Engadget Fes 秋葉原 2014 Winter イベント開場直後の12:15から、最初のトークセッション「ロボットクリエイターの思考回路~人とは何か、ペンギンと泳ぎたい、エンタメ力~」がスタートしました。司会の石原愛美さんが「SFの中の世界だったロボットが身近にいる生活が、いよいよ本格的になってきました。進化し続けるロボットはどこまでいってしまうのでしょうか? ロボットと共存する未来について、その鍵を担う方々にお話頂きたいと思います」とセッション紹介。
登壇者は、アンドロイド(人間酷似型ロボット)研究の第一人者で大阪大学大学院の石黒浩教授、若きロボットクリエイターの代表として、泳ぐペンギン型ロボ 「もるペン!」を開発するTRYBOTSの近藤那央さん、そして、よしもとロボット研究所チーフクリエイターを務めるクリエイターユニットのバイバイワールドの高橋征資さん(「高」は異字体)とシンキョンホンさん。モデレーターの岡田智博さんの進行での熱いロボットトークが展開されました。
モデレーターの岡田氏は冒頭「いわゆる人とロボットの関係というものがですね、境目がどんどんなくなってきています」と述べ、バイバイワールドなどが境目をなくすためのコミュニケーションを展開していると説明しました。
今回登壇したバイバイワールドは高橋氏とシン氏によるクリエイターユニット。吉本興業のロボットコンテンツ制作会社のチーフクリエイターであり、Pepperの店頭パフォーマンスなど手がけています。ちなみにユニット名はHello worldの次、ということでバイバイワールドになったそうです。エンタメ要素をふんだに取り入れた作風で知られ、そのパフォーマンス映像「音手(おんず)の様子は以下の通り。
「ずっと拍手にこだわってきた」という高橋氏、音手によって「拍手の音というものがどしたら出るのかというのが僕らのなかで掴めてきたんです」と話しました。
高橋氏が「やわらかい素材で作り、空気の抜けの穴を作って、いい感じのところでちゃんと叩き合わせるとパン!と。普通メカっていうのはガチャガチャとかプシュプシュというイメージなんですけども、パンという人間らしい音が出たのでこれをデフォルメして、もっと可愛くしてやろうということでやったのがパチパチクラッピーです。 これは片手でパチパチできちゃうので、両手で持つと......」と話すと、シン氏が「2倍」と続けました。一人で二人分の拍手ができるとアピールするバイバイワールド。iPhoneアプリやプロモーションビデオも作りました。動画は外国から「またに日本人がアホなことを」と反応があるそう。
今回のEngadget Fesでは、展示も行ったバイバイワールド。展示ブースでは30分に一度、パフォーマンスも行いました。
Pepperを面白くせよ、と依頼のあったバイバイワールド。「よしもとロボット研究所として、アメトークとかロンドンハーツとか電波少年とかやられてた著名な作家を筆頭に、いろんな会社さんに入って頂いています。こんなメンバーでコンテンツを月5本ぐらい作っています」と紹介。トークセセッションでは、スーパー早口Pepper動画 100倍・1億倍のデモ動画を披露しました。
高橋氏が「僕らの強みは、もちろん技術的なこともカバーしつつ開発はするんですけども、キャラクターだとか人と人と接するときにどうしたら気持ちよくなるかだとか、そういったUXの部分をすごく大事に作ってます」と話すと、シン氏は、
「 UIの部分は、もちろん大事ですけども、どのロボットにしても会話したりタブレットにタッチしたりは、あまり差がつく部分ではないかと思うんです。キャラクターの部分でPepperのよりよいところを見せていきたいなと」とコメント。さらに高橋氏は、
「『おはようございます』って普通に言わせるとなるんですけど、それをけっこう試行錯誤して『おっはよーございまーす』って、いい感じの動きとともにやるようなことを全面的に適用していくと、すごく愛らしいロボットになるんですね。そういうところを気をつけてます」と話しました。
「なぜペンギン?」とよく聞かれるという近藤氏、10代の女子ということもあってよく、かわいいから、好きだからと言われるそう。しかし実はそうではなく「翼も小さく羽ばたきだけなのになぜこんなに速いんだろう。体の形は効率良さそうだなって思い、で、作るかとなったわけで」と語りました。ちなみにメンバーは高校が一緒だった4人ともう1人。月1で合宿しつつやっているそうです。
