきた人物だ。是非とも会いたい。
「うん、それじゃあ2人共、それでいいかい?」
俺とセリーナは一度顔を合わせて頷きあい、
「「よろしくお願いします。」」
 深く礼をした。


「ふふ、それじゃあ少し待っていてくれ。君たちの明日からの活力になるよう、何か美味しいものを拵えよう。」
「あざーす!」
「あ、えと!ご馳走になります!」

 宮廷料理長の料理が食えるとか…。師匠とグレアムさんには大感謝だ。
「なにが出るのかね?」
「…すごく、楽しみです。ちょっとでも多くを学びたいです。…作業見に行っちゃ駄目ですかね?」
「大人しくしてなさい。」
「うー、…はーい。」


 それから30分ほどして…。

「お待たせしたね。こっちのテーブルに並べるから来てくれ。」
「了解です。」
「はい、…あの手伝います。」
「はは、大丈夫だよ。明日からは弟子だが、今はまだお客様だ。ゆっくりしているといい。」
 そういって部屋を出て行くグレアムさん。…うーむ、格好いい…。

「さあ、準備が出来たぞ。」「待たせてしまってごめんなさいね?」「いえ、大丈夫です。…すごいですね…。」
「ふぁー、いい匂い…。」

・[ギンスズキのムニエル レフォールソース]
 :水中で銀色に輝くギンスズキのムニエル。タンパクな白身に芳醇なバターの香り、西洋ワサビの鼻にぬける爽やかな辛みが舌の上で何とも言えない幸福感を与えてくれる。
 HP回復:35% MAT一時上昇〔強〕

・[金毛牛のローストビーフ]
 :金毛牛の旨味が凝縮したようなローストビーフ。最早、これだけで驚く美味さだが、金毛牛の肉汁とこだわりぬいた野菜を使ったグレイビーソースにより至高の逸品になっている。 HP回復:25% ATK一時上昇〔中〕 全属性耐性付与

・[沢菜とサラダフラワーのサラダ]
 :瑞々しい新鮮な沢菜とサラダフラワーのサラダ。シャキシャキとした食感と爽やかな味が肉や魚の料理を長く楽しませてくれる。
 状態異常回復 状態異常耐性付与

・[なめらかポタージュスープ]
 :グレアム厳選の最高の野菜とロック鳥のコンソメで作られたポタージュスープ。その味わいは王族すらヤミツキにさせる。
 MP回復:25% MDF一時上昇〔中〕

・[完熟ベリーのジェラート]
 :完熟した複数のベリーを使ったジェラート。極力、砂糖を使わずベリーの甘味で勝負した一品。 :MP回復:15% 火属性耐性付与


 ごくりと唾をのむ。師匠のボタン鍋と同じかそれ以上の料理達が並ぶ。
 ふとセリーナを見ると、爛々と輝かせた目で料理を見ている。…こわい。
「それじゃあ、食べようか。」
「そうね。待ちきれない子もいるし。」
「…ぅ、ごめんなさい。」
「はは、いやそこまで期待されるのは嬉しい限りさ。ご期待にそえればいいけれど。」
 と、言いつつも自信が読み取れる表情は崩さない。
「ふふ、それじゃあ、いただきましょうか。」
 エリカさんの言葉に俺とセリーナは姿勢を正す。
「「「「いただきます!」」」」

