得も損もない言葉たち。

読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

日常をひとます、休まず。

あなたのクスッとをください。

エレベーターのベジータ様

 

どうして、少年は壁にエッチな言葉を書くのだろう。

 


小学校の時、プールの裏にある倉庫の壁に、

エッチなことがと書かれていると聞きつけ、

ともだちと見に行ったことがある。

 


当時は、なんの知識もなかったので、

たどりついたホコリだらけの倉庫の壁にでかでかと書かれた、

SEXという謎の三文字を呆然とながめた。

 


まるで、ある日とつぜん河原に出現した、

ミステリーサークルを見ているようなそんな感じだったと思う。

 


で、意味は分からないけど、

とにかくエッチなことが書かれていると、

噂が学校中をまわっていく。

 


休み時間になると何人もがそこへ向かう。

 


学校中というのには、とうぜん職員室も含まれているので、

ある日そこへ向かうと先生が、必死に壁を掃除していた。

 


どうして、先生はあんなに必死に文字を消しているのだろう。

インターネットもないし、調べる手段もないぼくたちは、

呆然と消される謎の文字を見つめていた。

 


ぼくたちが、

その言葉の意味を知るのは、

まだまだ先の話である。



 

 f:id:heyheydodo:20170426211414j:plain

 



職場のちかくに大きな防波堤がある。


そこは、もはやエッチな掲示板と言っていいほど、

こどもの字でSEXやら、おっぱいやらと書かれている。

 

黒い防波堤に、白い文字のSEXはよく映える。

 

そこの横を大人たちが何も知らない顔をして通り過ぎる。

 

たぶん、大きな声で叫びたいんだと思う。

SEX!!おっぱい!!と、校庭の真ん中でお腹から声をだして。

それが恥ずかしくてできない少年たちの発散場所が、

落書きのエッチな言葉なのだと思う。

 

その書かれた言葉たちには、何の脈絡もない。

ただただ単語がでっかく書かれている。

 

 

ここはひとつ、大人たちが、

官能小説のような艶めかしいエロい話を書きつづってみるのはいかがだろうか。

少年たちは、自分の未熟さに気づき、

ただただ壁を眺めることしかできなくなるのじゃないだろうか。

 

 

 

エレベーターに乗った。

13階建のマンションで、お客様の家を訪問するために乗り込んだ。

 

引っ越しがあるのか、それとも、工事を行う予定なのか、

なかにはプラスチックのような素材の壁が貼られていた。

 

その壁には、

これでもかとエッチな言葉が書かれていた。

家の鍵かなにかで傷をつけているのだろう。

いろんな、少年たちの字で、

オナホとか、SEXとかが大小様々ならんでいた。

 

 

やれやれ、ここにも官能小説を書く必要があるではないか。

 

そんなことを考えながら、周りを見渡した時、

思わず「わぁ」って言ってしまうものを見つけた。

 

 

f:id:heyheydodo:20170426211041j:plain

 

 

 

そこには、圧倒的な迫力で、

ドラゴンボールベジータが君臨していたのだ。

 

確実に、ぼくよりも上手い。

 


そのベジータにはだれも上から落書きをされず、周りには、たくさんの「うまい!」や「すごい!」というコメントがあった。

 

 

この、5人も乗ったらいっぱいになるようなエレベーターが、

とても大きなものに感じた。


まるで、インターネットのように、

誰が書いたか分からないものに対して周りの人が賛同をおくる。

 

そこには、SEXやオナホといった意味のない単語ではなく、

会話があるような気がした。

 

 

ぼくも、本当は「うまい!」と書きたかったけど、

もう立派なおとなだし、目的の階についちゃったのでやめた。

 

 

エレベーターのベジータ

 

 

どうしても、お客様のところへ行っても身が入らない。

 

気になって仕方ないのだ。

 

あの絵を書いた人は、

いったいエレベーターを何周したのだろう。

上から下へ、下から上へ。

 

きっと、乗るたびに増える「うまい!」に、

すごく嬉しそうな顔をしてるんじゃないだろうか。

 

 

帰り道、もう一度、いつもの防波堤をみた。

 

 

そこには、いつもと変わらず、

大きな文字でエッチな言葉が書かれていた。

 

 

どういう意味かって?



それは、

ちょっとぼくには分かりません。