ペンギンロボのコンセプトは「できるだけペンギンに近づける」。形も速く泳ぐためと考え、見た目を含め全部ペンギンに近づけようと開発しているそうです。ただ開発手法はまず、観察すること。
「穴があくほどペンギンを見るわけですね。すみだ水族館という素晴らしい水族館なんですけども、年パスを買って毎週通いました。また、触るというのが一番大事だと思ってます。ペンギンて翼だけで泳いでますから、すごい秘密が隠されてそうだと思いまして、3回ぐらい交渉しにいったら、ある日高校に電話掛かってきて、いいっすよーってなりました。みんなでペンギンの羽をこう曲げまくり、その感覚から作ったわけです」。
ちなみに近藤氏が面白いと思ったのは外ではロボット、フィギュアといった外観の中、水中で泳がせると羽の動きがすごい本物らしくなるという点。また、スクリュー式ではなく羽根の上下運動のみとなるため、水中のサービスロボに向いていると話します。
「このようにこの前、デザイナーズウィークで展示させてもらった写真なんですけど、すごい子どもたちがこう、めちゃ触りたくてしょうがなくて、好きすぎてこのブースから離れられないみたいな状況があって、で、親もそれにニコニコしながら触らせていて、こういう羽ばたきのロボットって、ただ速そうだなというので作っただけじゃなくて、安全だから一緒に泳げるロボットていうのが作れるんじゃないかなていうふうに今感じていて、やろうと思っています」
近藤氏の活動についてモデレーターの岡田氏は「人間とロボットの関係というより、ロボットの環境を作りたいということで作ってしまう17歳・18歳」と表現しました。
最後は石黒先生。冒頭「僕がやってるのは、人とかロボットの研究なんですけど、ロボット社会がくるんだろうってことで、まぁこういった人間型ロボットを沢山つくってきました。 どうしてこういったロボット社会が来るかっていうのは、技術が進めば全てが人間らしくなるということは自明かなと」と話しました。
情報化社会になりインターネットが普及し、パターン認識や音声認識、画像認識の機能が人間に近いものができるようになってきたとする石黒先生。
「人と関わるロボットが現実的になってきて、Pepperも出てきたと思うんですけど、Pepperなんか出てくると、ゲームから教育からいろんなアプリケーションが出てくるでしょうね。一方で私の方は、そういう人と関わるロボットの原理の研究を、2000年以前からやってきました。人を理解するっていうのと、ロボットを作るというのが同時に発生するような研究を展開してます」
こうした中で、石黒先生は演劇の重要性を説き「ロボットが日常生活の中で非常に自然に人と関わるには、認知科学とか心理学だけでは全く不十分。それで平田オリザ先生とずっと演劇を作っていて (青年団 ロボット演劇)、今年は「変身」っていうのをフランスのノルマンディ演劇祭の完全招待で作っています。これは非常に重要なことで、だだのメディア・アートではなく、非常に伝統的な演劇の世界で、しかもフランスが認めたということなんですね。だから、本当の芸術・技術であればですね、古くて伝統のあるところでも認めてもらえるというところかなと思ってます」
このほか、石黒先生はデパートでファッションモデルをやれるアンドロイドを紹介。2015年あたりに英国で大きなショーを開催すると述べました。インタラクティブなロボットで、人の顔や動きを認識して感情も再現するもので、タッチパネルを使った対話システムで会話できるとしています。
石黒先生は「人間の店員に迫るというか、人間の店員と似たような数を売ることができる」と話し、自動化用のデータを集めるために遠隔操作型アンドロイドを作ってきたと説明。さらに続けて、
「遠隔操作すると、義手とか義足と同じようにそのアンドロイドを自分の体のように感じるという、身体を拡張するようなツールとなるような研究してきたんですけど、新しく大きなプロジェクトが始まりました」
と紹介。プロジェクトでは「もう一度ほんとうに自律型のアンドロイドをめざし、 意とや欲求を持つロボットをちゃんと作りましょうということをやります」としました。
