週刊通販生活トップページ  >  読み物:こちら東京新聞原発取材班:あなたの原発に関する素朴な疑問にお答えします‐第22回

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 昨年、電力会社が突然、再生可能エネルギーの受け入れ(買い取り)を一時中断すると言い出したニュースは、読者の皆さまの記憶にも新しいと思います。せっかく再生エネの導入の機運が高まってきたのに、出鼻をくじくような話でした。その後、政府は事態を収拾するため、一応の対策を練り、電力各社は受け入れを再開することになりました。しかし、よくよく見てみると、相変わらずの原発重視で、本気で再生エネを普及させる気があるのか、と疑わずにはいられません。

太陽光に厳しい政府の“対策”。

図提供/東京新聞(以下、特に明記のないもの同)

 まずは、政府が示した電力会社別の太陽光発電の受け入れ可能量や対策をご覧ください。正しいかどうかは別にして、政府はこういう考えでいる、とだけご理解ください。
 「認定量」というのは、国が太陽光発電の設備を造ってよいと認定した定格出力の合計です。「受け入れ可能量」というのは、電力需要のうち太陽光に振り向けていいだろうと政府が試算した値です。ほとんどの電力会社管内で、認定量の方が受け入れ可能量を上回っているとの計算になっています(東京、中部、関西の3電力は、電力需要の方がずっと大きいので載っていません)。

 あまりにも電気が余ってしまうと、電気の流れが乱れて大停電を起こすかもしれない、として、経済産業省が1月下旬に対策をまとめました。
 最大のポイントは、これから参入する太陽光の事業者(家庭も含む)は、電力がだぶつきそうな時は、電力会社が遠隔操作で太陽光の発電施設に発電を抑制するようコントロールできる――との内容です。
 これまで、発電した電気は基本的にすべて買い取ってもらえたわけですから、大きな転換です。太陽光が活躍できるのは陽の光がある日中だけなのに、その時間帯に出力を抑制されると事業者にとっては死活問題です。抑制された分の金銭補償もありません。
 発電しても買い取ってもらえないことになれば、これから再生エネに参入しようという人の意欲が失われてしまいます。事業計画が不透明になれば、金融機関も再エネ事業者への事業資金の貸し出しを渋ることも考えられます。いずれにしても、太陽光にブレーキをかける“対策”であることは間違いありません。

政府試算のカラクリ。

 では、政府の試算とそれに基づく対策は正しいのでしょうか?
 どういう試算をしたのか、政府の出した資料をよ~く読んで図にまとめてみました。

 ここでいう「総需要量」は、最も電力需要が少ない5月のものです。太陽光の発電量もこの時期が最も多いので、電力の需給ギャップが最も大きくなるとしてこの時期が試算の対象になりました。
 「太陽光の狙い撃ちだ!」と怒る方がいらっしゃるかもしれませんが、課題をあぶり出すため、最も問題になりそうな時期を選ぶこと自体は正しいと思います。
 でも、どうやって受け入れ可能量をはじき出したのか、試算を詳細に分析していくと、何と各電力会社が保有する全ての原発がフル稼働していることが大前提になっていました。水力や火力なども含めて総合的に検討したようなことが書かれてはいましたが…・・・

 「総需要量」-「全原発の発電量」=「受け入れ可能量」

 つまるところは単純な式でした。原発を過大に見積もり、太陽光の受け入れ余地を小さくしていたのです。
 政府は原発を「ベースロード電源として活用」する方針ですから、政府が原発を優遇しようとするのは分かります。でも、

・廃炉かどうか判断を迫られている40年超の古い原発
・使用済み核燃料プールの空きがほとんどなく数年しか動かせない原発
・新しい規制基準を満たしていない原発
・直下に活断層があり、再稼働できない原発
・まだ完成していない原発

 これら全部がフル稼働していることが大前提になっています。これはいくら何でもあり得ない話です。せいぜい九州電力川内1、2号機(鹿児島)、関西電力高浜3、4号機(福井県)とほか数基くらいを試算に入れるのがエチケットだと思います。太陽光発電を追い出すためかと思われても仕方のないようなことをするから国民に信用されないのです。

ようやく始まる揚水発電の活用。

 ただ、政府の試算や対策にも、将来のエネルギーに資するとても重要なことがいくつか盛り込まれました。まず注目したいのは、これまで原発とセットで語られてきた揚水発電を、再生エネの受け皿として使おうという施策です。
 揚水発電とは上下に二つの貯水池があり、電気が余った時はポンプで下の池の水を、上の池に水を送り、電気が足りなりそうな時は上の池の水を放出し、その力で発電するものです。

図提供/共同通信社

 太陽光や風力の最大の弱点は発電量が安定しない点で、何とか蓄電池と併用できないかという議論がなされてきましたが、残念ながら大容量の蓄電池は高額で、まだ普及期には来ていません。
 蓄電池の役割を、揚水発電に担わせ、太陽光の弱点を補おうという発想です。巨大な蓄電池に見立てたわけです。国内には揚水発電所は40ヵ所以上あり、総出力は2600万キロワットと世界最大規模です。これだけの設備を持ちながら、ほとんど利用されず(一昨年度の利用率は3%程度)にきました。これが再生エネを普及させるために使おうという流れは大きな前進と言えます。

ほかにも手はある。

 ほかにもやれること、もっと取り組むべきことがあります。「連系線」と呼ばれる電力各社間をつなぐ送電線をもっと活用、拡充することです。
 例えば九州では、認定された太陽光が全て稼働し始めると、九州だけでは消費しきれないかもしれません。でも東京や中部、関西の管内はまだまだ再生エネの受け入れ余地があります。連系線のネットワークで、日本全体で再生エネの受け入れ量を増やしていくことができます。
 現在は、前日までに「これだけ送る」ということを電力会社間で調整する必要がありますが、柔軟にいつでも連系線を使えるようルールをあらためることが求められています。
 蓄電池にしても、現在はコストの問題がありますが、技術は日進月歩です。日本では、液体中のイオン還元を利用した「レドックスフロー電池」という次世代電池の開発が着々と進んでいます。技術的にはすでに実用化されており、原理は単純なもので、タンクの中の液体に電気をためるものです。安価で安全な電解液のめどがついたことで、数年以内に生産コストは現在の十分の1以下にまで下げられる可能性があるそうです。
 近く北海道で、大規模な太陽光や風力とセットで運用し、実際に送電する実証実験が始まります。これがうまくいき、普及していけば、雨でも夜間でも必要な時に送電することができ、もはや「出力が安定しないから、当てにはできない」とは言えなくなります。立派な主力の電源に育つ可能性を秘めていると思います。
 日本では「世界一」がもてはやされるのに、なぜか再生エネの話になると、財界を中心に「後進的」でもいいことになってしまいます。再生エネの導入量はどんどん世界に置いていかれています。安全性や核のごみの問題がある以上、もはや原発が夢のエネルギーでないことは明らかです。いつまでも「安い原発の電力がないと…」では、それこそ日本が衰退してしまいます。

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