旅の半分を作る「泊まる場所」。「泊まる」を変えれば旅が変わる
旅の行き先が決まったら、まず最初にすることは何かを聞いてみると、たいていの人は「泊まる場所を決める」か「飛行機のチケットを取る」と答える。しかし、旅が終わった人に思い出話を聞いてみると、「泊まった場所」の話はあまり出てこない。
旅において、どうして「泊まる場所」それ自体の優先順位が低いのか。それはきっと、「泊まる場所」があなたの旅を何倍もわくわくさせてくれることに気づけていないからだ。
Couchsurfing(カウチサーフィン)とは
僕がここで「泊まる場所」と言っているのは、ホテルやゲストハウスのことではない。実際に誰かが住んでいる、「他人の家」のことである。
旅人なら、Couchsurfing(カウチサーフィン)というサービスを聞いたことがあるだろう。これは、オンラインでやりとりすることで旅人が現地の人の家に無料で泊まることができる、いわば旅人同士を繋ぐサービスだ。僕はこのサービスを使って、東南アジア5カ国、アメリカ、九州を回った。
出会いが出会いを生む
1年前、友人と3人で東南アジアを周っていたとき、マレーシアでイラン人の Erfan と Maya の家に2泊した。あらかじめ Couchsurfing でやりとりをして、駅まで車で迎えに来てくれたのを覚えている。彼らは特上のホストだった。彼らにとっても僕らが初めてのゲストで、かつ日本にあまり親しみが無かったため、いい経験になったようだ。
話の焦点はここではない。僕らの次の目的地はシンガポールだった。しかし、まだ宿泊先が決まっていない。その旨を Erfan に話すと、彼はすぐにシンガポール在住の友人に連絡を取り、僕らのことを紹介してくれた。快く引き受けてくれた友人の名は Amir。そしてたどり着いた彼の家は、そこらのリゾートホテルよりも遙かに快適な一等マンションだった。
シンガポール一番の絶景スポットに連れて行ってくれ、買い物や食事もずっと付き合ってくれた Amir の人柄も言うまでもなく一等物だ。Couchsurfing で出会った友人が、またさらに別の友人へと繋いで僕の旅路を紡いでくれる。ホテルに泊まっていたら、きっとこの出会いは無かった。
Couchsufingの醍醐味の1つ、再会
時は過ぎて、冬の東京。Couchsrufing で依頼のあった New York 出身の Kelly を、僕は東京の家でホストした。旅人をホストするのは、いつも楽しい。自分がまだ知らない日本を、彼らと一緒に見ることができる。夏に New York で再会する約束をして、彼は東京を去った。
半年後––New York。オンラインで知り合って、たった数日間家に泊めてあげただけの Kelly が、わざわざ空港まで車で迎えに来てくれた。「今度は俺の番だから。」そう言って、僕を家に泊めてくれた。Kelly のお母さんがおいしいご飯を作ってくれて、Kelly は一緒に街を歩いてくれた。
たった数日間寝床を一緒にするだけで、一生物の関係が築けてしまうこともある。「泊まる場所」が生み出す出会いの価値は、計り知れない。
「泊まる場所」は、ときに夢を広げてくれる
数日後、僕はマンハッタン一等地の Mathew の家にいた。
部屋には高級家具が揃い、3台のロードバイク、壁にかけられたたくさんの写真や絵画。時の流れはまるで止まっているかのように優雅で、大きなスピーカーから流れてくる Jazz の音色が憎たらしいほど気持ちよかった。家の周りには、高級マンションとハドソン川を臨める大きな公園や、ワールドトレードセンターがある。
「自分もこんな空間を作りたい。」僕は切実にそう思った。New York のど真ん中で、実際にこうして映画の中のような生活をしている人がいる。お金も払わずに泊まっている Mathew の家が、「手が届くはずもない」と思っていた僕の価値観を壊し、夢を一気に広げてくれた。ゲストハウスに泊まっていたら、きっとこの感覚は味わえない。
「泊まる場所」が旅にもたらす可能性
「泊まる場所」は、あなたの旅の半分の時間を占めている。ならば、泊まる場所についてもっと考えてみてもいいのではないか。
僕は、以上の体験から、ホテルやゲストハウスよりも遙かに有意義な体験が無料でできる Couchsurfing を利用することを、新しい旅のスタイルとして心から提案する。一度勇気を出して「他人の家」に泊まってみたとき、あなたはきっと、旅に新たな色を足してくれるその面白さの虜になるだろう。
Couchsurfingがもたらす旅の出会いは、何度繰り返しても飽きない。