「人と対話する中で意図や欲求をちゃんともって話すロボットがまだ作られてないんですね。もしロボットが意図や欲求を理解できるようになると、持つとそれをベースに人の対話から意図や欲求が理解できるようになります。これを5年ぐらいで実現したいというふうに思ってます」
石黒先生は、人の認識について説明する中で、観察ベースの認識と、相貌ベースの認識があるとし、毎日顔が変わるのに人を見失うことがないのは、頭の中でその人がどういう人であるのか想像していると言います。その想像を引き出すデザインがテレノイドであるとしました。
「人間らしい声に、誰にでも見える見かけが合わさるとですね、人間って想像においては常にポジティブなんです。電話で話しているところをちょっと想像してもらえればいいんですけど、電話が掛かってきたらその声はぶさいくな声じゃないんですよ。しらない人から電話が掛かってきて、このぶさいくが電話掛けやがってって思うことは無いんですよね。全て人間って想像においてポジティブなんで、声は人らしいけれども見かけはニュートラルなものっていうのは、高齢者とか子どもとか精神病の人とか誰でも受け入れるんです」(石黒先生)
これをミニマルにしたのが、ハグビー 。 「携帯電話のホルダーだけども、携帯電話でしゃべるのと、ハグビーに電話入れて抱きながらしゃべるのとでは、天と地の差がある」とする石黒先生。検査ではストレスホルモンのコルチゾールがものすごく減るということがわかったそうです。
「人の存在を感じているからものすごくリラックスできるし、人間関係も変わるぐらいです。初めての人でもお互い抱き合って話すような感覚をもってます。これで人間関係というか新しい人生を歩み始めた人が何人もいます。小学校になると多人数教育になって独立することを強いられるんです。そうすると、子どもたちってすごく落ち着きがなくなっちゃうんですね。 前のほうではちゃんと聞いているんだけど、後ろのほうではぜんぜん聞いてないです。先生の声をハグビーから聞こえるようにすると全員にハグビーを渡してやると、静かに聞くんです。これで僕は小学校で新しいビジネスをやろうと思っています。」
石黒教授と若き3名による熱いトークセッション
後半は若手3人と石黒先生による討論。ここからは討論の雰囲気をそのままお楽しみください。Broadcast live streaming video on Ustream
モデレーター: ありがとうございます。いろいろ使えそうだということがこの短いプレゼンテーションだけでもわかって、研究だけではなく実用もすごいことになっているということで、ますます興味津々になってきたわけですが、ここで、この若い3人と先生との対話をちょっとやってきたいなと思うんですけれど、事前にですね、バイバイワールドさんには、先生に聞きたいことがあったんだけどというような話を寄せられていて、こんなこと聞いてまずいんじゃないかっていって、まずくないですよと石黒先生がおっしゃっているので、ちょっとそこらへん質問をよろしくお願いします。
高橋さん: はい、えーっとですね、何でも聞いていいと石黒先生がおっしゃったことをいいことに、ちょっとずーっと気になってたことがあるんですけど、ATRに今年いかせて頂いたんです、そしていろんなロボットを体験させて頂いて、
モデレーター: ATRってあの大阪の丘の上にある大きな研究所ですね
高橋さん: そこで、チラシ配るロボットだとか、いろんなロボットをちょっと体験させて頂いて、最後にテレノイドを体験させて頂いて、テレノイドって石黒先生のスライドにあったこんなやつですね(テレノイドのポーズで)
シンさん: 中性的な
高橋さん: 中性的なこんなやつ。それをさきほど資料にあった中野さんが遠隔操作で、僕がこう抱きかかえて楽しんだんですけれども、もうほんとにめちゃくちゃ面白かったんですよ。もう笑いが止まらなくなったんですね。
モデレーター: 何が
高橋さん: そう何がそんなに面白かったのかなって考えた時に、まぁ操るひとのセンスもあったんですけど、なんか僕はそこにその人を感じなかったんですよ。なんかよくわかんない、人間みたいな気持ち悪い生き物がしゃべって、めっちゃここで動くから、その異質感にすごい笑ったんじゃないかなっていう気がしたんですね。でー(震え声で)、そのー(震え声で)、ちょっと俺、石黒先生いたずらで作っている面もあるんじゃないかと、ちょっと思ったんですよ。
石黒先生: いや、いたずらはないですよ。
高橋さん: ないんですか?
