※この記事は、数学 Advent Calendar 2016 1日目の記事です。
タイトルの「89」という数は、一見ただの普通の整数に思われるかもしれません。
ですが、この数にまつわるすごく面白い性質を今年に入って知り、個人的にかなり感動したので、今回はそれを伝えたいと思います。
素数
まず、89は素数です。24番目の素数にあたります。
この記事も素数のTシャツを着て書いている程度に素数大好きな私としては、これだけでも大絶賛に値するのですが、今回はこの件ではありません。
フィボナッチ数
89は、フィボナッチ数列の中にも出現します。
1, 1, 2, 3, 5, 8, 13, 21, 34, 55, 89, …
フィボナッチ数列というのは、前2つの数を足していくことで作られる数列です。
1 + 1 = 2
1 + 2 = 3
2 + 3 = 5
3 + 5 = 8
5 + 8 = 13
8 + 13 = 21
…
この数列は、黄金比との関係性など、数々の面白い性質を持っており、数学的にも大変重要な数列で、89はその一員です。
これだけだと、89がたまたまフィボナッチ数の1つだった…といった感じですが、ここからが本題です。
89とフィボナッチ数列
突然ですが、最近個人的に勉強している『コンピュータの数学』の中で、次の興味深い問題が紹介されていました。
以下の数列の和は、いくつになるか。
0.1
0.01
0.002
0.0003
0.00005
0.000008
0.0000013
・
・
・
フィボナッチ数列を、1桁ずつずらしたものを全部足すとどうなるか?ということなのですが…パッと見ただけでは有理数なのか無理数なのか、そもそも収束するのかもイマイチ分かりません。
仮に、求めたい和を 、フィボナッチ数列の一般項を
とすると、上の小数列の一般項は
「n桁おとして、n番目のフィボナッチ数を添える」
と捉えると になることが分かります。なので、このように書けます。
いったん和のおさらい
一見難しく思えますので、まずはこれよりも少し分かりやすいものを取り上げてみます。
以下の数列の和はいくつになるでしょうか。
…
この数列は、前の項を倍ずつしていくことでできる、いわゆる「等比数列」の一種です。等比数列の和には(とても覚えづらいことで悪名高い)公式も存在するので、それに当てはめて計算することもできますが、以下のように、比率の分だけずらして考えるとスッキリします。
2つの式では 以降は全て同じ並びになるので、縦に上から下をごっそり引いてしまうと、
というふうに計算できます。「後半を揃えて、消してしまう」のがポイントですね。
本題を解いてみる
本題についても、この考え方が応用できます。 という数列が入り混じっているぶん複雑ではありますが、
はフィボナッチ数列で、これは前2つの数を足していくことでできる数列なので、
すなわち
が成り立っています。
ということは、 の3つを同じ列に揃えてしまえば、それを引き合わせて後半の列を消すことが同様にできるはずです。
試しに揃えてみると
となっているので、縦方向に (1) – (2) – (3) を計算する (辺々引く) と
となり、2行目以降は なのでキレイに消すことができてしまいます。
なので、
こんなにキレイな分数になってしまいました。
しかも、今回の数列は小数点第1位から始めていましたが、小数点第2位から始めると、分子の10まで取れて、こんなふうに書けます。
本当にきれいですね…!
まとめ … 1/89 を計算しよう
これはもう、 を計算してみるしかないですね! 電卓を少し弾くだけで「ほぼフィボナッチ数列」な小数が現れるわけですから。
序盤に現れるフィボナッチ数列を眺めているだけで幸せな気分になれますねw 何回でも電卓を弾きたくなります。
実は、フィボナッチ数列の逆数和
は無理数であることが証明されているのですが、証明された年が 19『89』 年なのも、もはや単なる偶然には思えなくなってきますね。 …そうでもないですかね?