シーズン開幕当初絶対的な抑え投手であった投手が不調から立ち直り、先発投手としてチームを日本一に導くというケースが今まであっただろうか。
2016年のシーズンに増井浩敏選手が果たした役割と活躍は周囲を驚かされるものだった。2017年のWBCでも日本代表入りしている増井浩敏選手には様々な役割が期待される。
そこで今日は日本ハムファイターズの増井浩敏選手について語っていく。
目次
増井浩敏とは
2009年のドラフト会議で日本ハムファイターズからドラフト5巡目で指名されプロ入り。
プロ一年目は先発として起用され、3勝をあげる活躍を見せる。
翌年からはリリーフに転向。56試合に登板し、防御率1.85という安定した働きを見せた。シーズン途中で行われたオールスターにも選出されている。
2012年には最優秀中継ぎ投手のタイトルを獲得し、2011年～2013年は主にセットアッパーとして活躍した。
2014年のシーズン途中から抑えを任せされるようになった。2015年には自身最多となる39セーブを挙げ、防御率も1.50と抜群の安定感を発揮した。
2016年も抑えとしての活躍を期待されたが、シーズン序盤に思わぬ不調を見せてしまう。3勝2敗10セーブ、防御率6.30と大きく悪化し、6月20日に一軍登録を抹消された。
転機となったのは栗山監督からの先発再転向。シーズン途中に抑え投手が先発に転向するという異例の配置転換に周囲は驚かされた。
8/4に2010年以来先発として登板し、5回を投げて無失点に抑えた。同月25日のロッテ戦（QVC）ではプロ入り初めて完投を記録。その後9/1の楽天戦で自身初の完封勝利を達成。
最終的には自身初となる2桁勝利を達成し、10勝10セーブをマークした。この記録は2000年にロッテ（当時）小林雅英投手が達成して以来の快挙となった。
※詳細は下記参照
突如の先発転向
前述した通り、2016年シーズンに増井浩敏選手はシーズン途中の先発転向を言い渡された。失敗したら引退も考えたというほどに悩んだ増井浩敏選手だったが、自身の活躍でその不安を解消することができた。
抑え投手時代はお主にストレートとフォークで活躍していた投手だったが、先発に転向してからはカーブ、チェンジアップといった緩い変化球を使うことで投球の幅を広げた。その結果打たせて取るピッチングスタイルに転向することができたのだ。
そうすることで力みがとれ、制球力が増して無駄なボールが少なくなったため、結果的に長いイニングを投げられるようになった。
抑え時代はバットにボールを与えられるだけでも嫌だったという選手が打たせて取るピッチングに変えられたというのは技術的にもそうだが、精神的なタフさがあってこそだと私は考える。
抑えへの思い
来シーズン以降の増井浩敏選手の起用法は現時点では定まっていない。
栗山監督を初めとしたチームとしては先発をやって欲しい思いがある。だが、増井浩敏選手は抑えにもう一度挑戦したいようだ。
増井浩敏選手は2016年のシーズン途中のインタビューで抑えのほうが性格的に向いていると発言している。曰く誰かのためにと思って投げたほうが力を出せるそうだ。先発投手の勝ち星、ここまでリードを保ってくれたリリーフ投手と野手、そしてファン。それらの思いを背負って投げた時のほうが自身の力に変えられるそうだ。
自身が求める役割と周囲から求められる役割にズレがあるというのは非常に辛いところではあるだろう。両方の役割をこなせる力がある選手にだけ与えられた苦しみというやつだ。
ここで先発投手と抑え投手の価値と重要性を議論するつもりはないが、増井浩敏選手は抑え投手に価値を見出しているようだ。上記で話したインタビューで抑え投手の希少性について語っていた。確かに抑え投手のポジションは各チームに１つしかない。その中でシーズンフルで抑えをこなせる投手は数人しかいない。また、分業制の現代野球において抑え投手の存在はチームのゲームプランを左右する。