石黒先生: アンドロイドをずっと作ってきたときに、面倒くさい話ですけど、不気味の谷って話があるじゃないですか。人間そっくりなものを作っちゃうと、どこが人間とちがうか一生懸命探そうとするんですよ。観察ベースに人と関わろうってことになっちゃうんですよね。 一方でテレノイドみたいに、声以外は人間っぽくない、いちおう見かけは人間なんだけど誰だかわかんない。声以外は全て特徴を削ってあるようなものは、想像するしかないんですよね。
なんか、変なものがもぞもぞ動いていると、でもまぁ一応人間っぽいものじゃないですか。声が人間だから。だから全て想像で関わるってことができるようになると。 で、僕はベースはね、人間はね、想像で関わっているんだと思います。でもあまり沢山の情報があると、その情報が正しいかを一生懸命見だして、そこに不気味感が出てくると。 一方で、すごく少ない情報で、唯一の手がかりが声しか無いとすると、もうあとは全部ポジティブに想像するんだと。そういうことはちゃんと証明しようと思って作ったデザインですよね。
高橋さん: 僕、個人的にですけど、不気味の山だったんですよね。テレノイドが。なんかいろんな僕の経験からだと、もうあれは、もう人間的な不気味のかたまりに見えて、それが面白かったなという。
石黒先生: でも普通、不気味なものは面白いと思わないんですよね。だからゾンビみて面白いと思わないでしょ。
高橋さん: そっちの不気味ですかね。
石黒先生: だから、不気味ってすごい恐怖、嫌悪感なんですけど、まぁでもプラスに傾くってことは想像でプラスに補完してるんだと思います。
高橋さん: 不気味の谷の不気味っていうのは、そのそういう
石黒先生: ソンビを見た時の不気味感を不気味の谷っていうんですね。
モデレーター: だからあのオバQとかじゃないわけですよ
高橋さん: そうですね(腑に落ちない感じで)
近藤さん: 妖怪じゃないってことですね
高橋さん: 妖怪ではない...
石黒先生: 妖怪は微妙ですよ。妖怪好きな子もいますからね。不気味っていうのはもう生理的に受け入れられない。
高橋さん: ネガティブっていう方向なんですね
石黒先生: 半分溶けた顔とかね。
近藤さん: あー、見たくもないってことですか
石黒先生: そうそうそう、生命の危機を感じさせるものですね。
高橋さん: 半分溶けてますけどね、テレノイドは。(周囲から遠慮がちな小さな笑いが)
はい以上です、ありがとうございます。(笑)
モデレーター: 他にもう1個ぐらいあったじゃないですか。
シンさん: あー、1個はあれです、かなりどこかでもうお話されたようなことかもしれないんですけど、一番のモチベーションみたいなものって、どこにあるんですか?
