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大震災から6年 福島の声をどう聴くか

 死者と行方不明者合わせて2万人近くが犠牲になった東日本大震災からあすで丸6年になる。

     被災地は復興の途上にあるが、東京電力福島第1原発事故に見舞われた福島県の苦難は現在進行形だ。

     震災前202万人だった福島県の人口は190万人を割り込んだ。県内外に今も8万人近くが避難し、避難先は全都道府県にわたる。原子力災害の悲惨さは、6年の歳月を経てなお目の前に立ちはだかる。

     この1年で最も被害の奥深さを気付かせられたのが、原発事故後に家族とともに避難した子供に対するいじめの問題だ。

    避難いじめの深刻さ

     避難者いじめの問題を提起したのは、福島県から横浜市に自主避難してきた中学1年の男子生徒のケースだった。生徒は小学生時代に「菌」扱いされ殴られたり、150万円ものお金をせびられたりしていた。

     「いままでなんかいも死のうとおもった。でも、しんさいでいっぱい死んだからぼくはいきるときめた」

     生徒はそう手記に書いた。

     いじめの背景に何があったのか。

     生徒と接触を続ける飛田桂弁護士は「学校は社会の縮図。子供は大人を見て弱い者を狙う」という。

     避難してほどなく、生徒の家族は嫌がらせを受けていた。ゴミが福島ナンバーの車の上に捨てられたり、ポストに「福島県民は出て行け」との文書が投げ込まれたりした。

     横浜の避難いじめが表に出てから、同様のいじめが次々に明らかになった。千葉では子供が「放射能がきた」といった心ない言葉を同級生から浴び、新潟では児童が担任に「菌」を付けて呼ばれていた。

     福島県から全国に避難している児童・生徒は、昨年5月時点で約7800人に上る。表面化していないいじめがある可能性がある。

     福島からの避難者の相談に乗る弁護士によると、差別や嫌がらせを避けるため、福島から来たことを悟られないようにひっそりと生活する人は今も多いという。

     原子力災害により、古里を追われたうえに、いわれのない差別やいじめといった二重の被害を受ける。それは理不尽というほかない。

     この春には、自主避難者にとって大きな制度の変更が迫っている。

     福島県が避難先の自治体を通じて行ってきた住宅の無償提供が今月で打ち切られるのだ。避難者の帰還を促すのが目的とされる。

     しかし、自主避難者の相談に乗る「避難の協同センター」の瀬戸大作事務局長の携帯電話には、「家が決まっていない」といったSOSが先月から相次いで寄せられている。

     無償提供打ち切りの対象となる自主避難者は、福島県の集計で約2万6600人だ。福島の避難者全体の3分の1に及ぶ。

     避難指示区域の避難者と異なり、自主避難者には東京電力からの定期的な賠償金はなく、住宅の無償提供が公的支援の柱だ。福島県は一昨年6月に打ち切りを決めた。除染が進み生活環境が整ったとの理由だが、仕事や子供が学校に慣れたことを理由に帰らない決断をする人もいる。

     福島県いわき市から自主避難し、埼玉県毛呂山町に子供2人と住む河井加緒理さん(35)は、子供の学校を優先してとどまることを決めた。苦しい生活の中で、住宅の提供を受けることの意味は大きかっただけに、打ち切りはショックだった。

    復興に必要な地域の絆

     河井さんのような母子避難や二重生活を余儀なくされている人も珍しくない。避難者の生活実態に即した対応が必要だ。

     福島県が無償提供を打ち切った後、独自の予算で4月以後も無償提供を続けたり、有償での優先入居枠を設けたりするなど支援を継続する自治体もある。このままでは、避難先によって避難者間に大きな差がつくことになる。国が調整に乗り出すべきではないか。

     一方で、政府指示の避難区域で新たな動きがある。

     飯舘村や浪江町などの避難指示が近く、帰還困難区域を除き解除される。対象は3万人以上だ。だが、既に避難指示が解除された地域の帰還率は1割程度にとどまる。

     南相馬市の小高区は昨年7月に先行して避難指示が解除された。いまだ人の姿はまばらだ。震災当時のままの荒れた家屋も目立つ。帰還するのは高齢者ばかりだと町の人は言う。戻った人の生活と健康を守る取り組みの必要性を痛感する。

     それでも地域の営みは少しずつ戻りつつある。小高区では小、中、高校が4月に再開する。

     将来の町づくりのため、福島に暮らす人と避難者の結びつきをどう保つのかも問われている。

     小高区に長く住む広畑裕子さんは、小高で働く人たちを紹介するカラーのパンフレットを毎月発行し、県外避難者らにも送り続けている。小高のいまを知ってほしいとの思いからだという。

     帰った人、これから帰る人、帰らない人……。原発事故さえなければ、同じ故郷で暮らしていたはずの人たちだ。問われているのは、その人々の声を、政府が、自治体が、そして私たち一人一人がどう聴くかだ。

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