ピケティ理論、日本の債務問題に強い影響力=伊藤元重氏

Zuma Press
フランスの経済学者トマ・ピケティ氏

フランスの経済学者トマ・ピケティ氏の影響力は、日本政府の財政赤字削減計画にも及び、同国の巨額に上る債務の増加は止まるのだろうか。安倍晋三首相のアドバイザーの1人はそうなるはずだと予想している。

一見すると、ピケティ氏の学説は日本にはあてはまりそうもないように思える。同氏が30カ国の歴史的な所得動向をまとめた「世界最高所得データベース」によると、日本の所得格差は近年、横ばいか、もしくは縮小しているようだ。

だが、ピケティ氏が著書「21世紀の資本」の後半部分で取り上げた巨額の政府債務の問題は、まさに日本が抱えているものだ。その点に伊藤元重東京大学大学院教授は注目する。伊藤氏は、安倍首相主宰の経済財政諮問会議の民間議員を務めている。伊藤教授はこのほどロンドン滞在中にウォール・ストリート・ジャーナルとのインタビューに応じ、ピケティ氏は日本の経済論壇に「極めて強い影響を与えている」としながらも、「日本は彼が著書で取り上げている世界とは大きく違っており、所得分配という点ではもっと平等である」と指摘した。しかしだからといって、ピケティ氏が提唱する富裕税は日本には関係ないというわけではない。

伊藤氏は、ピケティ氏が巨額の政府債務は緊縮財政、インフレ、ないしは富裕税によってしか削減できないと結論付けていることに引き付けられた。伊藤氏は、「おそらく、それら3つの組み合わせが必要になるのだろう」とした上で、「財政緊縮は極めて重要だが、それだけで巨額の債務を減らすことはできない。ハイパーインフレではないインフレも必要だが、2%で十分かどうかについては論争の的となっている。第3の富裕税は現在論議されていないが、やがては検討せざるをえなくなろう」と話した。

伊藤教授によれば、日本では富裕税や資産税はこれまでそれほど注目されてこなかった。というのも、歳入増加策の議論は消費税の追加引き上げに集中していたからだという。消費税の追加増税については、安倍首相が昨年に2017年に延期することを決定した。伊藤氏は「おそらく近い将来富裕税をめぐる議論がもっと関心を呼ぶようになるだろう」と予想する。
日本は、公的介護を必要とする高齢者が着実に増加を続ける一方、労働人口は減少しているため、財政健全化は困難な闘いになるだろう。新たな歳入増加策が出番を待っているのかもしれない。

原文(英語):Piketty a ‘Strong Influence’ as Japan Eyes Debt
http://blogs.wsj.com/japanrealtime/2015/02/12/piketty-a-strong-influence-as-japan-eyes-debt/

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    • ピケティ氏の本はこれから読むとして、こういう”御用学者”はある特長がある。まず真っ先に論評を加え、慎重にやんわりと内容を否定し、たくさんのピケティ本の解説が出てくるように、最初に方向付けをしてしまうと言う作戦だ。
      だからまずたくさん出てくる解説本や御用学者の解説などは聞かないほうが良い。ダイレクトに本から読み取る印象の方が大切なのは言うまでもない。予断を持たずに読む人と、さんざん批評文を読んだ上で読む場合は、どんな作品でも論文であろうと受ける影響は変わってしまう。しかも翻訳されてる時点ですでにダイレクトでは無いと言う小さなバリアーが存在するのに。フランス語→英語→日本語という過程で翻訳されてる。