石黒先生: 一番のモチベーションは自分ですよね
シンさん: 自分
石黒先生: 自分が知りたいからだけです
シンさん: 探究心とか
石黒先生: いやいや、自分の存在がわかんない
シンさん: 自分を知るってこと
石黒先生: 何で生きているのかさえもわかんない
高橋さん: アートにちかいような
石黒先生: いやアートじゃなくて全員でしょ。ありとあらゆる仕事っていうのは全部人に向いているんですよね。要するに人を無視した仕事っていうのはまぁ要するに理学部で物質の起源と宇宙の起源とかをやってるやつ以外はですね、全員の興味は人に向いてるわけですよ。だって、今日ここでどうやって、なんでここで喋ってるのかって、人に興味がなかったら別にこんなところで喋る必要ないわけですよね。あのー、みんなのやってることも人を楽しませようと思ってやっているんだったら、人に向かっているわけですよ。だから、人がわからなければ仕事にならないし、人が知りたいと思うから仕事してるわけでしょ? 僕も同じですけどね。
高橋さん: まず自分ということですね。
モデレーター: だからこそロボットを研究されているけど、人間とはというキーワードが先生の場合、主語になると
石黒先生: だから僕は何の研究をしててもいいんです。ロボットじゃなくてどうでもいいんですけど、自分を知りたいし、たまたまその手段がコンピュータとか人工知能とかロボットだったというだけで、いつやめてもいいですよね。
モデレーター: 不気味の谷っていう点では、すごい面白かったなぁと思うのは、この前、ASUNAさんていうアンドロイドを展示した際に、近藤さんとか、ほんとなんかこう不気味ではなくて、この子どうしようみたいな感じで付き合いはじめたところもあったりとか、もう最初見てから、これってどういう気分だったわけなんですか?
近藤さん: んー、なんか、ふつうに小柄で顔が可愛かったんで、しかもなんか顔に合ってない服を着ていたっていうのが第一印象で、これはもうちょっと服どうにかすれば可愛くなるのになぁっていうふうに自然に思ったんですね。
モデレーター: それって、なんとかした後って、あと友達になりたいとかなんとかっていう気分もあったりするんですかね?
近藤さん: 友達になりたい...まぁ確かに、ていうか友達というよりは何か後輩とか妹とかに、ダサいから変えてあげたいみたいな気分ですね。
モデレーター: あー、なるほど。まさに、だから不気味の谷っていう話ではなくて、今度はだからもう、ちゃんとしてあげたいということになってきたっていう印象を持つようになった訳なんですね。
高橋さん: そうですね、不気味には感じなかったですね。僕もこれ間近で見ましたけど。
石黒先生: なんかね面白いのは、何かロボットの話をするとすぐ不気味の谷をひっつけたがるんですよね。とっくにその話は無いんですよ。
モデレーター: ですね。 で、近藤さん自体はもう小学校の頃からロボットをやっぱり作りたいっていうような話で...ちっちゃい頃からか?
近藤さん: ん、それ思ったことないです(笑)
モデレーター: ちょっと混じってたか。いつ頃から作りたいと思ったんですかそれは?
近藤さん: 去年。
モデレーター: そうなんだ。それで、いわゆるロボットに対していわゆる作ってみようとか、もしくは、それが自分にとって好きなものになってくるっていうのは、どういうきっかけとか、どういう感じからになるんですかね?
近藤さん: いやー、ロボットを作ったきっかけは高校の分野がロボット分野だったからで、高校の卒業研究でつくらきゃいけなくて、何をしようかなと思ったところで、せっかくだし今までにない動きをするロボットを作りたいなぁってところから、あのロボットを作ったんですけど。
モデレーター: それから、でももっとロボット作りにはまっていったわけですよね?