 まず、俺はローストビーフに手をつけた。ブラウングレイビーの照りと付け合わせのレタス(っぽい野菜)がローストビーフのピンクをより美味そうに見せる。
 薄く切られたその一枚を口に運ぶ。まず驚いたのはグレイビーソースの旨さだ。ぶっちゃけ、これだけをパンにつけて食べても旨い。 金を取れるレベルで。
 しかし、その驚きは肉を噛みしめた瞬間にさらなる驚きで塗りつぶされる。
 噛むごとに口の中に広がる肉の旨味、薄いのにしっかりした肉の歯ごたえ。硬いのではない、たとえステーキだったとしても噛み切れるであろうことを確信出来る。しかし、確かな“肉”の歯ごたえを感じたのだ。
 その肉を噛みしめるたびに肉からの旨味とグレイビーソースの旨味が混じり合い[金毛牛(こんもうぎゅう)]の旨味を一切損なうことなく味わうことになり、さらに、ソースの中の野菜の旨味、甘味が肉のポテンシャルを全開にしている。
 次に手が伸びたのはムニエルだ。
 ナイフを身に通すとき、僅かにサクッとした手応えをかんじた。横に添えられた白のソースと黄色のソースの内、白のソースの少量つけて食べる。バターの香りと風味がひろがり、スズキの身がほろほろと崩れる。ナイフを刺した時はしっかりした身だと思ったのに、凄く柔らかく、口のなかで簡単にほぐれた。そして感じる魚の旨味。肉とは違い、なんとなく丸みを感じさせる旨味がバターの風味でより優しい味になる。そしてソースだ。野菜と果物で作られたと思われるソースの甘味をバターがスズキに絶妙の加減で纏わせる。おそらく、バターがなければ、あまりあわない味に感じたのだろうが、バターがお互いの旨味の角を取ったおかげで、ベストパートナーに変化していた。そしてこのソース、ほのかにわさびと醤油の風味がする。この2つと魚の相性など、日本人には説明のいらない自明の摂理だ。
 メインの二皿を味わうと気になるのはサイドを固めるサラダとスープだ。
 サラダを、まずはドレッシングを使わずにそのまま食べる。シャクリとした歯ごたえ、自然な野菜の甘味。癖のない沢菜と、少々癖のあるサラダフラワーがただのサラダにはない“面白さ”をつくっている。…しかし残念なのは、沢菜に含まれる多量の水分が口の中を洗い流してしまったことだ。
 …しかし、考えを変える。口の中がリセットされたという事は、次の料理を他の料理に邪魔されないで楽しめるという事だ。
 もう一度ムニエルを、今度は黄色のソースで食べる。
 すると、先ほどは感じなかった表面に振られていた小麦粉の香ばしさ、ほんのり感じるペッパーの香りと辛味。そして魚の、丸みがあるなんてことはない、潮の香りと荒々しい海で育った魚の力強い旨味が口にほとばしった。
 ローストビーフの旨味が凝縮されたような味に惑わされ感じられなかった全てが今、やっと感じられた。
 次はポタージュスープ。
 一口すする。ふわっとした食感、滑らかなのどごし、メインはジャガイモだろうか?人参と空豆の風味も感じる。…しかし、それ以上がわからない。何がどれだけはいっているかわからないほど沢山の風味を感じる。
 それにもまして驚くのはコンソメだろう。自分でもよく使うキューブコンソメとは違う、力強い旨味。スープでありながらメインに引けを取らないこのポタージュスープは力強いロック鳥のコンソメ・ドゥ・ジビエが10数種類の野菜を、肉や魚に負けないメイン級のご馳走に仕立て上げていた。

 俺は適時、サラダや水を挟んで料理を食べた。ソースもスープも一滴も残さないようパンで拭って食べた。…途中、篭のパンを食べきり、エリカさんにパンのおかわりを持ってきてもらってしまうほどに。…食べ過ぎた。
 そして最後、ベリーのジェラートだ。
 シャンパングラスに盛られた濃い紅と紫の氷菓。添えられたらグリーンミントの香りが満杯のはずの胃袋を広げ、無理やりスペースを作る。
 そえられていた小さな銀の匙ですくい、口に運ぶ。
 強めの酸味と控えめな甘さが舌に優しい。メインのイチゴは甘く、紫色のブルーベリーと思われる部分の味わいは爽やかだ。濃い赤はクランベリーだろうか?酸味が強く、イチゴの甘さとマッチしてとても美味しい。
「こういうのはどうかな?」
 グレアムさんはグラスに白のスパークリングワインを注いでくれた。…なにこれ、シャレ乙…!
 一口、ワインとともに食べる。甘口のワインがジェラートと混ざり、ベリーの酸味が不思議と甘さを引き立てる。冷たいからか酒精はあまり感じないが、それなりに強いのか、胃が少し熱をもったように感じた。
 グラスに最後に残ったのはジェラートの溶けたスパークリングワイン、まるでロゼのようになったそれを飲む。甘い野苺のような風味が、料理を全てたいらげた俺の胃に染み渡り、熱になって、ほっと満足げなため息がでた。

「満足していただけたかな?」
「…もう、なんて言ったらいいかわからないんでシンプルにいきます。」
「うん?」
「すげー美味かったです。もう、大満足。ご馳走様でした!」
「…はは、掛け値なしに最高の誉め言葉だよ。訳知り顔した貴族どものお褒めの言葉なんかより、よっぽど心にしみる。」
 まるで子供みたいな嬉しそうな笑顔を見せるグレアムさん。
 …くそぅ。グレアムさん、マジ、イケメン。

「お?セリーナも食べ終わってたのか?美味かったなぁ。」
「え!?…あ、はい!凄かったです!」
「ん?どうした?」
「…い、いえ。」
「ふふふ、セリーナちゃんはテッド君よりさk…。」
「わーっ!わーっ!!エリカさんダメーーーッ!!」

 …うむ、理解した。言わぬが花だな。
一気に料理を出しすぎた…。
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