耐震性問題視「天守閣入場制限を」 有識者提言
耐震性が問題になっている名古屋城(名古屋市中区)の天守閣について、名古屋市が複数の有識者から入場制限を提言されたことが、市などへの取材で分かった。名古屋城は観光客に人気で年約175万人の集客があることから、市は影響も考慮し、9日に開会した9月市議会で今後の対応を示す方針だ。河村たかし市長は天守閣の木造復元を掲げて関連予算案の審議を求めており、議会審議に影響する可能性もある。
金のシャチホコで知られる天守閣は1945年の空襲で焼失し、59年に鉄筋コンクリートで再建された。2011年の市の調査で、耐震性能を示す指標(Is値)が0.14と判明。安全基準の目安とされる0.6を大きく下回り、震度6強で倒壊の恐れがある。
河村市長は20年の東京五輪前の完成を目指し、木造復元での設計費など補正予算案約10億円を6月市議会に提出。今冬にも天守閣を閉鎖する計画だった。一方、工期の短さなどを疑問視した市議会は議決せず、継続審査とした。これを受け河村市長は、完成時期をリニア中央新幹線開業の27年に先送りすることを表明していた。
河村市長は「(木造復元とは)切り分けて考える」と述べ、現天守閣の安全性について有識者の意見を聞くことを表明。市などによると、建築物の専門家ら6人に意見を求めたところ、耐震化しなければ入場制限を推す意見が多く、隣接する本丸御殿も制限範囲に含めるべきだとの指摘もあったという。
天守閣の入場制限は観光面で影響が大きい半面、来場者の安全確保は急務で、市の判断が注目される。また、河村市長は継続審査となった予算案を取り下げず、9月市議会での審議を求めており、市議会には「耐震化の必要性を強調して、早期の木造復元を主張するのでは」(自民市議)との見方も出ている。【三上剛輝】