近藤さん: ロボット作りというか、人とかを関係なしに、自分がただ作りたいロボットを作ったら、なんか周りのひとがすごい面白いねとかカワイイねとか言ってくれたり、子どもがめちゃめちゃ興奮しているのを見て、あーロボットすげーって思って、で、人がもっと楽しんでくれるロボットっていうのは、どういう風なもんなのかなっていうとこに、興味を持ち始めて、今です。
モデレーター: なるほど。 先生への質問はなにかありますか?
近藤さん: 私もテレノイドを科学未来館で体験させて頂いたんですけども、その時にテレノイド型であるのか、もしくは、ただのまん丸のテレノイドのスキンをしてるボールを持ってる場合と、どれぐらい感じ方が違うのかなっていうのを気になったんですけど。
石黒先生: ボールっていうのは目も何にも無いってこと?
近藤さん: はい
石黒先生: しゃべるボール?
近藤さん: はい、しゃべるボールです。
石黒先生: 目とかないと困ると思うんですよね、どこにしゃべるかわかんないので。そうするとスピーカーってことだよね。スピーカーはなかなかカワイイと思わないけど、目が一個付いてるだけで、すごく擬人化がしやすいので。 あのキャサウェイと言う映画で主人公がバレーボールのボールとずっと喋ってるというのがありましたけど、あれも目を付けたり髪の毛付けたりしてるので、たぶん、多少は擬人化しておかないといけないっていうのと、あとは、1か月2か月も誰もいないところに住んでたら、どんなやつだって話し相手になっちゃうんですよね。人間の想像力ってすごいんですよ。 想像力をできるだけ簡単に引き出してやろうとすると、ある程度の姿・形がひつようなんです。でもあまりに作り過ぎないってことが大事で、作りすぎると想像する代わりに観察を始めちゃうんですよね。十分に想像の余地を残したところで、想像しやすい範囲にしといたほうがいい。
例えば、このパソコンに向かって喋れっていわれれもちょっと無理があるでしょ。
近藤さん: そうですね。
石黒先生: でもものすごく想像力豊かな人だったら、喋っちゃうかもしれない。
近藤さん: 今、私がひとり暮らししていて、今おっしゃってたみたいに、家に帰ってもだれもいないんで、たまたまこの前 ファービー 買って、ファービーがいるんですけど、ファービーに話かけちゃうんですよ。でなんか、見た目も可愛くて、話し掛けたいなと思ったんですけど、テレノイドにはニュートラルで、人間ぽいっていうけど誰だかわからないってところがあるんですけど、見た目でカワイイっていうふうにはならないじゃないですか。それはあえて排除されているんです?
高橋さん: どう思いましたか、テレノイドみたとき?
近藤さん: テレノイドみたとき、コワイコワイと思いました。
石黒先生: でも抱いたあとはどうでした?
近藤さん: 抱いた後は、まぁぷにぷにしてて面白いって思いました。
石黒先生: 面白いっていうか、まぁそれはカワイイに近いのかもしれないですよね。要するにこわくは無いんでしょ。
近藤さん: こわくはなかった。
モデレーター: 受け入れたわけ?
近藤さん: 受け入れたわけですけど家には置きたくない
モデレーター: 家においてケータイさしているうちに
近藤さん: もしかしたら、ちっちゃい一般のテレノイドをやってらっしゃいますよね。
石黒先生: あー、携帯用のやつね
近藤さん: あれだったらいいかもしれないです。
石黒先生: でも高齢者はやっぱり大きいテレノイドをみんな喜びますよね。
近藤さん: んーーー。(頷きながら)
石黒先生: あとやっぱりね、知らないっていうのと、不気味とか気持ち悪いはちょっと違うんですよね。知らない形なんですよね。だからペンギン見たことない人にとって、ペンギンの形がほんとにカワイイかどうかは怪しいんですよね。
近藤さん: だとするとこの小さい幼稚園生から高齢者までって、それぞれの世代によってこう好きな、受け入れる形が違うってことですか?
