ハッブル宇宙望遠鏡、打ち上げ27周年
【2017年4月25日 HubbleSite】
1990年4月24日、ハッブル宇宙望遠鏡(HST)がスペースシャトル「ディスカパリー号」によって打ち上げられた。
地球の大気の影響を受けずに観測が可能なHSTは、近紫外線、可視光線、近赤外線で宇宙からの光をとらえる。HSTによる数々の発見で、天文や天体物理の分野には革命的ともいえる大きな変化がもたらされてきた。
打ち上げから27年間が経ち、HSTは100万回以上の観測を実施してきた。そして今でも同望遠鏡は、宇宙のすばらしい光景を見せてくれている。
今回、27周年記念画像として公開されたのは、2000個もの銀河が含まれるおとめ座銀河団に属する(領域としてはかみのけ座の中にある)、約5500万光年彼方にあるペアの銀河だ。いずれも渦巻銀河だが、左の「NGC 4302」は真横から見た姿、右の「NGC 4298」は斜めから見た姿がとらえられているために異なった印象を受ける。
渦巻銀河のペアNGC 4302(左)とNGC 4298(提供:NASA, ESA, and M. Mutchler (STScI))
NGC 4302の黒い部分は、銀河に含まれる塵によって光が遮られている部分だ。下のほうの青いところは巨大な星形成領域と考えられている。NGC 4298では渦巻銀河の腕が見える。
NGC 4302の大きさは直径が約8万7000光年(天の川銀河の6割)、質量が太陽の1100億倍(天の川銀河の約10分の1)である。NGC 4298のほうは直径が4万5000光年(天の川銀河の約3分の1)、質量が太陽の170億倍(天の川銀河の2%以下)だ。大きさこそ天の川銀河とはかなり違うものの、遠く離れたところから天の川銀河を観測すればこれらの銀河と同じように見え、角度によって円盤や腕が見えたり真横を眺めることになったりするだろう。つまりこうした銀河を観測することは、私たちのいる天の川銀河について知ることにもつながるのである。
ハッブル宇宙望遠鏡トリビア 2017
- これまでに行われた観測は130万回以上、とらえられた天体の数は4万2000個以上
- 27年間に地球を14万8000周回した
- 毎月約2テラバイトのデータがアーカイブに追加されている
- 今後も研究に使用可能な観測データは現時点で141テラバイト以上
- HSTのデータを利用した論文は1万4600本以上
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