恐らく増井浩敏選手の中で、増井浩敏選手の並みの先発投手なら他にもいるが、増井浩敏選手並みの抑え投手は他に中々いないという考えがあるのだろう。
単純な自身のやりがいだけではなく、一個人事業主として自身の商品価値を考えた上でのこだわりならば私は増井浩敏選手に我を通して欲しい。
もちろん最終的にはチーム（組織）が下した判断には従う必要がある。ただ、しっかりと自身の考えを伝えるか否かは非常に大切だろう。
増井浩敏選手には迷いのない今後のプロ野球選手生活を送って欲しい。
侍ジャパンでの役割
WBCでは球数制限がある。ラウンドによって制限される球数は異なるが投手の１イニングあたりの平均投球数を15球と考えると、悪くて4、5回、良くても6，7回が限界となる。（もちろん奇跡的に完投が起こる可能性もある。）そのためリリーフ投手の役割が非常に重要になってくる。
また、通常のペナントレースの状況とは異なり、投手の球数が急に増えたため急遽投手交代を余儀なくされるケースも想定されるだろう。しかも回が浅ければそこからロングリリーフを求められるケースもある。ピンチの場面でフルスロットルの力をだした後に、次の回からある程度長いイニングを投げるというのは非常に起用さが求められるポジションだ。
過去日本がWBCで優勝した時にはこの第二の先発とも言われる投手が活躍を見せた。一番記憶に残っているところだと2009年大会の杉内投手の活躍がそうだ。
今回の大会この役割を一番こなせそうなのは増井浩敏選手と西武の牧田選手の２人だ。他にも普段先発をやっている投手が第二先発のような役割を期待されるが、やはりリリーフの経験があるとなしとではかなり差がある。
そんな中で先発・中継ぎ・抑えを経験している増井浩敏選手の存在は大きい。
増井浩敏選手の果たす役割は非常に重要なものとなるだろう。
一抹の不安
私が少し不暗視しているのは増井浩敏選手の調整と投球スタイルだ。
前述した通り、現時点で増井浩敏選手の2017年シーズンの起用法は決まっていない。また、それと同様に侍ジャパンでの役割も決まっていない。懸念の抑えを託すのかロングリリーフ投手の役割を任せるか。非常に調整が難しい状況にある。その中で増井浩敏選手が万全の準備が出来るのか私は非常に不安だ。
また、増井浩敏選手は元々ストレートとフォークを中心としたタテのラインで勝負する投手だ。もし、そのスタイルで復調することができればWBCでも十分通用するだろう。というのも、歴代のメジャーで活躍した日本投手にはフォークボーラーが非常に多いからだ。野茂英雄、佐々木主浩、黒田博樹、上原浩治、岩隈久志、田中将大投手といった投手らがフォークボールを使って外国人打者を牛耳ってきた。
その背景には海外ではフォークボール投手が少なく、対戦慣れしていないというのがあるようだ。
そういった意味でもフォークボールを操れる増井浩敏選手の存在は非常に大きい。しかし、2016年シーズン増井浩敏選手はこのタテのラインのバランスが崩れたことで調子を落としていた。曰くフォークがシュート回転して上手く縦に落なかったとのことだ。その副産物としてカーブやスライダーが上手く操れて先発投手として活躍が出来たわけだが、それではWBCでメジャーリーガーたちを相手にするには不十分だ。
かつて抑えで活躍したときのようにストレートとフォークを復調させなければ増井浩敏選手がWBCで活躍するのは厳しいだろう。
投手としての役割が投球スタイルとも密接に関わってるので、増井浩敏選手の起用法が定まらない現状が私は不安でならない。
まとめ
最後は少し不安要素について話したが、増井浩敏選手は様々なポジションで活躍する能力をもった投手だ。代表に選ばれるような選手はチームでは起用法が固定されている選手が多い。そうした中にあって増井浩敏選手の存在はチームには欠かせない選手だ。
ピンチの場面で力投した後に、次のイニングから飄々と長いイニングを投げる増井浩敏選手の活躍が見れることに期待したい。
それでは、さようなら！