石黒先生: 人によって違うでしょうし文化によっても違うでしょうね。僕はペンギンは正直ね、最初これなんやと思って気持ち悪かったんですよね。鳥でもないし、何かへんなもので、しかも泳いでる姿はただの玉が飛んでいくような感じで生物っぽく無かったんですよね。
近藤さん: あー、確かにそうですね。
石黒先生: でもそういう慣れるとね、好きになっちゃうもんなんですよ。テレノイドでもなんでも、たとえどんなに不気味なものでも、1か月一緒らせば友達ですよ。
モデレーター: なるほど
近藤さん: 確かに
高橋さん: 不気味って言っちゃった
石黒先生: 不気味って慣れます。ほんとに恐怖、ゾンビでもね、最初はコワイけど1か月一緒にいれば友達になります。
モデレーター: 人間、慣れの動物ですもんね。それより、2か月の間に食べられなければいいんですもんね。
高橋さん: そうです。
シンさん: なんかバイバイワールドで作ってる音手(おんず)も初期の頃はほんとに手を忠実に再現してたやつで、やっぱり初見でみたひとはみんな気持ち悪がってたんですけど、僕らもうなんも感じなくなってるんで、その境がよくわからなくなって、今デフォルメをしたら急に人気が出て。
石黒先生: それで僕が思うのは、ふなっしーってね、動いてなかったらね、やつそうとう気持ち悪いですよ。
近藤さん: そうですね(笑)
石黒先生: あれ、動いてなかったらダメでしょ。でもあの動きとか喋りが面白いかったからで、あれ可愛くないでしょ。
モデレーター: 可愛くないですね、そうですね、彦にゃんに比べたらぜんぜん違いますもんね。
近藤さん: それをいうと私のロボットも全くうごかなくて置いてあるとみんななんかキモっていいますよ。
石黒先生: 関係性で決まってくるんですよね。
高橋さん: そうですね、Pepperのときも、さっきキャラクターって話をちょっとしたんですけど、ふなっしーとかって、やっぱ動きと喋るワードセンスとか、そのテンションとか、そういうそのところでキャラクターが作られていて、それを何か人って楽しんでるなぁっていうのがあって、今後ロボットもいろんなキャラクターをもってくるんじゃないかなっていう話をロボット研究所はしているんですよ。
モデレーター: なるほどー。確か、孫正義さんと掛け合いしたときも、何番とかって話してますもんね。
シンさん: そうですね。何番のパフォーマンスを見たい、何番の自己紹介を見たいですかみたいなことでPepperに
石黒先生: でもちょっと不思議なのは、みんなが作りたいのはなんだろうっていうので、飽きらちゃうものになる、ならないようにするにはどうすれば良いのかってどう考えているのかって。要するに今までの過去のキャラクターって、だいたい飽きられちゃってるでしょ。でも一方で我ら人間の存在としては、もう飽きられたってことは考えにくいじゃないですか。要するに本当に生きてるものを作ろうと思っているのか、単にそのブームだけに乗れば良いのかって、そこらへんはどうおもっているんだろう。
モデレーター: 特にこの未知を選んだバイバイワールドにとっては、
高橋さん: 僕らエンターテインメントなので、とにかくやっぱ、飽きるってところは今Pepperやっててもそうとう意識はしていて、「おはようございます」だけでも何10種類と作るんですよ。パターンの。 とにかく、パターンで人力で、いろんな表情をみせることでキャラクターの、そのキャラクターの方向性を楽しんでもらうということで、作り方にいま落とし込んでいる状態なんです。
シンさん: この今「おはようございます」というワードを1つとったんですけど、「おはようございます」うんぬんかんぬん、っていうことをやりだすと飽きるんですよね。そのワードを人が覚えてしまうから。
だから、「おはようございます」とか「こんにちは」とか「こんばんは」っていう単純なワードをどれだけいろんなテンションで作っていけるかってことで、既聴感のない既知感のないような会話っていうものを作っていこうとしてる。
石黒先生: それはね、なんか人にたいして飽きる飽きないちゅうのと、人らしさとか生命感っていうのとちょっと違う気がして、単になんか新規性だけで引きずってる感じがするんですよね。でも結局飽きるような気がして。人に対して飽きないようなそういうものではない。
シンさん: そこをちょっと今Pepperくんで実現できるかってところでいうと、かなり境目の部分ではあるんですけど、その継続性みたいなところでPepperくんが昨日のことを知っている、一昨日のことを知っている、で、人と会話するときって結局、近況どうだった? とかそういういう話がけっこうメインになったりすると思うんですけど、そういうところができれば一番いいんじゃないかな。
石黒先生:結局やっぱ共感するとか、そういった意図を感じるとか表現するとか、もうちょっと深いところで共感するとかっていうことにならなきゃいけないわけで、表層的にいくら作りこんでも、限界はすぐそこらへんにあると。なら、もうちょっと人工知能をちゃんと勉強する必要があるなっていうことにはならないのかなと思うわけですよ。
高橋さん: 進んでいるんじゃないんですか、Pepperくんも。人工知能計画は。実は。
シンさん: なんかその、僕らは表層的な部分かもしれないんですけれどもキャラクターっていう部分でPepperくんの味を出していきたいなと思う反面、別の分野で、人口知能という部分はまだ開発はPepperくんのほうで進んではいるので、そこがうまくミックスするような部分で僕らが関われたらなと。
高橋さん: 一旦は、家庭用のロボットとなるとすごい難しいんですよ飽きの問題が。ただ、店舗用だとか目的のはっきりしたロボットになってくると、だいたいこう限られて来るんですね。対話の内容だとかお客さんが求めるものっていう。 そういうところで
石黒先生: それ役割あるからね。役割があれば飽きとは無縁になって
高橋さん: 一旦そこはなんとなく腑に落ちているんですよね。家庭用はほんとう難しいなとぼくらも感じてます。
近藤さん: あのPepperなんですけど、起動したら「もしかしてー、ぼく、Pepperと話すのは初めてですか?」って言うじゃないですか、あれなんで毎回毎回でてきちゃうんですか?
シンさん: それはたぶん開発用だからかもしれないですね。
近藤さん: あーっ。あれを聞いてたらめちゃめちゃめちゃめちゃ飽きるなと思って、頭をボコっと外したくなる。
高橋さん: そうなんですよ、同じことを言われると本当に。
石黒先生: でも今まではね、ロボットの人工知能研究って言ってもトイワールドでやっていて、研究者に閉じてやってきたんだけど、これからPepperみたいのが出てくると、みんな、普通の人がいろんなプログラムを書き始めるわけでしょ。研究者が適当にトイワールドで論文を書く時代じゃなくなったんですよね。
ほんとうに飽きないというか、ほんとに人格を感じさせられるものを僕らはつくらなきゃいけない、だからリアルワールドで本当に生きていくようなロボットを作らないと、もう誰も認めなくなる。
モデレーター: ある種のクリエイターと研究者の競い合いみたいなことになってくるんですか?
石黒先生: 競い合いっていうか、クリエイターも浅い知識だけでは済まされなくなって、研究者も1回こっきりのデモで済まされなくなると。本当に人が飽きないとか、ちゃんと生きてるものを作るという時代に入ってくるんだなと思うんですよね。
モデレーター: ありがとうございます。時間となってまいりました。まさに、石黒先生の今、これからの計画にあるように、演劇としてアンドロイド演劇がですね、1つの国際的な評価、演劇の人に評価を受けるというのも、ただ薄い表現というのとは違う段階を迎えてきてると。
そしてPepperで、みんなが開発するという状態の中で、ほんと何がこれから生まれてくるか、とても楽しみなこれからでございます。今日は、若い世代のバイバイワールドさん、近藤那央さん、そして石黒先生、ありがとうございました。